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第六十八話「温かい世界」

 僕は歩く、ひたすら歩く。

 何も考えず。何も目指さす。

 ただ歩く。歩き続ける。


 道端で人とぶつかる。


「邪魔だ! 小僧が」


 謝る気すら起きない。

 むしろ謝るのはてめえだ! こっちは家族を失って正気でいられないんだぞ!!

 傷ついてる人に暴言を吐くなんて人がやることじゃねえ。

 やはりこの世界は作られた世界なんだなあ。


 父さん、母さん、沙耶香。

 会いたい。

 家族に会いたい。

 僕の本当の家族に……。


 どれくらい歩いただろう。


 もうクタクタだ。

 

 今日はここで寝るか。


 僕はそのまま道端で眠りに着いた。


「ちょっと!」


 ん?


「ちょっと!」


 誰かの声がする


「ちょっと!」


 僕は目が覚めた。

 目の前には中年くらいのおばさんがいる。


「どうしたんだい? こんなところで寝ちゃって」

「うるせえ!! どうせお前も作られた住人なんだろ?」

「何を「作り物の分際でのうのうと僕に話しかけるな!!」


 酷いことを言ったのは僕でも分かる。

 だけど今の僕は正気ではいられない。

 現実世界で家族を失ったのだ。

 そんな惨状を思い浮かべて誰が正気でいられるだろうか?


「とりあえずこんなところで寝ちゃ風邪引くよ。家へ来な」


 僕はおばさんに案内されながらおばさんの家に連れてこられた。

 見た感じ普通の民家だ。


「さあ、上がって上がって」


 おばさんは僕を家へ上げた後に食事までご馳走してくれた。


「あら? どうして泣いてるの?」


 僕はいつの間にか泣いていた。

 どうしてだろう?

 食事の味がお母さんの手作り料理の味に似てるからなのかな?


 おばさんは僕を手厚く世話してくれた。

 あんなに酷いことを言ったのに


「おばさん」

「なあに?」

「どうして僕をこんなに手厚く世話してくれるんですか? 僕は貴方に」

「なあに、人として当たり前のことをやってるだけよ」


 人として当たり前。

 これも作られた世界の作られた住人の作られた言葉なのか?

 それにしては温かすぎる。


 朝。


「おい、あんた」


 おばさんのその一言で僕は目を覚ました。


「お客さんが来ているよ。あんたを迎えに来たって」


 お客さん?

 僕を迎えに来た人?

 誰だろう?

 

「うちの雅人が世話になっております」

「いいえ、あたしは人として当たり前のことをやったまでさ」


 僕の目の前に現れたのはナクロだった。


「良かったわねえ。無事に見つけてもらって」

「いろいろ有難うございます。そして、すいませんでした」

「何で謝るのさね」

「僕は貴方にあんな酷いことを」

「気になさんな。人それぞれ事情があるものさ」


 おばさんは、とても優しかった。


 宿への帰り道。


「雅人。この世界は作られた世界だ」

「…………」

「だけど、人の思いは現実世界と変わらない」

「…………」

「僕はどう君を慰めればいいだろうね」

「いいよ、もう」


 もういいよ。充分だ。

 確かにこの世界は作られた世界だ。

 だけど人の温かさを知ることが出来た。


 それに僕は落ち込んでる場合じゃない。

 それだとこの世界の皆に心配かけちゃうし。

 現実世界の僕がどうなっていようと今は関係ないんだ。


 前向きに行こう。

 今の僕は、この世界で生きているのだから。











「…………何か手を打つ必要があるわね」

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