昔話
俺はとある山奥の小さな村に住んでたんだ。総人口は100人くらい。
繁栄した村では無かったけど山奥を開拓して畑作って畑仕事したり、山に入って狩りをしたり、はたまた山菜を取ったりして普通の村と変わらない生活してたんだ。
俺にとってはこの畑仕事や狩り、山菜を取るのが好きで毎日が楽しかった。
でも俺の村は普通の村じゃなかった。
他の村、それに旅人が俺達の村を目にした人達は言うんだ、『灼髪』だって。
俺の村は『灼髪』族って名前の種族だった。
『灼髪』って言われる所以は名前の通りこの髪だ。
特徴は髪の毛の端に炎が揺らめいているような模様、赤い瞳と浅黒い肌だ。俺の見た目と一緒だろ?
『灼髪』族は動けば動くほど身体能力が向上する特殊体質がある。
体に流れる血によって。血が沸騰するって例えればちょうどいいかな。
動けば動くほど血が煮えたぎり闘争本能が駆り立てられる。
動いてる間は便利なんだけど、その後の虚脱感と疲労が凄まじいんだ。
俺達『灼髪』族の血は数滴飲めば一時的に炎を出せる、1人分の血を飲めばあらゆる物を焼きつくす灼熱を生み出せるようになるって言われてた。
そのせいで血を求めるコレクターやらが血眼になって俺達の村を探した。
そのせいで俺の村はそんなコレクター達に見つからないよう深い山奥に村を作っていった。
でもやっぱり見つかる時は見つかるものでさ、その度に俺達は新しい拠点から逃げ出すんだ。
そうやって転々と移動している間に村の人達は1人、また1人といなくなっていった。
いつの間にかコレクター達の間では『灼髪』族じゃなく『灼血』族って呼ばれるようになった。
飲めば魔法が手に入る、正真正銘魔法の血って言われてな。
殺さなくていいから血を採取できるようコレクター達は殺傷能力のないせいぜい手傷を負う程度の獲物ばかりを用意してた。
あわよくばその傷で動けなくなった『灼血』族を捕らえようと。
同じ人族なのに追ってくる奴らはまるで狩りを楽しんでる目つきをしてた。心底ゾッとしたよ。
ああ、俺達は山で狩っていた動物達と同じなんだって。
命からがらみんなで逃げ出して何回目だったかな……。
また新しい拠点が出来て追手が来ない日々が何日も続いた。
一族のみんなは各々の仕事をしに山、畑に向かった。
その時をコレクター達は狙ってた。俺はその時山に山菜を取りに行ってた。
でも暫く経つと山菜を取りに来た他の人がいない。嫌な予感がした。
この頃追ってきた奴らが来ないからもう追うのは諦めたんだとその頃の俺は思ってた……甘かったよ、自分の考えが。
山を駆け下りて新しく出来た村に向かった。いなかった。誰も。
必死に村の中を走って叫んだ、誰かいないかいたら返事してくれって。
一族の人の名前を1人1人呼んでも返事がなかった。
狩りをしに行った人達が入った山に行っても、畑仕事をしに行った人達がいるはずの畑に行っても誰もいなかった。
俺は……1人になった。それからは生きるのに必死だったよ。
働く場所もその時には色々な所に『灼血』族の名前が知れ渡っててロクに無かった。それでも働かせてくれる人がいたけど何処かからコレクター達の耳に入ってまた追われて。
そうやって生きてきた俺の目の前に1人の物好きが現れた。それが俺がドロボウを目指すきっかけになったんだ。
「「………。」」
2人は黙りこんでいる。
「このくらいで今日はいいか?」
俺は喋りすぎたかなと頬を掻く。
「「………。」」
「お、おーい?2人とももしかして寝てるのか?」
2人とも沈黙して何も話さない。俺は首を傾げ2人のそばに寄ろうと腰を浮かす。が……
「うわっ!?びっくりした。なんだよ、いきなり。寝たのかと思ったぞ。」
2人が逆にそばに寄ってきた。
「お前ら近えよ。」
2人に挟まれるようになり俺は身動きがとれない。
「ドロ。大変だったね。」
とぎゅっとキャリルに抱きしめられる。
「はっ?いやいやいや!!ちょっと待て!!もうかなり前の事だから乗り越えたって!!」
魔ペットの視線が痛い。凄い見てる。
「ご主人様………。奥様に言っておきマス。ご主人様はタラシだと。」
「待て!!待ってくれ!!魔ペット、そういうのじゃないから!?」
表情は変わらないが視線が軽蔑している。
「あの……キャリルそろそろ離してくれないか?後で俺が殺されそうだから。」
「あ、ご、ごめんね!!」
とガバッとキャリルは離れる。
「魔ペット、な?大丈夫だから、な?」
「報告シマス。ゼッタイに。」
ああ、殺される。
「ねえ、一つだけ聞いてもいい?」
キャリルは小さく手を挙げる。
「ん?なんだ。」
「その……『灼髪』族の他にはいないの?その…チが特殊な人達は。」
「ああ、いるぞ。コレクターの界隈では『魔血 マジックブラッド』と呼んでいるらしい。他にも凍髪の『凍血』族、土髪の『土血』族なんてやつらもいるってのを聞いた。今まで会ったことはないけどな。」
「そうなんだ。教えてくれてありがとう。」
「ああ。あれ?そういやナナシは……寝てるし。」
振り返ると地面に横になってるナナシがいた。
「じゃあそろそろ寝るか。」
「うん。そうしよう。ありがと、ドロ。お話聞かせてくれて。」
「いいよ、こっちもありがとな。」
「うん。」
「おやすみ。」
「おやすみ。」
俺は焚き火の火を消した。
ーーーーーーーーーーー暫く経ってーーーーーーーーーーーーー
俺は眠らずに空を見てた。ちょっと離れた所でキャリルが静かに寝息をたてている。魔ペットはいつの間にやら俺のお腹辺りに横になり寝ている。
「眠れないの?」
「おわっ!!びっくりした。起きてんのかよ、ナナシ。」
「まあね。」
森の方を向いて横になっている為顔は見えない。
「ドロも今まで苦労してきたんだね。」
少しの沈黙の後ポツリとナナシは言った。
「んあ?いきなりどうした?」
「うーうん。なんでもない。ただ僕は話せるような昔話も無いからさ。初めて自分がロボットなのが悔しいと思ったよ。」
ナナシは寝返りをうち空を見る。
「別にそんな良いもんじゃないぞ。昔の事を話せるからって何かあるわけでもないしな。」
「でも良いじゃないか。話せる過去があるって。ドロは乗り越えたんでしょ?」
「まあ、な。もう大分経つしな。俺が小さい頃だし。」
「今も追われてるの?」
「いや、そうでもないさ。今でも『灼血』は高値で取引はされてるけどな。でも流行は過ぎたよ。」
「そうなんだ。」
「今度コレクター達に会ったらどうするの?」
「そりゃ、ぶっ飛ばすさ。」
俺は心に決めていた。次コレクター達に会ったらぶっ飛ばす事を。そしてまだ生きていれば他の一族の居場所を聞き出す。
「気になってたんだけどさ。魔ペットの言ってた奥様って誰?」
俺はどう言おうか沈黙する。だがナナシはそれに気づいて気を利かせた。
「いいよ、言いたくなかったら。でも後で教えてよドロが話したくなった時に。僕は待ってるよ。」
「ああ、ありがとな。ちょっとまだ話す準備が出来ない。だから待っててくれ。」
「うん、分かったよ。どうせ僕らは今後離れることは無いからね。」
「その言い方やめてくれ。」
ナナシはクスリと笑う。
「俺はそろそろ眠くなってきたな。」
「僕はまだボーッ起きてるよ。」
「そっか。じゃあ明日は頼むぜ。ナナシ。」
「うん。お休みドロ。」
「ああ、おやすみ。」
会話が終わって暫く経つとドロも静かな寝息をたてる。それを見てナナシは笑う。
「ドロ、言ってなかった事があったよ。僕は眠らなくてもいいんだ。」
寝ているドロは気づく事もなく寝息をたてる。そして静かに夜は更けていった。
これで1日終わりました。長くなりました。




