第八十話「正月」
クリスマスの次と言えば正月だ。
でもここは日本ってなわけでもないし、さすがに正月は無いだろうと思いナクロに聞いてみたところ
「ありますよ」
と嬉しそうに答えてくれた。
そうか。あるのかあ。
「僕が書き換えておきましたから」
へ? 今なんて?
もう一度聞いてみた。
「僕が書き換えておきましたから」
あのね。ナクロ君。
わざわざそんなことのために世界を変えられたらこっちが困るの。
なので
「正月が無い設定でお願いできない?」
とお願いしてみた。
するとナクロは
「貴方がお望みでしたら」
とすんなり了承してくれた。
何だろう?
世界って安いね。
ちなみになぜ正月が無い設定がいいかと言うと、現実世界とここの世界の違いを教えたいという僕の思惑があるからだ。
え? それならクリスマスの段階でそうすればいいかだって?
うん、その通りだ。
うっかり忘れてしまっていたのだ。
こういう時に使う言葉は”テヘペロ”でいいのかな?
違うな。
”ごめんなさい”だな。
正月が無い世界設定ならもちろん正月用の日用品も売ってはいない。
ただ、餅は売ってあるので、それを購入しておいた。
そして、正月と言えば鏡餅。
ただ、もちろん売ってはいない。
ということで紙に絵で書いておいて、それを宿の僕達の部屋に貼り付けておいた。
さて、正月パーティの始まりだ。
「何だ? この下手くそな絵は」
クレファスが僕が書いた鏡餅を指差して言い放った。
悪いな。絵心が無くて。
「これは鏡餅といって、僕の世界の行事に飾られる代物ですよ」
と説明しておいた。
それを聞いた。ガーデは
「何か地味だな」
といい、僕が書いた鏡餅の上に何かを書き加えた。
「俺っち的にはこうすればいいと思う」
とガーデは、自信有りげに言い放った。
鏡餅の上に書き加えられたものは何かというと、
扇子だ。
そうだ。忘れてた。
何か足りないなあと思ってたら扇子だったのだ。
さすがガーデ、扇子を書き加えるだなんてセンスがあるなあ。
今のダジャレをナビに聞かれようものなら
「良くそんなセンスが無いことが言えるわね」
と叱責されそうだ。
そういや、あれからというものナビと話したことが一度も無い。
最初は相棒とも呼べる存在だったナビがどこか遠くに感じられた。
まあ今はそんなこと考えてる場合じゃないな。
皆と楽しく過ごす時間は限られているのだ。
その分、たくさん楽しまなきゃ。
今日の晩、皆で餅を頬張り、楽しく雑談しながら過ごした。
この日が永遠に続けばいいな。
僕は心の中でそう思いながら、正月を過ごすのだった。




