新たな出会い
「遅いなあ。ナナシ。」
「仕方アリマセン。初めての外の世界デスシ。薬を探すのも一苦労デショウ。」
1人と1匹はポツリと呟く。ナナシが行ってから2時間くらい経っただろうか。別に俺達は一歩も動いていないので景色は相変わらずだ。まだ腹部はズキズキと痛むが動けない程ではない。今一番懸念すべきは魔ペットだ。さっきから様子がおかしい。なんだかチラチラと俺の傷の部分を見ている気がする。
「ご主人様。」
「お、おうなんだ?」
見ていたのに気づいたのか魔ペットはこちらを見る。
「もう我慢できマセン。」
「え?何がだ?まさか。」
「クダサイ。ご主人様。ご主人様の血を!」
カパッと魔ペットは口を開き腹部の傷口に飛びかかる。俺は魔ペットの顔を抑えると地面に転がった。
「魔ペット!!落ち着け!!」
「ご主人様、ご主人様アアアア!!」
パタパタと魔ペットは手を振り回すが届かない。
「血を血ヲヲヲヲ!!」
「魔ペット!!いい加減にしろ!!激しく動くなって言ったのどこのどいつだ!?これじゃ傷が開く!!」
「ご主人様ご主人様ご主人様。」
魔ペットは聞く耳を持たない。
「っ!お前ピョットビ石で飛ぶ前に密かに俺の血飲んだだろ!?こんな時に暴走するんじゃねえよ!!」
「ご主人様アアアアアア!!クダサイ!!血を!!!」
「ナナシーー!!早く来てくれ〜!!」
叫ぶがそうタイミング良く来るわけもない。だがこちらに歩いて来る音が聞こえる。ナナシか!?いや違う。このタイミングで歩く音が聞こえるならナナシじゃない。ナナシなら走ってくるはずだ。魔ペットを両手でしっかり抑え足音の出所に目を向けるとそこには1人の少女が立っていた。髪は明るいオレンジで背中くらいまで伸びている。顔立ちはまだ幼く俺とナナシより少し年下くらいだろうか。俺と人形が悶着しているのを驚いた顔で見ている。
「誰だか知らないけど助けてくれ!!」
俺はオレンジ色の髪の少女に助けを求める。
「え、大丈夫?」
と驚いた顔で言われる。
「遊んでるんじゃないの?」
そっか遊んでるように見えるのか。こんなに必死なのに。
「お願いだから!!助けて。俺怪我してるの!!今も痛いんだよ!」
「え、怪我してるの?あ、でもそう言ってくる人は危ないから近づくなって言われてたんだ。」
「いや本当に怪我してるから!?頼むよ。」
そして今度は走ってくる音が聞こえる。これはまさか……
「ドロ!!どうしたの!?なんか騒がしいから心配で走ってきたんだけど。」
ゼーゼーと息を吐きながらナナシは言う。た、助かった。心の中で感謝する。
「ナナシ、助けて。魔ペットを俺から離してくれ。」
「え?遊んでるんじゃないの?」
なんだ!?そんなに遊んでるように見えるのか!?目の前の魔ペットは本能剥き出しで襲いかかってきてるのに!?心の中で感謝したのが馬鹿みたいだ。
「早くしてくれ!!」
「わ、分かった。」
ナナシは直ぐ魔ペットに手をかけ俺から離す。
「サンキュー。死ぬかと思った。」
「ナナシ様離してクダサイ!!ご主人様の血を血ヲヲヲヲ!!」
「わあああ、ドロ何したの?魔ペット怖いよ。」
「ああ、ちょっとな。」
俺は魔ペットに関する事を話すのを渋った。ナナシが信用出来ないとかじゃなくて、俺の心の準備がまだできてない。ナナシはそれ以上は聞かず、魔ペットを掴んでいる。暫く喚いていた魔ペットだったが静かになった。
「落ち着いた?魔ペット?」
とナナシが聞く。魔ペットは返事をしない。
「魔ペットって気絶するの?」
「いやしない。寝はするけど。」
「もう良いです、ご主人様。ナナシ様お願いがアリマス。」
なんか嫌な予感が……。
「ナナシ様の血をクダサイ!!」
「魔ペットやめろ!!」
カプッ。魔ペットがナナシの腕に噛みつく。
「遅かった!ナナシ早く魔ペットを引き剥がせ!!」
「え?でも別に痛くないよ?」
ときょとんとした表情をナナシはする。
は?痛くないって?どういうことだ?魔ペットは未だナナシの腕に噛みついている。血を絶賛吸われ中のはずなのに。だがナナシは依然平気そうだ。
「どうなってんだ?魔ペットが噛みついてるのに。」
すると魔ペットに異変があった。
「マ、マズイデス。」
と魔ペットは言いポテッと地面に落ちる。
あーそういえば、ナナシってロボットだっけ。
「不味いってヒドいよ!」
ナナシは少しショックを受けたようだ。
「ナナシ、不味くてありがとな。」
「なんか複雑なんだけど。」
ナナシは肩を落とす。
「魔ペット、正気に戻ったか?」
「あれ、ご主人様。どうシマシタ?それに、ナナシ様いつお帰りにナラレタノデ?先程ご主人様と帰ってこないとお話していた所デシタ。」
今まで何事も無かったように魔ペットは話し始める。俺はそんな魔ペットを連れて離れると何があったかを魔ペットに説明した。魔ペットはこの状況を理解すると俺とナナシともう1人に向かって深々と頭を下げる。
「大変申し訳アリマセンデシタ。ご主人様、ナナシ様。後、そこにおられる方。」
といきなり話に自分が出てきたことにオレンジ色の髪の少女は驚く。
「人形がしゃべった。」
謝られた事より人形がしゃべることの方に食いつく女の子。
「あれ?この子どうしたの?」
ナナシは誰?と頭の上にクエスチョンマークを浮かべている。
「魔ペットに襲われてた時に丁度この場に来た子だ。ごめんな、変な事に巻き込んで。」
俺はナナシに説明し、巻き込んだ事を謝る。
「え、ううん大丈夫だよ!それよりあなた達は外の国から来たの?」
「ああ。」「うん、そうだよ」
同時に俺とナナシが返事をする。少女は興味深そうに俺達を見る。
「へえー、これが外の国の人達、うん、うん、うちの国と全く違う。」
何か納得したように少女は頷く。
「あ、自己紹介がまだだったね。私は『キャッローツ王国』キャーロールン王の第一王女、キャリル!よろしく!!」
元気よく少女キャリルは挨拶したのだった。




