ドロボウ戦線1
ーーーー警備隊サイドーーーー
「総員隊列を乱すな。相手はドロボウ、何をしてくるか分からん。動きがあればすぐに銃撃しろ。」
ベンは声を張り上げ全体に指示を出す。
現在、ドロボウが根城にしている街外れの一軒家を目指している。周り一体は平地なので見晴らしが良い。目的地は行軍を開始してからすぐに見えた。
「やはりあのチビ、警備隊をバカにしてやがるな。目にもの見せてやる。」
獰猛に笑い目的地を射殺す視線で見つめる。
「スパローを偵察に向かわせろ。」
警備隊直属ギアアニマル、製造番号002、MODEL-TYPE-スパロー。主に偵察に使われ戦闘には向かない。一応武装品でナイフを口内に仕込んであるが中々使用する機会はない。飛ぶ速さも余り無く、体を覆う羽毛鋼鉄も軽量化の為薄い。地面に叩きつけられれば重要なパーツに簡単にダメージがいき駄目になる。それほど脆いスパローはフォーゲル型で一番上空で飛んでいられる為、偵察で使われるのだ。
5匹のスパローが偵察に向かうのを見届け次の指示を出す。
「A部隊B部隊C部隊はこのまま前進、ギアアニマル部隊、D部隊は家を包囲出来るよう隊列から離れ左右に分かれろ。勿論ドロボウがいたら銃撃して構わん。」
今回部隊はA部隊20人、B部隊、C部隊はそれぞれ50人、D部隊が20人、ギアアニマル部隊は100機で構成されている。ギアアニマルは地上機90空中機10だ。そのうち地上機はドーベルがすべてを占め空中機はスパローとイーグルで構成されている。
警備隊直属ギアアニマル、製造番号004、MODEL-TYPE-イーグル。イーグルはスパローと違い完全な戦闘型だ。スパローより一回り大きく、翼はブレードとなっており突進する事で切断する事も可能。更に羽も翼と同様ブレードとなっていて、羽を飛ばすことで遠距離での戦闘も可能にしている。だが体全体を覆う羽毛鋼鉄が厚く羽も重量があるため長時間の飛行はできない。付け加えて言うと羽を飛ばしすぎるとバランスが取れなくなり飛行が出来なくなる。飛ぶ速度も攻撃手段もあるが長期戦には向かない設計だ。そしてドーベルは四肢に歯車が付いていたが、イーグルもスパローも嘴の付け根に歯車が付いている。
手早く指示を出すと指示の出された部隊が一斉に動き出す。ギアアニマル部隊とD部隊は半分ずつ分かれ左右に行軍する。
「A部隊は速度を上げろ。B、Cは速度を保て。」
最初の指示で部隊が動くのを見届け正面を進む部隊に指示を出す。ほとんど走るようなスピードで行軍を開始したA部隊は最初の指示で動いた部隊に追い付いている。そこからさらにスピードを上げA部隊は走る。A部隊は特攻隊だ。いち早く目的の場所へたどり着き標的を殲滅する。標準武装はクロック銃と呼ばれる時間差で射撃できる銃と歯車を模した手斧だ。銃は腰に付いているホルスターに手斧は背中の腰に付ける。基本は銃を左、手斧を右に持つ。
「そろそろAが着くな。総員速度を上げA部隊に続け。」
遠目から見て後数秒でA部隊は家にたどり着きそうだ。そう見ている間にA部隊は家の前に立ち腰に下げている手斧を持つと扉に突進するため一人が助走をつけ走り出すと………。
内側から物凄い勢いで扉が吹き飛び突進しようとした1人に衝突する。
「よう、堅物共元気にしてたか?」
「流石ご主人様デス。ミゴトニ扉を吹き飛ばしマシタネ。」
「だろう?まあまさか、いきなり1人倒せるとは思ってなかったな。大方扉に突進してぶち壊そうとか考えたんだろ。野蛮だなあ。」
「全くでございマス。」
その場にいた警備隊全員が唖然となる。そこで日常会話をするような気楽さで話す、ドロボウと1匹?は出てきて早々挑発を警備隊にふっかける。
我に返ったA部隊は手斧を握り直し臨戦体勢に入る。
「おいおい、扉に下敷きになってる奴助けなくていいのか?まだ生きてると思うけど……。」
ドロボウが言葉を言い切らないうちにA部隊の1人が手斧を振りかぶり頭上からドロボウに振り下ろした。。
ーーーードロボウサイドーーーー
警備隊が家を包囲するまでの数刻前。
「いいか、魔ペット。多分警備隊はこの家を包囲する。包囲しなくても何かしらこっちを逃がさない様にしてくる筈だ。だから相手が動いたら俺達も動くぞ。」
「かしこまりマシタ。ご主人サマ。」
俺達は屋根裏で作戦会議をしていた。作戦といえる程の物ではないが。
「魔ペット、今この家の中に俺達以外の人はいるか?」
「イエ、ここには私とご主人様しかオリマセン。」
「お、なら良かった。これで心置きなくやれるな。」
「ハイ。」
「でもいつ居なくなったんだろうな?この頃はずっとここに籠ってたけど。」
「サア、ですが1日前には居ましたネ。」
首を傾げ魔ペットが記憶を探る。
「まあ、今話す内容でもないか。そろそろ警備隊も動きがありそうだし。」
屋根裏の小窓から外を見る。軍勢は大分近づいてき一番奥にこれまで何度も追ってきた指揮官だと思われる奴がいる。
「あーまたあいついるぜ。人のことチビ呼ばわりした奴。」
「いますネ。」
俺が愚痴るのを下から小窓を覗いていた魔ペットが聞き頷く。そんなやり取りをしている中、警備隊に動きがあった。
「動いたぞ。左右に分かれて真ん中は前進か。」
上から覗き動きを見る。
「真ん中の一番前がスピード上げたな。左右分かれるの見てから動かなくて良かったな、魔ペット。」
「ハイ、危なかったデスネ。」
もう少し間を空けていたら気づかず動いていた。
「惜しかったし詰めが甘いな指揮官殿。」
ほとんど走っている速度で来ていた真ん中が今度は猛然とスピードを上げダッシュしている。そこまでを見届けると俺達は下の階におり扉の前に立つ。外から金属音が鳴り響く。確か上から見た時大体20人位だったはず。
「蹴破ったら何人か倒せるかね?」
「ご主人様、蹴破る事が出来るのデスカ?ですが出来る出来ないにせよ、ご主人様がやることはすべて良い方に傾くと信じてオリマス。」
「そうか、なら…………。」
俺は思い切り左足で扉の中心を蹴る。すると留め具ごとごっそり扉が吹き飛び何かに当たるとそれごと扉は数メートル先に落ちた。
そして現在………
「危ねえな。流石にその斧にまともに当たったらきちいぞ。」
Aの1人が振り下ろした斧は家の床に生々しい傷跡を残しその中央に手斧は刺さっていた。
「悪いけど邪魔。」
ドロボウが斧を振り下ろした1人に右手で頬を殴り先程扉が吹き飛んだ地点に殴り飛ばした。
「ふーん。魔ペット、さっき少しの戦闘って言ったけど楽勝だからここら一体の奴、倒すわ。後々楽だし。」
「仰せのママニ。」
手をぐっぱぐっぱと握っては開きを繰り返すとニヤリと笑い
「さあ、やるか。」
と指揮官目掛け視線を飛ばしたのだった。




