歯車の王
顔のバランスがおかしく体も変に伸びていた魔ペットはすっかり元通りのちぐはぐ人形に戻り、泣いていたキャリルも目はまだ赤いが泣き止んだ。一通り落ち着いたところで僕は皆に話したいことがあるとつたえると各々ベッドに腰掛けた。魔ペットは何を話そうとしているのか大方予想がついているからか何も言わずに僕の隣にちょこんと座った。ドロとキャリルは一体何を話そうとしているのかわからないので頭に?マークをつけていた。
「それでなんの話だ?」
ドロは単刀直入に聞いてくる。間をおく必要も無いので本題を話す。
「記憶が戻ったんだ。」
そう言うと2人は驚いた。
「じゃ、じゃあ名前も思い出したのか?」
「うん…思い出した。僕はウツワ。名無しじゃなくてウツワだよ。」
「そっか、ウツワか。ウツワ。名前思い出せて良かったな。ナナシも良いと思ったけど。」
「まあね。でもいつまでも名前が無いからナナシなんて安直な名前は嫌だよ。」
「しょうがないだろ。浮かばなかったんだから。」
ドロは口を尖らせる。
「それでもナナシは酷いよ。」
「うるせえ。」
照れ隠しで軽く肩を小突かれる。案外あっさりと決めていたのにナナシという名前をドロが気に入っていたのはちょっと嬉しかった。
「まあ記憶が戻ったと言っても断片的なんだけどね。名前と自分の事が少しと戦い方……くらいかな。」
「追々他の事も思い出すんじゃないか?今回記憶が戻ったみたいに。」
「逆にまた忘れるかもね。」
と冗談めかして言う。
「笑えねえよ。」
「本当に忘れそうなので止めてクダサイ。」
「駄目だよ、そんな事言っちゃ。」
3人にそう突っ込まれ流石に反省する。3人の真剣さが伝わってくるので気恥ずかしさもあり少し俯く。
「ごめん。」
素直に謝ると仕切り直すようにドロが聞いてくる。
「それで戦い方ってのはラビドーやマッシャーを追い返すのに使ったわけだな?」
「うん。」
「他には?何を思い出したの?」
とキャリル。無言の魔ペットは視線をこちらに向ける。ドロも気になるようで少し前かがみになる。
まるで尋問されてるみたいだなと胸中で呟く。
「後は多分記憶を失う直前の記憶と自分の役割。」
「自分の役割?」
「どんな事をするのかは思い出せないから想像もつかないね。歯車の王だってさ。」
マッシャーの前では大見得を切ったのに役割を全く理解していない。
「歯車の王?」
「そう。歯車の王。なにか分かる?」
「いや、悪いけど俺が覚えてる限りは聞いたこともないな。魔ペットは?」
「私もご主人様と同じデス。」
「私は全然ウツワの住んでた国を知ってるわけじゃないからわからないよ。」
3人に聞いても歯車の王なんて仰々しい名前については聞いたこともないようだ。
「ただの王なら想像は簡単にできるけど歯車ってつくといまいちピンとこないな。」
「そうなんだよね。いっそのこと国王とかつけばわかりやすかったんだけど。」
「ははー国王様。」
「棒読みで言われてもね。」
少し呆れて苦笑する。
「役割については他に思い出せなかったの?」
「うん、でも歯車の王がなんて呼ばれてるかは分かったよ。」
「なんて呼ばれてたんだ?」
正直緊張する。どういう顔で言えばいいのか。ドロはどんな顔をするだろうか?想像もつかない。
落ち着くように深呼吸をして一息に言う。
「『ギアボット』。」
ドロと魔ペットは同時に固まる。キャリルはその2人を見てきょとんとしている。
「どうしたの?」
キャリルが聞いても2人からは反応が返ってこない。しばらくするとドロは首を振り恐る恐ると言った体で僕に聞く。
「ウツワがギアボット?」
「うん、ギアボット。」
「本当デスカ?」
魔ペットは確認するように聞く。
「思い出した記憶が偽りじゃなければ。」
身を乗り出して聞く魔ペットに流石に僕も心配になる。
「魔ペット。」
「ハイ、ご主人様。」
「やったな。」
ドロは悲願が叶ったというような面持ちで魔ペットに言う。
「ハイ。もう一度チャンスを伺う手間が省けマシタネ。」
そういえばギアボットを探すために2人は来ていた。僕の名前よりも先に言うべきだったかも知れない。
「ウツワ、お願いがあるんだ。」
「お願い?」
「メリンを俺の大切な人を助けてくれ。」
ドロは今にも泣き出しそうな顔で僕に言ったのだった。
あれー?このままドロの話に入っちゃいそうです。2章まだ続きます。




