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第五十三話「葛藤」
朝。
アスターシャはすっかり元気を取り戻していた。
昨日の様子が嘘みたいだ。
しかし、僕の感情はモヤモヤしていた。
あの男とナビは対立している。
元の世界に戻るということは、僕は元の世界で生きているということになる。
元の世界の自分がどういう状況なのかは分からない。
だけど悲劇が待っているとあの男は言った。
それに対し、ナビはあの男が言ったことはデタラメで私だけを信じて先へ進みなさいと言っている。
これだけ話を整理してみると、あの男の言ってることが嘘だとは思えない。
しかし、このままイベントを進めないというのもちょっと気が引ける。
僕はイベントを進めるためだけにここまで頑張ってきたのだ。
それを今更やめろと言われても困る。
だけどこの先に悲劇が待っているとしたら……。
「お兄ちゃん。顔色悪いけど大丈夫?」
アスターシャが心配した様子で僕に話しかけた。
「ああ、大丈夫だよ」
もういい。
考えるな。
とりあえず今は進もう。
それ以外に道はないのだから。




