出発
「それで?どうするよ?」
「いや、僕に聞かれても…。」
握手を交わし少し経った今、彼らはこれからどうするか悩んでいた。
「動くにしてもねえ。」
チラッとドロの傷を見る。
「大丈夫だ。一応動けるさ。来た時よりは大分マシだ。」
ドロは視線に気づくとそう返した。
「まずはドロのその傷をなんとかしないと。いざって時に動けないよね?」
「それもそうだな。正直なところ走るのは無理そうだ。」
ドロは傷口を見て顔を顰める。
「じゃあ、僕が街を探して薬を取ってくるよ。」
「待て。金も無いんだぞ。それにもうここは国の中かもしれない。」
「どういうこと?」
ここが国?だったらどんな所なんだろう?
「森の中なのに静かだ。国じゃなかったら今頃何かとは遭遇してる。」
「治安の問題ってこと?」
「まあ、そんな感じだな。国外の森だと色々な種族がいるんだ。森と生きる種族、森を食う種族、森を活かす種族、まあ森だけでも多くの種族がいるのさ。森をめぐってしょっちゅう争ってる。戦闘音もしないしな。そんなわけでここは国だと俺は思う。」
ドロはそう言うと深く息を吐いた。マシだとは言っていたが痛むのだろう。話してる最中は表情にあまりださなかったが顔が険しい。
「本当に大丈夫?」
「大丈夫だ。ここまでで聞きたい事はあるか?」
「えーとそれじゃあ、国と街だとどう違うの?」
知りたかったことを質問する。
「入国する為に入国証が必要なのが違いだな。後は諸々行ってみれば分かる。」
今聞き捨てならないことが聞こえた気がする。
「入国証って?無いとやばいんじゃないの?」
「ああ。俺達は今不法入国者ってことだな。」
「………それ捕まるよね?」
「当たり前だろ。」
当然と言ったようにドロは言う。
「いやいやいや!!捕まるんだよ!?」
僕はぶんぶんと手を振る。
「そうは言ってもな。俺達……ドロボウだぜ?」
「あーまあ、そっか。え?俺達?それって……魔ペットとドロってことだよね?」
「何言ってんだよ。お前もだよ。大体ドロボウと行動する時点でお前もドロボウの仲間入りだろ?」
「……へ?」
あれ?もしかして?これは着いてきたのは間違いだったかもしれない。
「これでナナシもドロボウの仲間入りだ。」
「はあ、あの時1人で逃げて捨てとけば良かったかも……。」
「おい!今最悪な事言ったよな!もう諦めろよ!」
僕がドロボウ。なんか変な感じだ。
「分かったよ。でもドロボウって具体的に何するの?」
「ん?ふふふ、よくぞ聞いてくれた!」
ガバッとドロは立ち上がる。ヨロッとなったが持ち直し話し始めた。
「ドロボウはな!1人1人専門分野があるんだよ!金銀財宝!国宝!金!あらゆるものに対して専門の盗むドロボウがいる!」
「へ、へえ。」
ドロがいきなり熱弁を振るい始め若干気圧される。なんか口調も変だ。そんな中でもドロはドロボウについて話す。
「それにドロボウには階級があってな!最高の称号がドロボウなんだ!」
「え?」
もしかしてドロは凄い奴なんじゃ……と思ったけど今までの感じからして、それは無いかなと首を振る。
「ないない。」
「何がだ?」
「いやこっちの話。ドロボウの階級ってどれくらいあるの?」
「全部で5つある!下からコソドロ、ヌスビト、シーファー、カイトウ、ドロボウの順に上がっていくんだ!」
以外にあるな〜と関心する。
「で、ドロは今どの階級?」
一番気になる所だ。ドロは今どの階級なんだろう?なんとなく予想はつくけどまあ…違うかもしれないし…。
「コソドロ!」
自信満々に答えるドロ。
「……やっぱり。」
僕はそんな事だろうと思った。
「やっぱりってなんだ!やっぱりって!」
「いや……なんでも。」
僕は顔を反らしなんでもないことをアピールする。
「それで?ギアシュタットにいた時はドロボウって呼ばれてたけど。」
「あれは…そのあれだよ。なんか呼ばれてた。それで別に訂正する必要も無いかなって……。」
「調子に乗ってたと。」
「乗ってねえよ!?気分は良かったけど……。」
ボソッとドロは呟く。
「まあドロボウについてはなんとなく理解出来たよ。そろそろ話を戻すよ。どっちにしろ僕が動かないと薬は手に入りそうにないから探してくるよ?」
「えーまだ話足りない!」
「いいから!これ以上聞いてたら暗くなっちゃうよ。」
ドロはドロボウの話になると止まらないらしい。暗くならないか心配で僕は空を見上げた。
「うわあ!!青い!!」
茶色くない。それに開放感、どこまでも高く飛んでいけそうな澄んだ青。森のせいで良く見えないけど切れ間から覗く空に僕は感動した。
「そういえば、ナナシの街には青空は無かったな。」
「うん。こんなに綺麗なんだ。なんか泣きそう。」
「泣くなよ。まず人のいる場所を探すぞ。それにそこまで行けば開けた所のはずだから、もっと空が見えるだろう。」
「そうだね。人がいる方向分かるの?」
ここで今まで会話に参加していなかった魔ペットが口を開く。
「私が分かりマス。少々お待ちクダサイ。」
「分かるんだ!凄いね。魔ペット。」
魔ペットを見てからドロを見る。
「俺をなんで見た?」
「なんでもないよ。」
「何でも無くないだろ!!」
いつの間にかまた木に背中を預け座るドロは憤慨して言う。
「ナナシ様、分かりましたよ。ここから南に人の気配がアリマス。そう遠く無いところなのでナナシ様だけであればすぐ着くことデショウ。」
「南ね!分かった。それじゃあ行ってくるよ。」
「お待ちを、ナナシ様。これを渡しておきマス。」
と魔ペットは口から取り出したものを僕に差し出す。
「これは?」
手渡されたものは何処にでもあるようなキャップのついたペンだった。
「そのペンを持っていると歩いた道にその持ち主だけにしか分からない印がツキマス。印を付けるときはキャップを取ってクダサイ。印を付けない時はキャップを閉じてクダサイ。キャップをしていても、していなくても印は見えるので、そのペンを肌身離さず持っていてクダサイ。」
「分かった。じゃあ薬を見つけたらこの印の付いている通りに道を歩けば帰ってこれるんだね。」
「ハイ。それではオキヲツケテ。」
「気をつけるんだぞ。」
「うん、行ってきます。」
僕はキャップを開けるとそのペンをポケットに入れて歩き出す。見たことのない場所へ。




