真っ赤
近くに息遣いが聞こえる。身体に伝わる人の温度に芯までじわっと熱くなるのを感じ心地よい。口では分からないと言ったが本当は分かっていた。ソラトとティメナが言い合うのを見て、なんとなく、ただなんとなく、透明な彼女を思い出してしまった。会話をして立ち去る際に見せたあの表情が忘れられない。思い出すと感情に歯止めが効かなくなって胸に刺さる痛みで心臓がバクンと跳ねる。
彼女に会いたくなった。透明で優しい彼女に、表情の読みづらい彼女に、意外と冗談を言う彼女に、不器用な彼女に、本当は表情を変えられる彼女に、会いたかった。一度出会っただけなのに。一度話しただけなのに。一度別れただけなのに。そんな事を考えていたら、涙が流れて、流れて流れて止まらなくて。何故か分かることがある。彼女に会うのは次で最後だ。漠然とした直感、だがこの直感には自信がある。そんな思考をするうち、涙は収まってきた。
「もう大丈夫。落ち着いたよ、ありがとうティメナ。」
顔を上げティメナの顔を見て笑う。するとティメナは顔を真っ赤にして
「そ、そう落ち着いたなら良かった。」
「おーいむっちゃ動揺してるぞー。目が物凄く泳いでてどこ見てんだか分からねえな。」
「う、うるさい!」
「で、相棒どうだった?」
とソラトは聞いてくるが何のことだか分からない。
「どうだったって?」
「そりゃ、ティメナの抱擁だよ。」
「!?」
「温かかったよ。凄く。」
「何言ってんの⁉」
もうティメナは顔から湯気が立ちそうな程顔を赤く染める。
「ええ、違う?じゃあ、えい。」
と今度は僕からティメナを抱き締める。
「え、え、ちょ。」
「やっぱり温かいよ。ティメナ。」
「当たり前でしょ⁉」
「そうだね。でも温かい。」
「わー流石相棒。照れ殺ししてるな。」
顔から湯気が上るどころか火が出そうな程顔を赤くしている。そんなことは露知らず僕はティメナの耳元で返答を返す。そして僕はゆっくりと抱擁を解いた。
「どうしたの?ティメナ?顔凄い真っ赤だよ。風邪ひいたの?」
「違うわよ。」
「でも、真っ赤だよ?」
「相棒熱測ってやれよ。」
「そうだね。」
「ソォラァトォ。」
クリクリの目を物凄くきつくしてティメナはソラトを睨み付ける。
「ティメナ、大丈夫?顔が険しいよ。」
「大丈夫よ。で、何で手を握ってるの?」
「脈拍測ってる。物凄く脈拍早いよ。やっぱり風邪ひいたんじゃ。」
「だ、大丈夫よ。風邪なんかひいてないわ。」
「熱はどうだろう?手だと分かりづらいね。」
と僕はティメナとおでこをつける。
「ホントだ。ティメナの言う通り熱はないね。」
おでこをつけたままティメナの目を見て話す。
「もう無理ー‼」
とおでこを離したティメナはソラト目掛けてグーパンを放ちソラトは驚いた顔で「何で、俺?」と叫ぶと吹っ飛んでいった。




