第五十六話「一人の男」
「雅人、次のイベントよ」
ナビが僕に話しかけた。
「どこへ向かえばいい?」
「”ウマスギール”って店へ仲間たちと共に向かいなさい」
ウマスギール。
前の国でも見かけたがそこまで有名な店なのか。
あれだけ高いのに。
まあ味はとてつもなく美味いから人気なのも無理はないか。
しかし、そこで4人分の飯を頼めるほどの金は無いし、一体どんなイベントがあるというのだろう?
あの黒いフードを被った男の件といい、若干ナビの指示通りに動きたくない気持ちもあるが、まあこいつが出す指示は的確だ。
ということで早速仲間皆でウマスギールという店に向かった。
「本当によろしいのですか? お金が」
「お金? ああ、いい依頼があってそれで稼いだんだよ」
テレーゼが心配そうにしてるので、そこは適当な理由で見繕ってく。
「さすが救世主、金も救世主並だなあ」
最近、クレファスを邪魔だと思うようになってしまった。
最初は師匠のような存在だったのになあ。
アスターシャを性的に襲おうとした件といい、食い逃げの件といい、僕の中のこの男の株は下がりっぱなしなんだが……。
さて、イベントだ。
ここで食べようと言ったけれど、もちろん金なんてない。
ナビの命令通りにしか動いていないからな。
「なあ、ナビ」
「どうしたの?」
「そろそろイベントとやらを起こしてくれないかい?」
「もう少し時間を稼いで」
ええ、ええええ!!
前言撤回、こいつの言うことは当てにならない。
このままだと皆が注文を頼んで食い逃げするはめになる。
そうすると僕の株が一気に下がる。
それだけは避けたい。
「皆、聞いてくれ」
皆が注文を決めてる時に、僕は席を立ち上がって話を始めた
「どうしたんだ? 急に立って」
「これからの旅は辛いものとなるだろう」
ナビ、急げ。
「それでも付いてきてほしい」
「いいとも! それよりこの高級メンチカツ美味そうじゃね?」
不味い。
この店の料理は美味いが。
そんな冗談を言ってる余裕はない。
これ以上時間を稼ぐことが出来ない。
終わったな。
あばよ。僕の人生。少しだけ救世主と呼ばれただけでも嬉しかったよ。
そう思った矢先。
「ほう、お前が救世主か」
一人の男性が僕たちに話しかけてきた。




