伝記と学校
更新遅くなりすいません。
不思議で悲しい休日が終わり、またいつもの日常が戻ってきた。学校に着き席につこうとする僕にソラトが気づくとこちらに歩いてくる。
「よ、おはよう。休日どうだった?」
「楽しかったよ。そうそうフッツェの冒険記が売ってたんだよ。」
あれからナカミと別れた後涙が止まらず、気持ちが落ち着いた時には随分時間が経っていた。帰っても空虚な感覚が胸を占め、シャワーを浴びても心は晴れず晩ご飯も喉を通らなかった。両親に心配され久しぶりに1人で外に出たから疲れた事を理由に早めに2階に上がりナカミと出会った日はそれで終わったのだった。
次の日朝早く目覚めるとそういえばマンガ本を買って読んでいなかった事を思い出し、布団からのそのそと這いずりマンガ本を手に取った。
手に取るとまたのそのそと布団に戻りマンガ本を開いた。最初は今までのフッツェと同じように伝記から始まる。だが今回は伝記というより昔話のように始まった。
『昔々、私達が生まれるずっと昔、変わり者の研究者がいたそうな。その研究者はロボットに対しての執着が凄まじく、日々研究を繰り返し、次々と人の生活に役立つロボットや愛玩用の動物型ロボットを造っては人々を喜ばせた。だが、肝心の研究者は欠片ほども満足をしていなかった。むしろ渇くばかり。ほとほと困った研究者はふと、あることを思いついた。自分と対等に話せ永遠に近い刻を共に暮らせる人間を創ろうと。そこからの研究者はまるで取り憑かれたかのように今まで以上に研究に没頭し、寝る事も休むこともせず外にも研究者は出なかったそうな。研究者が研究に没頭して1週間が過ぎようとした頃、彼は外に出てきた。今まで見せたことのない満ち足りた顔で。そして研究者は言った。出来た、出来たんだ。私の私だけのロボットが。
そう言うと街の人の前で倒れ研究に没頭して人々に顔を見せなかった期間と同等の時間を懇々と研究者は眠り続けた。研究者は目が覚めると寝ていた期間に迫る勢いでご飯を食べた。一息つくと、彼は人々にお礼を言った。街の人々は何があったのかを彼に聞いた。彼は満足そうな顔を浮かべ、ついに出来たんだ。私のロボット、と言う。彼はその後研究室に戻り自分だけのロボットに名前をつける。「ギアボット」と。ギアボットが生まれると彼の生活は一変した。特に彼自信が良く笑うようになり、人々ともギアボットと一緒により一層仲良くなった。そうして月日は流れ、ある出来事が起こる。ギアボットが故障し周りを手当たり次第に攻撃を始めた。人々は逃げ惑い、研究者はその光景を唖然とした表情で見つめる。そして彼は……………。』
そこでマンガの伝記は終わっていた。次のページをめくると目次があり挿し絵はフッツェが光り輝く歯車を掲げている。もう1枚ページをめくると白紙だった。次のページも次のページも次の次のページもめくってみても白紙。結局伝記と挿し絵、目次以外何も書いていなかった。
「あれ、なんか暗号を解かないと読めない感じ?」
布団の中でも出来る事を色々試してみても変化は無くマンガは白紙のままだった。
そしてその後も試行錯誤を繰り返すもマンガ本に続きは無く休日は終わり現時点の日常に戻るのであった。
「へー、どうだった?楽しかったか?」
「それがね、最初の伝記と目次と挿し絵以外何も書いていなかったんだよ。」
「そんなことあんのか?不良品なんじゃね?」
「どうだろう?色々試してみても駄目だったし、やっぱり不良品なのかな。」
「後で連絡してみろよ。」
「何の話してるの?」
僕とソラトの会話に第三者が会話に交じる。
「誰かと思えば小動物か。」
ソラトは溜め息をつき口をへのじに曲げる。
「しょ、小動物ですって‼」
彼女はそんな声を上げるとソラトの頭を拳骨で殴る。
「いってえな!なにすんだ小動物。」
怒り露に叫ぶソラト。
「そっちが私を馬鹿にしたんでしょ!?」
「だからって殴ることないだろ!」
そんな言い合いを目の前で繰り広げる。
「相変わらず仲良いね。」
「「良くない。」」
言い合いを止め声を揃え否定する2人。彼女はティメナ。大きなクリクリの茶色い目に、茶色い短髪、愛嬌のある顔立ち。男子にとても人気で妹にしたい女子NO.1に影で認定されている。そんな彼女が僕とソラトと話すのはティメナも家が近く幼なじみだからだ。ソラトはティメナにちょっとした悪口を言うがそれはいつも通りだ。昔から変わらない。
「仲良いね。」
と珍しく僕がからかう。
「ぐぬぬぬ、覚えてろよ。」
「何で私がこんな奴と仲が良いと思われなきゃいけないんだか。」
「なんだと?」
「なによ?」
また言い合いを始める雰囲気を出す2人を見て僕は笑う。だが2人はそんな僕を見ると、怒るどころか何故か心配そうな目で見てくる。
「どうした?」
「どうしたの?」
「え、何が?何か僕変?」
2人は言い合いを止め声をかける。
「いや、だって。」
と口ごもるソラト。
「泣いてるから………。」
とティメナ。
「そんなわけないよ。」
と僕。僕は目元に手を当てると目は濡れていた。
「あ、れ、何で泣いてるんだろう?」
「大丈夫か?」
ソラトは心配そうに声をかけてくる。
「大丈夫だけど、涙が、涙が止まらない。」
僕は、ぼろぼろと泣きながら答える。
「ど、どうすんの、なんとかしなさいよ。ソラト!」
「は、はあ⁉どうするってどうすんだよ!あ、そうだ深呼吸しよう。相棒、いくぞヒヒッフー。」
「何で妊婦みたいな呼吸しなきゃいけないのよ………。やらなくていいから!!」
最初は呆れ、その後僕がソラトの真似をして呼吸すると止めてくる。
「ティメナはなんかないのかよ!ほら相棒泣くなよ。よしよーし。」
「子供じゃないんだから。泣き止ませる、泣き止ませる………。えーい!ならば!立って!」
とティメナは僕を立ち上がらせる。すると………。
「とりゃ。」
と言い僕をぎゅっと抱き締めた。
「うぇ?」
「へ?」
驚く僕とソラト。
「私が思いついたのはこれだけ。だから泣き止むまでこーしててあげる。」
と僕をもう一度ぎゅっと抱き締めぶっきらぼうに言う。こうしていると顔は見えないので分からない。
そんな僕とティメナを見てソラトはぼそりと
「良いなあ。」
と呟いたのに2人は気づかなかった。




