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第八十一話「バレンタイン」

 2月14日、その日付を聞いて何人かはふと何の日か分かるだろう。

 そう、バレンタインデーだ。


 ナクロにこの世界にそういう日があるのかと聞くと


「もちろんありますよ」


 と答えてくれた。

 でもそれ、貴方が書き換えたものですよね?

 と思ったが、聞くのはやめにしておいた。

 何か怖いしね。


 バレンタインと言えば、男子のステータスが表示される日とも言える。

 なぜなら、多くのチョコをもらうほどモテるという事実(もちろん自論)が明白にされるからだ。


 義理チョコを1ポイントとすれば本命チョコは10ポイントだ。


 さて、僕にはいくつチョコが渡されるのであろうか?

 それを楽しみにしつつ、学校へ通ってみた。


 結果は……0ポイント……。


 え!? ありえなくない?


 だって僕は剣道の大会で優勝した実績をもつ男の中の男とも言える人材だよ。

 テストの点だってそう悪くはない。

 なのになぜ……?


 理由はすぐに分かった。

 

 ナクロだ。


 ナクロは周りの女子から尽くの本名のチョコを満面の笑みで受け取っているのだ。

 ナクロにも実績はある。

 剣道大会で不正を働いたというマイナス点はあるが、その後の剣道は真剣に行っており、僕なんかも余裕で打ちのめしていた。

 それだけではない。

 テストの点もすべて100点、学年のトップの知恵者でもある。

 そして、そのカリスマ性のあるオーラ。


 全てにおいて完璧と言わざる負えない。

 全ての男子のチョコがナクロに集められているのだ。


 ナクロはがっかりしてる僕を見て


「貴方がたくさんチョコをもらえる世界にしましょうか?」


 と満面の笑みでそう聞いてきた。

 うん、むかつく。

 そもそも、そんな不正を働いてチョコをもらっても嬉しくはない。

 なので、断っておいた。


 はあ、溜め息しか出てこない。


 いいや、もう諦めよう。

 宿に戻り、そのまま不貞寝でもしようかと思った。その矢先。


「お兄ちゃん」


 夜。アスターシャが僕を呼び出した。

 何だろう?


 アスターシャに連れられたまま、人気の無い公園に辿り着いた。

 丸い月が綺麗な夜だった。


「これ、受け取ってください!」


 アスターシャが僕に渡してきたもの。

 それはハート型のチョコだった。


「え? これ、僕に?」

「はい! 迷惑だったでしょうか……?」

「いや、嬉しい。嬉しいよ!」


 初めて、チョコをもらった。しかも本名。

 妹からだとしても嬉しい。


「テレーゼさんに教わって頑張って作りました」


 その言葉に僕は感銘を受けた。

 僕のために頑張って作った。それだけでも嬉しい。


 宿に戻った僕は嬉し泣きをしながらチョコを頬張った。

 それをクレファスとガーデは気味悪がるように見ていたが、そんなこと知ったこっちゃない。


 バレンタインの夜の本名のチョコは美味しかった。

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