服
更新遅くなりました。式までの1日1日書いてきます。
キャッローツ王国の最上階、端の部屋そこでご機嫌な鼻歌が聞こえてくる。使用する者がいなくなってから使われず手入れだけされていた部屋、その中には1人と1匹が制作に取り掛かっていた。
「最高だなあ。魔ペット。」
「ソウデスネ。」
王様と話をした後もう遅いということで豪華な夕食(全部ニンジン入り)を振る舞ってもらいシャワーを浴びて就寝。そして本日、朝食を食べ、少し城の案内を受けた後早い昼食を食べ俺とナナシは自由行動をすることに。ナナシは城の中を見て回るようだ。
俺はと言うと昨日2つ返事で了承してくれた織り室で制作に取り掛かっている。
どうやらこの部屋の物は何でも使っていいとのこと。
俺が絶賛使用中の織り機も性能が良い。他には大抵の布は棚に分けられ仕舞ってあるし、今使っている織り機やら自動縫い機やら服の製造に必要な器具が揃っている。
これを自由に使っていいとのことだ。鼻歌も歌いたくなる。
「何を作っているんデスカ?」
「ああ、防寒着だ。この服寒いし普通に寒い国行ったら凍え死にそうだ。だからまずはと思ってな。収納は頼んだ魔ペット。」
魔ペットは頷くとペタンと座り喋らなくなる。俺は手際よく織り機で毛糸を編む。
ガタッ ガタッ
静かな部屋に織り機の規則正しい音が響く。心地いいな。10分くらいしたところで完成した。
「出来た。この調子なら今日だけで何着も作れそうだな。」
編んだ服を掲げ満足し畳む。畳んだ服を魔ペットに渡す。魔ペットはそれを口に入れる。
これを10回くらい繰り返したところでコンコンコンと扉をノックする音が。
「開いてるぞ。」
そう言うとナナシが入ってきた。
「おう、ナナシ。城の探検は終わったのか?」
「うん、一応。ここまで来るの大変だったよ。」
ナナシは疲れた表情で魔ペットの隣に座った。
「どうしたんだ?」
「下では2日後の準備で忙しなく動いててさ、僕が歩いていると手伝って欲しい、こっちも、こっちもって、連鎖して結局一通りの場所の準備を手伝わされたよ。」
ふうっとナナシは魔ペットの隣で深く息を吐く。
「それで下の準備は終わったのか?」
「終わったよ。全部。」
「全部?」
「うん、何回も呼ばれるの面倒臭いから1つ1つ完璧に終わらせて来たよ。」
どれくらいの作業量か想像出来ないが1人では手に余る仕事量だろう。
それを全部って……。手伝いに引っ張り回される理由が分かるな。
「お疲れ様。」
「うん。」
後で城の仕上がりを見て驚く事になるのだがそれは後々だ。一先ずゆっくりしたい、ここなら静かだろうと
当たりをつけて来たらしい。まあ静かだが。
「ここで休ませて。もう手伝うことは無いだろうけど。」
ナナシはそう言うと魔ペットを持ち上げ足に座らせる。
「ああ。俺は今のうちに服を作っとく。」
「へぇー以外だなあ。ドロってそんなことも出来るんだ。」
「一応な。リクエストがあったら聞くぞ。」
「分かった。考える。」
じゃあその間に今作ってる服は仕上げるか。上着ズボン、上着ズボンと作ってまた上着を作っているところだ。
ガタッ ガタッ ガタッ ガタッ
「良いね。この感じ。落ち着く。」
ナナシは目を瞑り音に聞き入っている。ポツリ…とナナシは言った。
「そうだなあ。空を、飛びたいなあ。」
「空?」
「うん、空。だってこんなに広々としているなんて知らなかったよ。黄色くて大きな歯車が覆う窮屈なのが空だと思ってたから。」
初めての青い空か。ナナシのところでは空は変化しないしな。でも今なんで空が?
「それで、空が何で出てきたんだ?」
「服のこと考えてたら空飛びたいなあって。」
「お、おうそうか。流石に無理だぞ?空飛ぶ服なんて…。」
作るとしたら特殊な布または魔法か……。両方持ってないな。
「そっか。そうだよね。」
落ち込まないでくれ。魔ペットがこれでいいのか?と目で訴えかけてきている気がするが今回ばかりは難しいだろ。そんなやりとりをしているとコンコンコンとまた扉をノックする音が。
「開いてるぞ。」
このやりとりナナシでもやったな。
「おじゃまします。あれ?ナナシもいる。さっき手伝ってたね。城の皆がお礼したいって探してたよ。」
「えぇ〜いいよ。僕はここで休んでるから。」
あからさまに勘弁という表情でナナシは首を振る。
「ところでキャリルはなんでここに?」
「式の練習の休憩。どう服の作成は順調?」
そう言うとキャリルはナナシの隣へ。
「ああ、いい感じだ。キャリルもリクエストあったら言ってくれ。」
中断していた作業を始める。といっても殆ど仕上げなので直ぐ終わった。
織り終わった服を持ち上げる。うん、完成だ。
「へえぇードロ凄いね。びっくりしちゃった。」
「まあな。魔ペット頼んだ。」
さっきと同じく魔ペットに畳んだ服を渡す。
「さて今度は縫うか。」
棚に仕舞ってある布からどれが良いか選ぶ。
「うーん、ナナシは着てみたい服とかあるか?」
やんわりと空飛ぶ服から遠ざけるように聞く。
「え、動きやすい服とかかな。」
「動きやすい服、動きやすい服。伸縮性がある方が良いか……。」
直接布に触り材質を確かめ組み合わせる。よしこれでいこう。
「ここ静かだね。下とは大違い。」
「うん、ここだと全く下の音が聞こえないね。」
「まあ最上階の端だからな。聞こえないだろ。」
自動縫い機にセットして後はここを押せばいいのか。
「式で言う言葉とか覚えなきゃいけない事が沢山あって大変だよお。」
「しょうがないだろ、国あげての式なんだから。」
「そうだけどさ。」
ブーブーとキャリルは文句を言っている。
「僕は一通りの城の事を手伝わされたよ……。おかげで大体何がどこにあるか分かったよ。後でキャリルの部屋に遊びに行くね。」
それを聞いた途端たちまちキャリルは元気になり「絶対だよ!」と今日遊びに行くことが確定した。
「そろそろ休憩終わるから戻るね。それじゃあ2人とも夜に来てね!」
そう言ってキャリルは部屋から出て行った。
「……俺もか?」
「当たり前だよ。」
ふうっ。夜はここには来れないか。残念だがまあいいか。
俺は自動縫い機のスイッチを押して縫い始めた。
式まで後2日。




