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お茶会

「なんですかそれ? 死にたいなら死ねばいいじゃないですか」

意味がわからないです。


「それが出来ないんだよ。不死身の体でね」


「嘘つかないでください。あと、わたし、そういう死んでもいいとか言う人、嫌いですから」


「またまた、お嬢ちゃん、嫌いとか言わないでおくれよ」


「仕方ないですよ。嫌いなものは嫌いです」


「ふふふ、正直なんだねー、お嬢ちゃんは」


「あともう一つ、お嬢ちゃんって呼ばないでください。わたし、もう14才です」


「うーん、そうかー、お嬢ちゃんがそう言うなら……アリスちゃんと呼ばせてもらおうかね」


「微妙ですけど、その方がまだましです」


「よしよし。それじゃあ、アリスちゃん。君は死なないっていうのかい?」


「もちろん死にますよ、いつかは……」


「だろう? 人間は必ず死ぬものなんだよ」


「……自分のこと不死身だとか言ってませんでしたか?」


「それはまた別の問題だよ、アリスちゃん」


「……」


「ふふふ、そういう目で見てくるアリスちゃんも可愛いね」


「……結局、あなたもただの変態なんですね」


「ははは、面白いことを言うね。僕はただの『死にたがり』だよ」


「……」

もう、なんて言うか絶句です……

「だいたい……名乗る名前が『シニタガリ』ってなんですか!? 本当に気味が悪いです。『死神』のほうがまだましです。かっこいいとでも思っているんですか」


「ふふふ、僕が助けてなかったら、お嬢ちゃん今頃どうなっていただろうね?」

シニタガリさんのニタニタした笑顔が目の前に迫りました。

ーー怖い……


「……ごめんなさい」


「いやいや、いいんだ。僕は別にアリスちゃんを脅したいわけじゃないんだ。ただ、『死』の素晴らしさを理解して欲しいだけだからね」


「……」

んー、なんと言うか、何も言えないです。


「ほらほら、元気だしてアリスちゃん? 飴をあげようか」


「……毒入りですか」


「ふふふ、これは入ってないね。でも、死にたいって言うならすぐにでも毒入りにかえてあげるよ」


「……死にたく……ないです」


「そうか、じゃあただの飴だ」

ーーなんか怪しいです。

とりあえず貰って食べちゃいましたけど。


「じゃあ、アリスちゃん、ティータイムと洒落込もうか」


何が『じゃあ』なのかはよくわかりませんが、そんな感じで、シニタガリさんはどこからともなくカップとポットと敷物を取り出し、お茶の用意を始めました。


こんな路地裏の、死体の横でティータイムってどうなんでしょう……?



「勘違いして欲しくないんだけどね……」


「ん? なんですか」

出してもらったクッキーをかじりながら、わたしは聞き返します。


「僕は別に、君を殺そうとしているわけじゃないんだ」


「じゃあ、なんですか」


「ただ君に死んで欲しいだけなんだ」


へー……って!

「どういう告白ですか!? それ!」


「つまりね、君みたいな可愛い子には、幸せになって欲しいなっていうことなんだよ」


「いや、全然、『つまり』じゃないですし!」


「うんうん、元気がいいね」


「死んで欲しいと言いながら、元気になったのを喜んでいるのも意味がわかりません!」

なんだろう、この人のペースに呑まれすぎている気がする。


「さっきから言っているだろう、アリスちゃん? 『死』は幸福なものだって」


「そんなわけないです! 生きていなくちゃ、お母さんとも会えません」

……って

「あっ……」


「ふーん、アリスちゃん。お母さんに会うために旅をしているのかー」

……しまった、っていうかシニタガリさん、察しが良すぎます。


優雅に紅茶を飲みながらシニタガリさんは

「アリスちゃんは健気だね。でもさ、死ねばそんな面倒なことも考えなくて済むんだよ?」

と、笑いました。


「面倒なこと? ……それって、お母さんのことでしょうか?」


「うん、そうだよ?」


「そうですか、なら……あなたの事が嫌いです。大っ嫌いです」


「死ねばさ、そういう感情からも解放されるんだよ?」


わたしの最大限の怒りがまるで響いていないです……なんだか虚しいです。


「やっぱり君は死ぬべきだと思うけどなー」


シニタガリさんとわたしは相容れないみたいな気がします。





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