式の前夜
織り室を借りて服を作った後夕食をとり約束どおりキャリルの部屋に遊びに行った。大きいベッドに腰掛け3人で他愛もない話をしてその日は終わった。
そして式まで後1日。
先日と同じく朝食をとり服の作成に取り掛かろうという時、急に服の作成に依頼が入った。
キャリルからで式の最後にある舞踏会で着る服を作って欲しいとのこと。ドレスならあると思うが作って欲しいと言われたので作ることにする。追加で式には部外者であるはずの俺とナナシも参加することになっていたので俺とナナシの着る服も作らねばならなかった。昨日の自由な服の作成とは打って変わって忙しい。
ドレスはキャリルの髪色であるオレンジ色を基調に作成しようと思う。スカートは何層も重ねて踊りの時に映えるように。そして動きやすいように。腰からはスマートにして上下でメリハリをつける。
俺とナナシは大体体型が同じだから良いのだがキャリルはそうもいかないので魔ペットに採寸をお願いした。
よし準備万端、早速作成していこうか。ナナシはやることがないので魔ペットと座って俺の作業を見ている。
どうやら昨日でナナシの手伝えることは無くなったらしい。やっとゆっくりできると嬉しそうだ。
作成は昼まで差し掛かり昼食を早くとりすぐに作業を開始する。そして全ての服を作り終わるともう夕方になっていた。俺とナナシは試着済みなので良いがキャリルは忙しそうだったのでまだだ。
今日は1回も様子を見に来ないので昨日よりも入念に式の練習をしているのだろう。
作業が終わって休憩しているとくたびれた表情で部屋にキャリルが入ってきた。
「出来たぞ。ドレス。」
その言葉を聞くなりキャリルは今までのくたびれた表情を変え笑顔になる。
「どんなの?見せて!」
「気に入るか分からないけど。こんな感じに作ってみた。どうだ?」
魔ペットにドレスを出してもらい広げる。
「良い……。すごく良い!!ありがとう!ドロ!」
俺から手渡されたドレスを抱きしめ物凄く喜んでいる。良かった良かった。
「サイズ合ってるか着てみてくれよ。」
「えー明日のお楽しみにしてよ。」
「もしサイズ合ってなかったら大変だろ。だから一回着てみてくれ。今日中じゃないと手直しは出来そうにないからな。」
「分かった。じゃあ今から着てくる。」
そう言うとキャリルは自分の部屋へ試着しに駆けて行った。
「良かったねドロ。喜んでもらえて。」
「ああ。本当に良かった。」
空はもうオレンジに染まり一面を染める。入ってくる光もオレンジ色で、差し込む先はまるで絵の具で塗られたかのように色彩を鮮やかに変える。
「綺麗だなあ。」
ナナシは窓から見える空を眺め誰に言うでもなくそう呟いた。
「……ナナシ。聞きたかったんだが、マッシャーとの最後のやりとりは一体なんだったんだ?」
「ああ…。」
ナナシはそれだけ言うとこちらを向くでもなく話し始めた。
「彼女が犯人だったんだよ。ジャガイモ狩りだったんだ。マッシャーと会った時、彼女はジャガイモを何かで潰してた。何回もね。僕は何も出来ずに見てた。そしてマッシャーがこっちに気づいた。でもジャガイモと同じ目にあうかそれとも自分と国を見て回るか2択を迫ってきた。勿論国を見て回る方を選んだ。何故この2択なのかずっと考えてた。そしたら帰り際にあの一言。マッシャーは最初から気づいてた。僕がジャガイモ狩りを探していた事に。だから直ぐに戦闘の出来る前者の1択と不意打ちの出来る上更に戦いやすい場所に誘導出来るように国を見て回る後者の1択を提示したんだ。悔しかった。結局最後まで何も出来なかった。マッシャーの掌の上だった。戦う場所も選ばせてくれていたのに。だから別れ際にマッシャーに言ったことは次は戦うって意思表示だった。それをマッシャーは分かって少し笑った。僕もなんとなく少し笑った。今度会ったら戦うんだ。怖がって逃げるんじゃなくて。」
ナナシは拳を握り自分に誓う様に強く胸に当てた。
「そうか……じゃあ邪魔する奴がいたら任せろ。」
「………うん、お願い。」
話が終わると外から走る音が聞こえ扉が開く。そこにはキャリルが笑顔で立っている。
「ピッタリだったよ!」
そうして合流したキャリル3人で話しているとあっという間に夕食になり明日の式もあるので早めの就寝になったのだった。
次回式開始です。




