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後悔

作者: 斉木柏

カーテンの隙間から漏れる光で朝が来たことを知る。

仕事か。

そう思いながら身体を起こすことは憂鬱だ。

もう少しベッドの暖かさに触れていよう。

そう思い、目を瞑る。

暗闇が広がる。

研ぎ澄まされた聴覚。

不意に聞こえてくるかすかな寝息。

起こさないようにゆっくりと横を見る。

昨夜腕を回したであろう背中がこちらを向いている。



温かな肌。

湿る指先。

濡れていくわたしの身体。


昨夜の事情が頭をよぎる。

何故わたしは身体を委ねたのだろう。

何故わたしは抱かれたのだろう。




飼い猫のことを考える。

そろそろお腹を空かせてわたしを起こしにくるだろう。

わたしが眠る場所には何もない。

猫は置いていかれたと思うだろうか。

わたしを恋しがっているだろうか。


帰ろう。

猫が待っている。


ゆっくりと身体を起こし、衣類を身につける。

鼻腔をくすぐる煙草の匂い。

振るった髪からも同じ匂いがする。

やけにはっきり見えるのは、つけたままのコンタクトがそうさせているから。


ずれた布団を掛け直し、朝の気温で冷たくなった皮膚を温めてやる。

踏みそうな位置に落ちているメガネを枕元に置く。

なぜミントブルーなんて珍しい色にしたのだろう。

面白い人だ。

メガネを置いた音に反応したのだろうか。

目が開く。



おはよう。


もう行くの?


うん。



再び布団を被り、寝息を立てる。

ドアを開け、広がった眩しさに目を細める。

雪がまだ少し残るこの暖かな日差しは、やがて夏が引き連れてくる暑さに変わるのだろう。

湿った土の匂いを吸い込む。


テレビの横にあった観葉植物を思い出す。



ランニングをする男性。

犬の散歩をする老人。

そろそろ桜が満開になる。




お花見したいね。


しようか。





そんな何気無い会話がどこからか聞こえてきた。





何故わたしは抱かれたのだろう。


超短編、小説と言えるものなのか分からないですが、ふと思いついた文章を描いてみました。

お読みいただきありがとうございました。


抱かれたこと、というよりも、抱かれた結果に、よく後悔をしていました。笑


自宅に帰らなかった結果、化粧も落とさず、コンタクトも外さず寝て、朝起きた時のぼやけている割にくっきりとピントの合う世界を見て、あぁ…帰ればよかった…と。


一時の寂しさを紛らわす代償に、自分を待ってくれている存在に心の中でごめんねを繰り返し、自宅に帰るまでの移動の面倒臭さを嘆き、楽しそうに散歩する老夫婦の姿を見れば「自分は何をしているのだろう」と。


そんな、全ての出来事に後悔した、という出来事を、超短編ながら小説にしてみました。


こんなのをつなぎ合わせながら、いつか長編を書いてみたいなと思っております。


度々になりますが、お読み頂き、本当にありがとうございました。

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