国出立と招待状
「よし、行くか。」
気合いを入れるように頬張り立ち上がる。それに続くは縫い目の多いちぐはぐな人形と1人の少年。
キャッローツ王国の城門前。城門には大勢の人が集まり手厚い見送りをしてくれている。これじゃあドロボウの立つ瀬がない。これではまるで
「国を救った勇者みたいだね。」
と隣に立つウツワが言う。
「ああ、そうだな。」
キャリルの隣にはカルフェが立ち俯いているキャリルに何やら話しかけている。少し俺達は城門から離れた場所にいるので何を話しているかはわからない。
「3名には感謝してもしきれない。改めて礼を言おう。」
とキャッローツ王国の王様が頭を下げる。
「い、いや頭を上げて下さい。王様がそんな軽々と頭下げちゃ駄目なんじゃないんですか?」
「よいのだ。それにお主らがいなければ今頃ここに国はない。」
「ありがたく受け取っておこうぜ。俺達がこれから感謝されることはあまりないだろうしな。」
俺達はドロボウだ。罵倒されることはあれど感謝されることは滅多に無い。
「う、まあ、そうだね。」
自分がドロボウだという自覚がウツワはあまりないようだ。困った顔で頬を掻いている。
「ドロ、ウツワ、魔ペット。」
「キャリル、どうした?」
カルフェに連れられキャリルが王様の隣に立つ。
「この国にを助けてくれてありがとう。そして短い間だったけど一緒にいられて楽しかった。
…………本当に行っちゃうの?」
最初の言葉は一国の王女として、そして最後はキャリル自身の本音。笑っているのに泣いているような顔をしている。
「そんな顔するなよ。また遊びに来るって。」
「ほんとに?」
「ああ、約束だ。今度は逆に誘いに来るよ。勿論カルフェもな。」
「ありがとう。」
俺とカルフェは握手を交わす。
「キャリルと仲良くな。」
「ああ、約束する。」
「2人もありがとう。ウツワさん、魔ペットさん。」
カルフェはウツワと魔ペットとも握手を交わす。
「ドロ、これ。秘人参の塗り薬。怪我した時に使ってね。」
「おお、ありがとう。大切に使う。」
「ウツワにはこれ。」
「え、いいの?ありがとう。これは国章?」
キャリルがウツワに渡したのはキャッローツ王国の紋章の大きな人参が刻まれたブローチだ。。
「うん。この国を救ってくれたお礼。ごめんね。こんなので。」
「ううん、ありがとう!大切にするよ。」
「魔ペットにはこれね。」
「私にもでデスカ?いやはやなんとお礼をモウセバ。」
魔ペットが渡されたのは色々な種類の布と綿。それと魔ペットの大きさ程もある人参のぬいぐるみ。
「このぬいぐるみはメリンちゃんに渡してね。」
とキャリルはこっそり魔ペットに耳打ちする。
「ハイ、必ず。奥様も大変お喜びにナリマス。」
「布と綿は魔ペットの体がもし破れちゃったりした時に使って。」
「大切に使わせて頂きマス。」
魔ペットはそう言うなり口の中に貰ったものを保管した。
「そろそろ行かないと名残り惜しくなるな。」
「うん。」
「キャリル、これ渡しとく。気になったら俺達がいなくなった後で見てくれ。行くぞ、魔ペット、ウツワ。」
「ハイ、ご主人様。」「うん、行こうドロ。」
「それじゃあお気をつけて。」
「ああ、ありがとう。」「また遊びに来ます。」「お世話になりマシタ。」
「ドロ、ウツワ、魔ペット。絶対また遊びに来てね!」
「当たり前だ。今度はメリンも連れて来る。」
「うん。」
キャリルが笑う。それと同時にウツワの放った石がウツワの手に収まり俺達の目の前は歪み目を閉じた。
「最後にドロさんが渡したものは?手紙?」
「なんだろう?」
キャリルが封筒にしまわれた紙を取り出す。
『招待状』
時が来たらこの招待状を持つ人を我々が主催するパーティーにお呼びする。
時期場所が決まり次第こちらからお迎えに上がるのでお楽しみに。
シュトラバ家次期当主とその妻
ドロ・シュトラバ・ゼイル
メリン・シュトラバ・ゼイル
血のような綺麗な、暗い赤で染められた紙にそう書かれていたのだった。




