その後
透明な粒になったナカミは僕の中に入ってくる際教えてくれた。怪我をしてしまうとすぐに体が維持できなくなること、だからドロボウを責めないでほしいということ。長時間の戦闘が出来ないということ、その他色々な事を教えてもらったがそれは後々だ。なぜあんなに敵視していたドロボウを庇うような事をするのか分からなかったがナカミがそういうなら恨む事はしない。それに言われなくても責めることも恨む事もしないだろう。結局僕はドロボウを憎めないくらいには知っているからだ。最初にあった時よりドロボウの評価が僕の中で上がったなと思う。
そんなドロボウはというと丁度ハサミを杖代わりにこっちに来るとこだった。
「何で…だ?動けなくなる程度に攻撃したはずなのに。」
ドロボウは困惑していた。それと同時に僕の方を見て泣き出しそうな顔をしている。
「ナカミはかすり傷でも体を維持できなくなるって言ってた。」
「そ、そんな。ごめん!また…俺は…あー。」
ドサッ!
ドロボウは前のめりに倒れこむ。
「わっ!大丈夫?」
「大丈夫だ。ただ…血が…足りない。」
ドロボウの歩いて来た道には血の道ができていた。よく見るとドロボウは血塗れでかなりの重傷のようだ。
「最初に止血しときゃあよかった。魔ペット。」
ドロボウが人形の名前を呼ぶとハサミは人形へと姿を変えた。
「なんでございマスカ、ご主人様。…まず傷を塞ぎましょう。」
魔ペットは主人の指示なしに糸を出し針を出す。
「え?魔ペット?待とうか。え?縫うの?縫って治るの?絶対痛いよな。」
「縫いマス。応急処置ですが、傷を塞がないと死にマスヨ。ご主人様。」
と魔ペットは有無を言わさず針に糸を通し傷口に歩み寄る。
「魔ペット…待って…待ってくれ、そんな…俺の言うこと何でも聞くんだろ?」
ドロボウは傷口を縫うのが嫌なのか魔ペットになお食い下がる。
「奥様もいらっしゃいマスノデ。ここでご主人様に死なれるのは困りマス。」
「お前…あいつと俺、どっちの味方だ!」
「どちらもでございマス。」
そう言うと魔ペットは傷口の脇に針を刺す。
「痛っ!ちょっ魔ペット!痛い。」
ドロボウはバタバタと悶える。
「暴れないでクダサイ。ご主人様。手元が狂いマスヨ。」
魔ペットはドロボウに見えるように針を見せる。ドロボウはその針を見ると青ざめ静かになった。魔ペットはそれを良しと見るや縫合を再開する。
「痛い。痛い。痛い。」
ドロボウは痛いを連呼する。
どことなく魔ペットと呼ばれる人形がドロボウで遊んでいる様に感じたがそこは触れないでおく。
「本当にごめんな…。お前には謝ってばっかりだ。」
「いいよ。でも気になったんだけど動けない程度にってあの無数の針も?」
あんなもの食らったら無傷どころじゃすまないだろう。
「針?あーあれは殺傷能力は皆無だ。針に触れると透明な糸が絡まって拘束するって代物。だからあたっても外傷はない。あの時は当たらなすぎて半ばやけくそに取り囲んで一斉に撃っただけだ。」
「そうなんだ。」
針に殺傷能力が無いのは驚いた。刺さるように見えるというブラフなのだろう。
「ハサミを投げた時は流石に余裕が無かった。柄を当てるつもりだったのに……。」
暗い顔で話すドロボウ。
「もう起きてしまった事だから…しょうがないよ。」
「いや、責めてくれて良いんだ。俺のせいでお前の大切な人を。」
「ナカミは僕の中にいるから。そんな顔しなくていいよ。それにナカミが責めないでほしいってさ。」
「いや、でも…。」
「本人が言ってるんだよ?僕もこの通り落ち着いてる。なんだか穏やかな気分なんだ。まるで今までが不完全だったような……ナカミが中にいるおかげかな。」
納得したような、していないような表情をしてドロボウは沈黙した。
そしてドロボウは切り替えるように顔を上げると口を開いた。
「ここにはもう入れないな。」
「どういうこと?」
ドロボウは腹部を縫われながら話す。
「話してると痛いの意識しなくて済むな。時間切れだよ。そろそろ新しいギアロボット達が生産される頃だ。また警備が厳重になる。」
「今まではどうしてたの?」
「戦える時は戦ってそれ以外の時は適当にあしらって逃げてた。前の警備隊のギアロボットは指揮官が全然指示を出せていなかったから余裕で全滅させられたけど次もそう上手くいくとは限らない。」
思案しながらドロボウは話す。
「そっか。」
「ギアボットが結局見つからなかった……。」
ポツリと言うとドロボウは心底悔しそうに地面を叩く。
「なんで、そんなにギアボットが必要なの?」
「ん?話してなかったな。だけど話している時間はなさそうだ。」
空を飛ぶギアアニマルが見える。旋回して飛んでいったようだ。
「ここから離れるぞ。魔ペット、どうだ。」
「一応縫い終わりマシタ。ですがアクマで応急処置デス。激しい運動等は控えてクダサイ。」
「分かった。ありがとな、魔ペット。」
「いえいえ。」
「よし、行くぞ!」
とドロボウは力強く言ったが……
「「「…………」」」
「動けない!」
泣きそうな顔でこちらを見る。
魔ペットは顔を覆い呆れているようだ。
「手を貸せばいいの?」
仕方なく僕が肩を貸すことに。
「で、どこに向かえばいいの?」
肩を貸したはいいがどこに行けば良いのか分からない。
「あ、道に迷ってたの忘れてた。」
ドロボウはノープランらしい。
「どうするの?」
「どうしよう?」
「………良く今まで捕まらなかったね。」
「やめろ!呆れた目で見るんじゃない!魔ペットもそんな顔して見るな!」
「苦労してるね…。」
「ハイ。」
魔ペットは頷く。
「そ、そんなことはいいから早くなんとかしないとやばいぞ。俺はこんなだから戦えない。」
ドロボウは話題を変えようと今の状況をどうするか提案する。
「来た道は一方通行、ギアアニマルの旋回した方向も一方通行の道。他の道は………無いね。」
僕はぐるっと周りを見渡すが道は他にないようだ。
「袋小路ってことか?」
「そうみたい。」
「「「………」」」
3人で沈黙。
「……なんか持ってないの?」
僕は何か無いのか聞いてみる。道中の事を考えると心配でたまらないが藁にも縋る思いだ。
「そんな便利グッズ持ってるわけ…待てよ。もうここにいる理由は無いな。だったらこれが使える。」
ゴソゴソとドロボウがポケットから取り出したのは拳より小ぶりのピンク色の石だ。
「これはピョットビ石。投げれば今まで投げた回数だけ遠くに飛ぶって石だ。投げ過ぎるとあまりにも遠くに飛ぶから注意な。」
「飛ぶって?」
「簡単に言うとワープみたいなもんだ。ただし自分達で行き場所を決められない。もしかしたら戦場の真っ只中に飛ぶかもしれないし、はたまた砂漠のど真ん中かもしれない。東西南北あるいは地下に。どこに飛ぶかは運試し。楽しいだろ?」
なんとなく皮肉が混じってるような気がする。これを使って前嫌なことがあったのだろうか?
「でもこれ吐きそうになるから嫌なんだよ。」
とドロボウは顔を顰める
「それでこれを投げてキャッチすればいいの?」
「え〜ほんとにこれで行くのか?」
「つべこべ言わずに早く。」
「分かったよ。」
渋々僕に石を渡す。
「魔ペット俺に掴まってろ。」
「ハイ。もう掴まってオリマス。」
「早いな!」
「それじゃあ投げるよ!」
「おお、準備万端だいつでも来い。」
僕は軽く上に向かって石を放る。軽く投げた石は直ぐ僕の手元に落ちそのままキャッチする。
すると視界がぐにゃんと歪み思わず目を瞑る。体が回るような感覚に吐き気を覚えながら石をぎゅっと握る。突然体が回るような感覚が消えると足に感触が蘇ってきた。それと同時に鼻をくすぐる優しい匂い。僕は目をゆっくり開けるとそこは僕の全く知らない世界だった!
1章終わりました!これまで読んでくださった皆さんありがとうございます!!
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第2章 4つ刃者編 お楽しみに!




