ドロボウ戦線2
これでドロボウ戦線終わります。
「ぐぬぬ、あの野郎楽勝だとふざけたこと抜かしやがって。」
ベンは歯軋りをして視線を向けるドロボウを睨み返す。通常ではドロボウとベンの距離は声など聞こえない
がスパローの採聴によりベンにはドロボウが何を言ったか聞こえていた。
「A部隊さっさと仕留めろ。」
スパローの放聴でA部隊に支持を出す。スパローには採聴と放聴が長時間飛行以外に備わっており音を受け取り音を発する事ができるいわゆる伝達ができるのが最大の強みだ。
指示を聞いたA部隊は左手にクロック銃をホルスターから取り出し手斧を持ち直す。
「じゃあ、俺は素手でいくぜ。」
ドロボウはA部隊が戦闘体制に入り直すや否や手短にいる1人に一瞬で詰め寄り銃を構える1人目掛けて蹴り飛ばす。他の16人の隊員はクロック銃を構え発泡。クロック銃は銃身に秒針があり撃った後の弾の発射を時間差で放つようにできる。10人が普通の発泡、7人がそれぞれ1秒単位の時間差で銃を放つ。
「やべ。」
ドロボウはまたも瞬時に移動し屋内に逃げ込む。それを追い16人が一斉に家に向かい発泡。
「ひゃー、銃は当たったらやばいって。」
体を丸め家の端に避難。魔ペットも隣にちょこんと座りドロボウの指示を待つ。
「素手だと時間掛かるな。やめだ、魔ペット『ハサミ』だ。」
「かしこまりマシタ。ご主人サマ。」
魔ペットが口を開くと、口の中に右の輪が大きく左の輪が小さい柄がにゅっと出ている。
俺はその柄を握ると魔ペットの口から取り出す。
「サンキュー、魔ペット。」
「…………」
魔ペットは2つの柄が取り出されると融け合うように柄に取り込まれた。
「そういや、この状態だと喋れないのか。」
「…………」
「りょーかい。じゃ、行くぜ魔ペット。」
ドロボウは身の丈程もある巨大なハサミを片手で持ち、横薙ぎに屋内からハサミを振る。そしてハサミを振った位置より上の建物を思い切り蹴る。すると蹴られた家は綺麗に切られた断面を見せ飛んでいき前にいる16人を通り越しB部隊の半数へと直撃した。
「おし、魔ペット『糸』。」
「おりや!」
ハサミの先端から糸が現出する。ドロボウはその糸を16人に一本ずつ付けると掛け声を上げて指揮官目掛けて16人を射出する。
「な!」
驚愕の表情を浮かべ慌ててベンは指揮官車から飛び降り離れる。その直後指揮官車に次々と衝突するA部隊16人。
「クソが!!全軍一斉射撃!!」
左右にいるドーベルがガトリングを家の原型が無くなった建物に向け発砲する。
「じゃあ左から回るか。」
ドロボウは跳躍しドーベルの後方で待機するD部隊半数の後ろに着地する。そのままハサミを振るかと思いきやハサミを地面に突きたて指揮官のいる場所まで走る。恐ろしい速度で近づいてくるドロボウに恐怖を覚えるベン。
「BC部隊迎え撃て!!」
声が裏返りながらの指示。彼もクロック銃を持つとがむしゃらにドロボウめがけ撃つ。
「素手じゃなけりゃ銃は怖くねえよ。」
ベンの撃った銃弾をドロボウは軽々と切り、いなし、尚も変わらぬ速度で走る。BC部隊も銃撃するが全く当たらない。目前までドロボウは近づくと急に角度を斜め後ろに変更し右で銃撃していたドーベル達めがけ走る。途中まで差し掛かった所で跳躍しまたもドーベルと後方控える隊員の後ろに着地した。そしてまたハサミを地面に突きたてる。
「よーしこんなもんかな。魔ペット地下で『糸』は残したな?」
「………」
「それじゃあ、いくぞ。」
ドロボウは扉を蹴り飛ばすよりも強い力でハサミの突き立つ前方を踏みつける。すると地面が坂になり左側にいたドーベルと隊員達、正面で圧倒されたBC部隊、ドロボウ正面に立つ残りの部隊、まとめて坂になった地面を転がり落ちる。
「さって、本来のハサミの使い方じゃないけど。」
と言うとハサミを開き先端に着く糸を後方に引っ張る事で糸を張らせる。
「これで終わりだな。」
ハサミを地面に刺し固定。転げ落ちるギアアニマル、警備隊の大部隊が向かう先は刃と同等の強靭さを備えた糸だった。
「わざわざお前たちの所まで行って切ってたんだぜ。存分に味わえよ。」
全ての部隊が転げ落ちるのを眺め、機械がバラバラになる音を聞くと地面からハサミを取る。
「魔ペット、戻っていいぞ。」
俺は手に持つハサミに呼びかける。持っている柄の部分と別の部分から魔ペットがぴょこっと顔を出し、それに続いていつも通りのちぐはぐな手足が現れる。完全にハサミと分離した魔ペットは口を開けハサミの先端から口に入れていく。柄までがすっぽり収まると口を閉じ、口を拭う必要は無いが拭う。
「ホントいつも思うけど、魔ペットの中どうなってんだ?」
「残念ですがそれはご主人様にお教えすることはデキマセン。奥様から言われておりマスノデ。」
「そっか、なら仕方ないか。」
残念そうな顔に悲しい表情をないまぜにしながらドロボウは納得する。上を見上げると5匹の鳥が飛んでいた。
「あーそういえばいたな。魔ペット『糸』。」
「かしこまりマシタ。」
魔ペットは右より小さい左手から糸を5本差し出す。
「サンキュ、こんな感じかな。」
ドロボウが糸を投げると3匹に命中し残りの糸は空振る。
「うーん、やっぱ素手だと安定しねえな。」
命中した3本を振りくっついた3匹をまとめて残りの命中しなかった2匹へ叩き付ける。機械同士が炸裂し軽い破砕音を響かせると空中を飛んでいた鳥達は地上に落ち機能を停止した。
「あとは………。」
「イーグル部隊突撃!」
吼え声が聞こえその直ぐ後に風を切る5つの音。鋭い翼を閃かせ5羽のイーグルは猛然とこちらに向かってくる。
「まだ残ってたか。」
先程命中しなかった糸を投げ軌道を変えないイーグル2羽に命中。その2羽を他の2羽にぶつける。ぶつけられた2羽はバランスを崩し速度を殺しきれないまま地面へ落下し厚い羽毛鋼鉄はひしゃげ機能を停止した。糸の付いた2羽も振る勢いをつけ地面に振り下ろす。あえなく2羽も機能を停止し残り1羽は尚も突進してくる。
「所詮は機械、恐怖は無いか。」
俺は突進してくるイーグルに前進し迎え撃つ体勢に入る。直撃する瞬間跳躍し背中めがけ踵を振り下ろす。
イーグルは地面にめり込み重苦しい破砕音を撒き散らし機能を停止した。
残存する者が1名を残し、いない事を確認すると残りの1名に歩み寄った。
「殺せ。」
ベンはドロボウが声の届く範囲に来るとそう呟く。
「やだよ。面倒くさい。」
ドロボウは首を振り笑う。
「なぜ、俺だけ残した。」
「もうこれ以上俺に関わらないよう生き証人が欲しかったってとこかな。いちいち相手にしている時間が勿体無いいからな。」
「じゃあ今までも適当にあしらっていたというのか。」
「ああ、今の惨状を見ればそうだろう?」
ベン以外の警備隊、ギアアニマルは全滅し今頃は地面にぽっかりと空いた穴の中で鉄くずになっているだろう。
「だからこれ以上俺に関わるな。次会ったら今度は容赦しねえぜ?」
ドロボウはベンの肩を軽く叩き街の方へ歩き出す。ふと思い出したように足を止め振り返り、
「そういえば何で俺達がここにいることが分かった?」
ベンは黙秘する力も無く情報を明け渡す。
「誰かは分からんが匿名でここにいるとの連絡が入った。だから部隊を引き連れ来た。」
「根拠も無いのにこんな大勢で来たのか?いくら何でもそれは無いだろ。」
「ああ、だが全く情報の入ってこない状況で1件だけこの連絡があった。藁にも縋る思いでここに出向いて見たらお前が本当にいた。」
「そうか、納得した。ありがとよ。」
そう言うと踵を返し街の方へと俺は向かう。薄々気づいていはいた。1日前まではいたのに警備隊が来る日だけいなく、俺と魔ペットに気づかれず家を空けた崩壊した家の主人。
「なあ、魔ペット俺達が住んでた家、案外やばい奴が住んでたのかもな。」
「いえ、分かりまセンヨ。ただたまたま外出を朝早くからしていたのかもシレマセン。」
「俺達に気づかれずか?」
「きっと私とご主人様も2回連続で成功したもんですから気が抜けていたんデスヨ。」
「そうか?いや、別に考えた所で答えは出ないしな。そういう事にしよう。でももしそうだったら家の主人には申し訳無い事したな。」
「そうデスネ。家がボロボロに帰ったらなってるんデスカラ。」
「それに家の前は大きな穴開いてるしな。」
と家の主人に心の中で謝りながら街へ歩いて行く。
これにてドロボウ戦線はドロボウの圧勝で幕を閉じた。
次回は学生話になります




