第六十話「殺せ」
「安心して、僕は貴方の味方ですよ」
僕の目の前に現れた男。
フードこそ被ってはいないがこの強烈なオーラは間違っていない。
あの男だ。
「僕を殺しに来たか」
「さっきも言ったじゃないですか。僕は貴方の味方だって」
「しかし、ナビが」
「君はナビの言うとおりに進むのが本当に正しいと思うのかい?」
どうしよう。
こんな時はナビに。
と言っても今はナビの反応はない。
この男の目的は何だ?
「ナビは必要な時には正しい情報を与えてくれる」
「それで?」
「だから僕はナビを正しいと思っている」
「本当にそうかなあ?」
「何が言いたい?」
「ナビは君に大事なことを隠してるのに?」
「!?」
そうだ。
ナビは僕に隠し事をしている。
それをいくら聞いてもナビは
「先に進みなさい」
としか言って来なかった。
この男は僕の味方だと言う。
怪しいオーラを放っておいてそりゃ無いとは思うが。
「僕は君なんだ」
そういやこの男。よく見たら顔が僕と瓜二つだ。
まさか分身って
「ガーデとの戦闘の時に現れた分身って君か?」
「ご名答」
ということはこの男のおかげでガーデが僕の味方になってくれたわけだ。
それには感謝すべきかもしれない。
けど
「ナビの機能が普通に作動していれば僕はガーデには勝っていた」
「君はナビに依存しているみたいだね」
「依存?」
「ああ、まるでナビが完璧だと思っているかのようだ」
確かにナビは完璧ではない。
誤作動も起こしたことがある。
「僕は君に全てを話すことが出来る」
その男がそう言い放った途端。
「雅人!」
とナビの声が聞こえてきた。
「おや、ナビが戻ってきたようだね」
この男、ナビの存在が分かるのか?
「その男を殺しなさい」
唐突にナビが僕にそう言い放った。
「聞いたかい。雅人君。こんな野蛮なことを言うナビが信じられる?」
「それは……」
「いいから殺して!」
そういやこの男とナビは対立してるんだったな。
「殺せ! その男を殺せ!!」
ナビが強めに僕に言う。
このナビは何かおかしい。
なんというか理性が吹っ飛んでるかのようだ。
「雅人。僕とナビ……どっちを信じる?」
究極の選択。
いや、究極ではないのかもしれない。
今の僕が信じるべきなのは。
この男だ。




