透明 VS ドロボウ 2
ナカミの立っていた場所は針山になっており彼女の姿は見えない。ドロボウの息は荒いが、傷はほとんど擦り傷程度でさほど怪我はしていない。そのドロボウは未だ警戒を解かず針山を眺めている。
「ナカミ………………。」
呆然と僕は立ったまま彼女の名を呼ぶ。
針山はこんもりと盛り上がっており彼女の見る影もない。唐突に始まった戦闘を僕は何かを出来る事もなく只見ていることしか出来なかった。悔しいけど僕にはどうすることもできない。殴り合いならまだ止めることも出来たかもしれない。でも2人の戦闘はそんな甘っちょろいものではなかった。息もつかせぬ命の取り合い、僕なんかが入る余地など無かった。
そう思っていた矢先、針山に変化が起きた。
「クリアウォール。」
清んだ透明な声音が響く。針山はその声が響くと同時に崩れ落ち一人の少女がまた姿を表した。
少女は針山になる前と全く変わらない姿で立っていた。
「無傷かよ。」
チッとドロボウは舌打ちをしハサミを構え直す。
「この程度、何ともない。」
ナカミを守った透明な壁は彼女の左手に吸い込まれ形を透明な剣へと変える。
ドロボウはそれを見るや即座に動いた。
「っらあ!」
ハサミを下段に構え切り上げる。ナカミは片手の透剣で軽くいなしもう片方の槍剣で刺突する。
心臓を狙った刺突をドロボウは左手で剣を殴りつけ下へとずらした。
「ぐっ。」
「ずれた。」
槍剣はドロボウの左腹部に深々と刺さり、透明な刃の先端がドロボウの背中から
覗く。ナカミはドロボウの腹部を蹴りつけ吹き飛ばす反動で剣を引き抜いた。
ドロボウは受け身も取れず地面を転がると、あっという間に周りは血溜まりとなりその中心にドロボウは転がっていた。
透明な刃からは血が滴り、ドロボウのおびただしい出血が地面を染める。
「次で、最後。すぐ、楽にしてあげる。」
槍剣についた血を払いドロボウに歩んでいく。
「がっはあ、はあ…………まだ終われねえ。まだ……だ。ここで終わるわけにはいかない!」
カタカタと震える手でハサミを掴みおぼつかない足で立ち上がる。
「ぜえぜえ…………はあ……はあ……。」
「苦しいでしょ?痛いでしょ?」
ナカミは立ち止まり問いかける。
「はあ……はあ……。」
「もう立ち上がらなくていい。」
「まだだ……。」
ドロボウの目から光は消えない。満身創痍でありながらもなお立ち上がる。
「助けてねえ。あいつを…………。叶えてねえ…………夢を。あいつとの夢を。こんな場所でくたばるわけには……いかねえんだよ!」
ハサミをナカミに向けドロボウが叫ぶ。
「でもここであなたは死ぬ。」
彼女は止めていた足を踏み出し話す。
「私が殺すから。」
ナカミは一切の温かみの無い声でそう宣言した。
「やってみろ。」
ドロボウはハサミを接合部から外し右と左に1つずつ持ち構えた。




