表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ショートショートなど

裏表おとぎ話 聖者の話

作者: 本野ムシカ

ショートショートのような詩なのか、詩のようなショートショートなのか。

うっすらファンタジー感のある世界観での、吟遊詩人の歌の歌詞とでも思って頂ければ。



昔々のあるところ、一人の男が居りました。

彼は癒しの御業を以て、聖者と呼ばれておりました。


彼は瀕死の人間を、その手で癒してやりました。

彼に癒された者たちは、みんな涙を流しました。


彼は悲しむ人々を、その手で救ってやりました。

一度は死んだ人でさえ、触れれば命を吹き返す。


例え相手が罪人だって、彼は死なせはしませんでした。

傷を癒された者たちは、泣いて改心を誓います。



昔々のあるところ、一人の男が居りました。

彼は修めた武術によって、勇者と呼ばれておりました。


侵略に困る者たちを、彼は救ってやりました。

どれだけ強く言われても、宝は決して受け取りません。


数多の町や人のため、彼は力をふるいます。

道を塞いだ重たい馬車も、彼にかかればお手のもの。


獣に悩む農家のために、彼は一肌脱ぎました。

害獣どもを退治して、彼らの家畜を守ります。



昔々のあるところ、一人の男が居りました。

彼は溢れる知性を以て、賢者と呼ばれておりました。


差別に苦しむ人々を、彼は助けてあげました。

彼がその地を去ったあと、人はみんなが平等でした。


戦いつかれた人達に、彼は助言をあげました。

助言を聞いた人々は、平和に眠りにつきました。


人を悩ます食糧不足、彼にかかればお茶の子さいさい。

たった一週間の後、苦しむ人はすでに無し。



昔々のあるところ、一人の男が居りました。

彼は救世主とたたえられ、皆の希望となりました。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


昔々のあるところ、一人の男が居りました。

彼は癒しの御業を以て、悪魔と呼ばれておりました。


彼は死にたい人々も、気にせず癒してやりました。

苦しい日々に逆戻り、彼らは涙を流します。


彼は人々の悲しみを、一気に恐怖に変えました。

死者が次々蘇り、生者の居場所はどこへやら。


拷問を受ける罪人を、彼は無慈悲に治します。

傷が癒えればまた拷問、地獄でなければ何と呼ぶ。



昔々のあるところ、一人の男が居りました。

彼は修めた武術によって、悪魔と呼ばれておりました。


村人ではなく魔物の方を、彼は救ってやりました。

村人が泣いて頼んでも、彼は一切聞きません。


壊れた馬車が道を塞げば、彼は力をふるいます。

中に人々いたけれど、構わず馬車は木っ端みじんに。


農家に頼まれ肉食獣を、彼はあらかた狩りました。

草食獣が殖えようが、あとは野となれ山となれ。



昔々のあるところ、一人の男が居りました。

彼は溢れる知性を以て、悪魔と呼ばれておりました。


差別が嫌なら無くそうと、彼は人々を減らします。

一人残ったかの人は、その後どうしたことでしょう。


戦いつかれた人達に、彼は火種を与えます。

争い一気に激化して、みんな仲良く墓の中。


食べる物がないのなら、食べる者が消えればいいさ。

食べることすらできなくなった、屍は何も語りません。



昔々のあるところ、一人の男が居りました。

皆を地獄に突き落とし、当の本人は今いずこ。



同じ情景を違う描き方で二度表すことで、その差を比較していただきたいといいますか。

気が向いたら類型作品をいくつか作りたいものです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ