第六十七話「全てを知った僕は」
僕は全てを思い出していた。
前の世界の僕。
僕は比較的裕福な家庭に生まれ、家族や友達にも恵まれ幸せな生活を送っていた。
その生活がずっと続くと思っていた。
「ハワイ楽しみだな。雅人、沙耶香」
「うん!!」
僕達家族は、皆休日を利用して旅行しようとしていた。
いつもどおりの幸せな時間。
しかし
「きゃあああああああああああ!!」
飛行機に異常が起きたようでそのまま飛行機が墜落した。
そして、僕は
「んー。ん?」
「気がついた?」
ナビと出会った。
「僕は貴方の味方ですよ」
ナクロとも。
ナクロは言っていた。
この世界は作られた世界だと。
じゃあ、前の世界の僕は一体どうなったんだ?
「お前は、生きている」
全てが繋がった。
だがまだ分からないことがある。
「あっお兄ちゃん!!」
気が付くと僕は宿のベッドに横たわっていた。
いつもこのベッドにはお世話になるなあ。
「どうしたんだよ。帰り道急に発狂して倒れるなんて」
相変わらず皆が心配してくれている。
そんなことより
「ナクロは?」
「ああ、あいつなら外で黄昏てるよっておい! どこ行くんだよ!!」
僕はナクロのところへ向かった。
「全て……思い出したんだね……」
「ああ」
しばらく、無言の間が続く。
「何か聞きたいことはないのかい?」
「ああ、そうだな。じゃあ教えてもらおう」
僕はしばらく溜めてこう言い放った。
「この世界は一体何だ?」
「やはりその質問か」
ナクロはしばらく考える素振りをした後
「君の家族や友人の思いが作りだした世界さ」
と答えた。
「じゃあナビは? お前といい一体何なんだ?」
「ナビは君をこの世界から切り離すための案内役、僕はその逆さ」
「それじゃあこの世界から切り離された僕は……?」
「悲劇を見ることになるね」
そんな……。
前の世界の僕は生きている。
だとしても僕の家族は皆死んでいるのだろう。
ナクロは現実世界の僕は今病院に搬送されていて意識不明の状態だとも説明してくれた。
そう。僕が進んだ先に見るのは悲劇だ。
全てを知ってしまった。
僕はどうすればいい?
「お望みなら貴方の嫌な記憶を全て消し去って差し上げますが」
「いや、いい」
「ですがこのままでは貴方が「やめろ!!」
悲劇だろうが僕の大切な記憶だ。
知らないより、悲劇だろうが知ったほうがいい。
「どこへ行くんですか?」
「ごめん、ちょっと散歩へ行ってくる」
だけどどうしたらいいんだろう?
全てを知ってしまった僕は……。




