まったりとゆっくりと
ちょっと今回危ない人出てきます。読む時は注意をお願いします。
広い貧民街に建ち並ぶ小屋に軽快なリズムを鳴らす小屋が一つ。
その中を恐る恐る覗く少年が一人、緊張の面持ちで陰に潜んでいる。
中にはドレス姿の少女。少女の目の前には銀色のテーブル?があるようだ。
小屋の中は薄暗く少女の顔も屋内も良く見ることは出来ない。
左手には何か持っているようだ。
少女はテーブルに向かって何か話している。すると左手に持つ、何かを思い切りテーブルに叩きつける。
グシャッ。
何かが潰れて液体が飛び散る音がする。
その音は一定のリズムを刻み貧民街に木霊する。
一体何をしているんだろう?少女は手を止めるともう我慢できないと言った感じで叫んだ。
「ああ!!なんて良い音!!素晴らしいですわぁ!!今までに無い新搾感!!はぁぁ、うっとりしてしまいますぅ。」
色気のこもった声で少女は言う。
「あなたもそうでしょう?え?ぶぴっ?何を言っているんですか?でもそのぶぴって声もいいですわぁ!!
もっと聞かせて下さる?あなたのその声を!!この手に感じる新感覚を!!味あわせて下さい。」
正直聞いてて危ない人だと言うのは分かった。だけどテーブルの上には何が乗っているんだ?
暗くて良く見えない。だが、少女が持っている物をまた叩きつけたことで乗っている物が分かった。
大きめのジャガイモだ。そのジャガイモに向かって何かを振りおろし叩きつけている。
紫色のドレスの少女はリズム良く両手で持った何かでテーブルの上のジャガイモに振り下ろす。
グシャッ。
「ブッ。」
少女が振り下ろす度響く潰れる音、短く息の抜けた聞きたくない音。
ジャガイモに当たる度ビクッと腕と足が浮き上がる。その様が見ていられなくて僕は目を逸らす。
この少女が犯人?今までのジャガイモを襲った?来るまでに静かだった黒い小屋には既に生存するジャガイモはいないのだろう。
「あぁぁぁ。良い音。これはこの種族の皆さんごと搾僕認定したいですわぁ。」
うっとりとした声で一人喋る少女。勿論返答を返す者などいない。
不意に
「どう思いますぅ?そこの方。」
少女は流し目で僕の方を見る。咄嗟の事に僕は動けず少女と目が合う。
少女は恍惚とした表情で笑う。
「あらぁ?どうかしましたぁ?そんなに怯えた顔をしなくても取って食べたりはしませんよぉ。」
ケラケラと朗らかに少女は笑う。
その場面を切り取れば間違いなく絵になるだろう。だが現実は違う。少女の隣には横たえられ既に事切れているジャガイモ、薄暗い小屋、そしてそんな場所で何事もなく笑う少女。紫のドレスが一層異様さを際立たせている。僕が何も言わずにいると急に少女はむすくれた表情をしてドレスと同じ色の長い髪を指でいじる。
「無視ですかぁ?酷いですよぅ。私わぁあなたに話しているのにぃ。」
まったりと少女は喋る。怖い。ジャガイモを潰していた物は何処へいった?平然としているこの少女はなんだ?疑問と恐怖で埋まりそうな頭を自分の情けなさへの怒りで押し込め自身を奮い立たせる。
「無視してないよ。」
そこまで言うと息を吐く。嫌に緊張してバクバクと耳元で心臓が音を立てているようだ。だが自分に心臓や拍動の歯車はあるのかナカミに聞いても結局教えてはくれなかった。なのでこの音はなんなのか分からない。
「あらぁ?そうでしたのぉ?申し遅れましたぁ。私マッシャーと申します。どうぞお見知りおきを。」
間延びしたようなまったりとした口調でマッシャーと少女は名乗った。
「僕はナナシ。」
マッシャーは一瞬驚いた表情を浮かべるが直ぐに消すと笑みを深める。
「ナナシさんですねぇ。ところで何故こんなところにぃ?あなたのような方が来る場所ではぁ無いと思うのですがぁ。」
ゆっくりと話しながらマッシャーはこちらに向かって来る。まるで興味の出た物を見つめる猫のように瞳を爛々と輝かせている。勿論笑みは貼り付けたままだ。
僕はまた固まりそうな体を必死に動かし後ずさる。
ここに来て初めてドロに行き先くらい言ってから来れば良かったと後悔する。
助けは来ない。ここからどう逃げるか。
僕が逃げるために思考を向けていると少女の姿が霞む。そしてそれを視認したと同時にマッシャー目の前にいた。下手に動いたらジャガイモの二の舞いになりそうだ。その前に僕は動けない。
マッシャーは興味深げに訝しげに悩むように僕を見ながらぐるぐると僕の周りを歩く。
「ほぅほぅ。ナナシさんはぁ人じゃないんですかぁ?」
「うん、そうだよ。」
隠す必要も無いので肯定する。するとマッシャーは一層笑みを深め
「これはこれはぁ!また新搾感がありそうですぅ!!」
これ程嬉しい事はないとマッシャーは飛び上がり喜ぶ。そして閃いたとばかりに僕を見てこう問うた。
「ここでぇ、ナナシさんに2つ提案がありますぅ。まずは1つ目、あのテーブルにナナシさんが横になって私の搾僕兼新搾感提供係になるかぁ、2つ目はぁ私とぉこの国を見て回るかぁ。どちらが良いですぅ?」
と絶対に1つ目の提案は飲む訳無いので実質1択だ。どっちを選んでも変わらない提案をしてくるのかと思ったが1つ目と2つ目で提案が劇的に違う。選択肢は無いので国を見て回る事を了承することにした。
「えぇぇぇ、そっちですかぁ。私わぁ1つ目を選んで欲しかったですねぇ。」
「いえ、2つ目でお願いします。」
僕はきっぱりと断る。
「仕方ありませんねぇ。分かりましたぁ。それでは行きましょう。」
とパッパッとドレスを払うとマッシャーは歩き出した。
僕は動くようになった体を動かしその後ろを付いて行く。なんだか変な事になったなあ。
結局僕はマッシャーと名乗る紫の少女と行動を共にすることになった。
この頃1幕の時より長く書いているのですが読みにくいでしょうか?




