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ドロボウは夢叶える為世界を旅する(過去編)  作者: フロッグ
1幕 歯車の街
22/83

逃避

やーっと更新出来ました。

相も変わらず黄色い空に笑い声が響く。空から見下ろせば街はきっと茶色一色だろう。逃げて逃げて、しまいに僕は笑っていた。焦げ茶に染まる歯車仕掛けの花の前で。笑うしかなかった。ここに自分の居場所は無い。自分の存在意義も無い。


ーーー十数分前ーーー


「ってな訳で俺は2機を壊した。これで満足か?」


と最後にドロボウは付け足す。


「うん。納得した。」


僕は頷きドロボウを見る。。僕に向き合うドロボウはどこか安心した雰囲気をだし


「そうか、なら……良かった。」


噛みしめるように言葉を発する。少しの沈黙。ドロボウがまた口を開く。


「魔ペット、『糸』。」


「かしこまりマシタ。」


魔ペットの手から糸が2本伸びる。ドロボウはティメナの亡骸に向かい胴体と立ったままの下半身を胴体の下に横たわらせると魔ペットの手から伸びる糸を使い繋ぎ合わせた。


「さて、縫い目は……目立たないな。女の子に傷は残せないからな。よしもう1人。」


ドロボウは今度はソラトに向かって歩きティメナと同じように縫い合わせる。


「男はちょっとくらい傷が残ってもいいだろ。カッコいいとか思うかもしれないし。それに男が傷がー、とか言ってたら恥ずかしすぎる。」


独り言をぶつぶつと呟きドロボウは一通りの作業を終了する。


「よーし完璧、男の方も傷は目立たないな。適当に作業するのは嫌いだからな。しっかり傷も分からないようにしといたぜ。」


職人のような事を言いソラトをおぶってこちらに戻ってくる。


「何をしたの?」


「縫ってくっつけた。むちゃくちゃ聞こえ悪いけどな。」


「別にいいよ。ありがとう。」


「いや、別に俺がやったことだから感謝することないと思うぜ。」


「それでも、ありがとう。」


「お前と喋ってると調子狂うな!!ったく。」


頭を掻きドロボウは顔を顰める。


「感謝してるんだから素直に受け取っておいてよ。」


「分かったよ。素直に受け取っとく。」


「ご主人様そろそろ……。」


「ああ。ってことで俺と魔ペットは最後の鍵を探す。多分お前とはもう会わないだろうな。」


「そうだね。会わないと思う。」


「それじゃあな。名前分かんねえからこれしか言えねえな。」


「いいよそれで。じゃあねドロボウ。」


「ホントはちげえんだけどなあ……まあいいや。じゃあな。」


「?、じゃあね。」


そう言うとドロボウは僕ら3人が行く目的として定めていた方向に歩いていき気づくといなくなっていた。もう3人ではなく1人だけど。

僕はドロボウが見えなくなると後ろを向き1人で帰る。歩けば歩くほど見慣れた町並み、ドロボウの話が信じられないくらい、いつも通りだった。いや、いつも通りという時点でもう駄目なのかもしれない。いつも通りということは変化がない。所詮は仮初めの街、変化などあろうはずもない。ただただ名の無いロボット同士が漫然と過ごし輸出される。

周りを何事もなく歩く人々に違和感を覚え、見ないように足早に自宅への道のり急ぐ。死地に送り出されるのを知っている者は何人いるんだろうか?ギアアニマルペットショップも本屋も気味の悪い場所にしか見えない。気持ちが悪かった。こんな工場を作った奴は相当可笑しいやつだろう。こんな事実知らなければ良かったと内心後悔し溜め息をつく。ふと脇道が目にはいる。


「懐かしいな。ナカミと会ったわき道だ。」


脇道の前で足を止める。生憎前回の様に白いものは見えなかった。あれから一度もナカミとは会っていない。あれからと言ってもどれくらい前なのだろう。実際自分の時間感覚にロボットだと分かってから自信が無い。


「やっぱり……いないか。」


分かっていたのについ肩を落とし溜め息をつく。彼女は一体どうしているだろうか?つい脇道に入り先を覗く。ナカミはいない。だがよくよく考えれば先刻泣き通しだったため瞼は赤く腫れている筈だ。ならそんな顔を見せなくて良かったじゃないかと前向きに考え踵を返しもとの道に戻る。本来の道に戻ると足早に帰宅する。

 自分の家へ着くとドアの前で立ち止まり深呼吸を1つ。ドアノブに手をかけドアを開くと「おかえり」といつもの母の声。ああ、ずっと何故今まで疑問に思わなかったんだろう?不思議だった。なぜなら母の名前も父の名前も知らないのに今まで生活していたのだから……。

母がキッチンから玄関まで来ると心配げな表情をして


「どうしたの?」


と聞いてくる。僕は母を見て思わず固まる。少しの間。その間も変わらず心配げな表情で僕を見る母に問いを投げかけた。


「母さん、母さんの名前ってなんだっけ?」


表情を固くしたまま母に名前を聞く。母はなんだそんなことかと微笑む。


「忘れたの?酷いわねネネネネネネネネ。」


母は口をカパカパと開閉し人形のようにネを連呼している。そんな母を見るなり僕は家を飛び出した。


走って。走って走って。走って走って走って走って走って走って走って…………。


そして今僕は笑ってる。今を、今日を、明日を、未来を、見ないよう見ないよう、逃げて逃げて、不安も途方に暮れた感情も、笑って笑ってただ風に吹かれて回る花を見て笑う。もう考えたくない。一体僕はこれからどうすればいいっていうんだ?

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