第五十八話「黒い影」
僕達は人気のない場所に来ていた。
このダンディな男と真剣勝負だ。
「二人まとめてかかってこいよ。俺っち一人で相手してやる」
ほう。面白い。
「お兄ちゃん負けないでえええ!」
アスターシャの応援の元、僕はこの男と対峙している。
「アスちゃん俺にも声援を!」
「クレファスさんもまあ頑張って」
「すごい適当だな、おい」
アスターシャにとってクレファスはその程度の人間ってことだ。
諦めろ。
テレーゼが合図の役割を担う。
この勝負にはアスターシャとテレーゼがかかっているのだ。負けるわけにはいかない。
「では、始め!」
戦いが始まった。
僕とクレファスは散会してやつの動きを攪乱する。
さあ、どっちを狙う?
やつが狙ったのはクレファスのほうだ。
となれば僕は
「ナビ、何か援護出来る魔術が使える?」
「あるわ」
「じゃあそれを頼む」
後ろがガラ空きですよダンディなおじさん。
今頃、ナビの魔術で
「あれ?」
ナビが疑問のある言葉を発した。
「どうしたナビ?」
「魔術が発動しないの」
な、何だってえええ!!
そうこうしている内にクレファスがやられていた。
やつの動きは見ているところあまりにもトリッキーだ。
手だけじゃなくて足も剣になっている。
そういう珍しい装備もあるんだなあ。
おっと関心している場合じゃない。
やつは僕のところに向かってきた。
どうしよう。
「ナビ。シールドは使える?」
「ダメ。使えない」
「そんなあ!!」
一応対抗してみたが、やつのあまりにもトリッキーな動きに反射神経が間に合わず、あっという間に剣を弾き飛ばされてしまった。
「俺っちの……勝ちだね」
負けた……。
負けたときの条件って何だっけ?
ああ、アスターシャとテレーゼを引き渡すことか。
僕は大事な仲間を失うのか。ここで……。
あれ? 目の前がくらくらする。
僕の意識が遠のいた。
その寸前、目の前に黒い影が見えた。




