第七十一話「笑顔」
僕は真実を話すことにした。
僕はこの世界の住人ではないこと。
ナビやナクロの存在。
僕がこの世界を卒業したらこの世界が消滅することなど。
アスターシャはそれを黙って聞くでもなく、驚いたりすることなく聞いていた。
「お前にこんな話をするのはどうかとも思ったんだ。けど我慢できなくって」
「私ね、スラム街で貴方が現れた時、正義のヒーローかと思っちゃった」
「正義のヒーロー?」
「うん、絵本に出てくるようなそのまんまのヒーロー」
「僕はそんな大層な人間じゃないよ」
「私からしたらとても大層な人間だよ」
「別に大層じゃ」
「大層だよ」
アスターシャと僕の押し問答が続いた。
その結果、僕は大層な人間ということになった。
それはいいとして
「お前はこれを聞いて何とも思わないのか?」
「私はお兄ちゃんの役に立てればそれでいいかな」
「僕の……役に……」
「うん。それで私が消滅するっていっても喜んで受け入れるよ」
そういうとアスターシャは満面の笑みを僕に向けてきた。
消滅するのに。アスターシャはそれを分かった上でその笑顔を僕に向けてきたのだ。
僕だったらそんな顔出来ない。
「ねえ、皆にもこのことを話してみたら?」
「皆?」
「うん、クレファスさんやガーデさんテレーゼさん。それにナクロさんにも」
ナクロは事情を知ってる(元々この世界の管理を担っている部分があるし)からいいとして、
他の三人にこの話をしても信じてもらえるのだろうか?
「だって私たち、家族でしょ?」
そうか。
そうだな。家族だ。
クレファスやガーデはちょっと変わったところがあるがいいおじさんで
テレーゼは優しいお姉さん。
皆、紛れもない僕の家族だ。
「分かった」
僕は皆にも真実を話すことにした。




