刃者撤退
明けましておめでとうございます。遅くなりましたが今年も更新していくのでよろしくお願いします。
それはオレンジ色の陽光が差し込む小さな家でのことだ。創造者が出て行って帰ってくるまで待っていた時の話。僕とナカミは座って窓から差し込む光を見つめて創造者の帰りを待っていた。来る日も来る日もひたすらに窓から差し込む光を眺めてた。それはとても満ち足りていて終わってしまうのが惜しかった時間。
僕はポツリと陽光を眺めて言う。
「この時間がいつまでも続くといいね。ナカミ。」
「そうだね。ウツワ。」
それだけだった。言葉はそこまで必要無かった。ただ一緒にいられるだけで幸せだった。だけどこの先は思い出せない。思い出した今でも抜け落ちたように覚えていない。それでも名無しだった時より断然マシだ。
「ふふふぅ、こんなに楽しいのは久しぶりですぅ!」
「そうなの?僕にはよく分からないなあ。」
ウツワは突槍を剣、槌、矛、短剣,大剣へと透刃を次々に変化させマッシャーに叩きつける。
「もはや達人ですねぇ。その動きぃ。」
マッシャーは次々に変化する相手の武器を紙一重で躱し変化する瞬間を見極め致死の一撃を放つ。
「そりゃあ、長いからね。これくらい出来ないと。」
ウツワの武器は速度を落とすこと無く寸分違わずマッシャーの首を狙う。マッシャーは自分を完璧に殺ろうとするウツワに恍惚の笑みを浮かべる。
「お互いに当たりませんねぇ。」
「よく避けるね。結構本気なんだけど。それで当たらないのは悔しいなあ。」
「ギリギリですよぉ。それにしてもぉ本気じゃないんですかぁ?それはそれで腹が立ちますねぇ。人に言えたことではありませんがぁ。」
ウツワとマッシャーはまるで踊るように剣撃を交わす。
「楽しそうだな。あいつら。」
「そうだねー。」
完全に蚊帳の外のラビドーとナーギルは観戦している。その間にも幾重もの剣撃が入り混じり火花が飛び散る。
「これではぁ決着がつきませんねぇ。」
「じゃあこんなのはどう?」
ウツワは片足で地面を軽く踏む。その瞬間マッシャーの足下から透刃が襲いかかる。
「危ないですねぇ。おおっとぉ。あれれぇ?」
「そう避けると思ったよ。」
軽く後ろに跳ぶことで避けたマッシャーだが異変に気づくのは早かった。
「動きませんねぇ。」
「透刃だけに注意してたみたいだけど透金には気づかなかったね。」
「なるほどぉ、薄く地面に敷いていたんですねぇ。」
「当たり。じゃあそろそろ決めるよ。」
バンッ
空気の弾ける音と共にウツワはマッシャーを斬る。
「あららぁこれはぁいけません……ねぇ。」
鈍器がバラバラと消えマッシャーは仰向けに倒れた。
「僕の勝ちだ。」
マッシャーは血だまりに倒れ動かない。ラビドーとナーギルは信じられないと言った顔で見ている。
「まさか……嘘だろ……マッシャー。油断し過ぎだぜ。ったく。」
「あーあー、ラビドー勝てるー?」
「無理だ。純粋に戦って勝てるようなやつじゃねえ。」
「じゃあー失敗?」
「そうなるな。」
ラビドーはガリガリと頭を掻き溜息を吐く。
「魔ペット……大丈夫?」
「ハイ、申し訳アリマセン。ナナシさん。任せられたのにもカカワラズ。」
「荷を重くしちゃったね。ごめんね。」
僕は戦う前に魔ペットの腕や落ちていた綿を頼りに魔ペットを透金で回収していた。透金は僕が命令を下せば命令を完了するまでオートで動いてくれるらしい。応用すれば色々な用途に使えそうだ。今回は記憶にある使い方をしてみただけ。後でドロや魔ペットにアイデアを貰おう。
「さてと、そこの2人はやるかい?」
「いいや、やめとく。正攻法では勝てそうにないな。」
「いいやー、マッシャーみたいに戦闘狂じゃないしー。」
「私はぁ戦闘狂ではぁありませんよぉ。」
ゆらりと血だまりからマッシャーは立ち上がる。
「酷いですねぇウツワさん。ドレスが台無しですぅ。」
マッシャーは肩から腹部に斜めに斬られた身体をなぞり口を尖らせる。
「やっぱりマッシャーはしぶといね。首をはねとけば良かったかな。」
「流石に死んでしまいますよぉ。」
マッシャーはケラケラと笑い指についた血を舐める。
「まだやる?」
「いいえぇ。今回は引き上げますぅ。次会う時まで私がぁ心ゆくまで楽しめる新搾感を保ち続けて下さいねぇ。」
「それは困るな。この国にまた来るかもしれないし。」
ウツワは透金を出すと瞬時に透刃へと変えマッシャーに投げる。
「まずいですねぇ。」
「全然そうは見えねえけどな。」
ウツワの投げた透刃にラビドーはナイフを投げ弾きラビドーはマッシャーに肩を貸す。
「ここらで引き上げますぅ。ではウツワさん。またお会いしましょう。」
「ドロにも伝えといてくれ。」
「じゃねー。」
3人の刃者はナーギルが地面を殴った土煙に紛れ消えた。
「逃がしちゃった。」
「ナナシさん、ウツワ……と言うノハ?」
「後で2人が目を覚ましたら話すよ。」
僕は籠の中で眠る2人を見る。
「良かった。2人が無事で。」
「ハイ、本当に良かったデス。」
「一応応急処置で透金で繋げておくね。ドロが目を覚ましたら直してもらって。」
「ありがとうゴザイマス。ナナシさん。」
僕は透金で魔ペットを繋ぐ。ただでさえちぐはぐな魔ペットだがますますちぐはぐな感じになってしまった。後はドロに任せよう。
「動く?魔ペット。」
「ハイ、問題ありマセン。」
「そっか良かった。ごめん、魔ペット後はお願いしてもいい?」
「ハイ、大丈夫デスヨ。」
「力を使いすぎて眠くなってきちゃったよ。あっちにも伝えてあるから少ししたら来ると思う。」
「分かりました。どうぞごゆっくりお休みクダサイ。」
「ありがとう。」
ウツワはそこまで言うとゆっくりと目を閉じた。
「眠る必要のないあなたが眠るなんて。ちゃんと目覚めてクダサイネ、ウツワさん。」
ポンポンと魔ペットはウツワの頭を優しく撫でた。
キャッローツ王国最終戦終幕。
戦闘決着です。もう少し?この章続きます。




