表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/84

第四十話「テレーゼの悲しみ」

 さて。

 昨日はクレファスと黄昏ていたわけだが、今日こそはミッション開始だ。


 皆が寝静まった頃。僕はこっそりドアを開け、宿の外へ出ようとした。

 その時。


「どちらに行かれるんです?」


 とテレーゼが起き上がって僕に話しかけた。

 とりあえず理由作りだ。


「眠れないんで少し黄昏るだけですよ」


 この理由ならいいだろう。


「私も一緒に黄昏ていいですか?」


 え、あ、ちょっ。

 思わず変な声が漏れそうになった。


「おい。ナビ」

「想定外だけど急いでいないから別に構わないわよ」


 ということで今日はテレーゼと黄昏ることになった。

 僕にとっては嬉しいイベントだけど、また大事なミッションを先延ばしにしてしまったな。

 まあナビは急いでないらしいからいいみたいだが。


「私、本当は辛いんです」


 テレーゼは語り出した。

 本当はあの惨劇を止めたかったこと。

 でも司祭からこれは定めだと強く言われたこと。

 その間の葛藤など。


 昨日のクレファスの恋のお悩み相談とはスケールが違いすぎる。

 この話はもっと真剣に聞かないとな。


「私、大事な人をたくさん失いました」


 そう言うとテレーゼは泣き出してしまった。


「雅人……さん?」


 僕は自然にテレーゼを抱きしめていた。


「ごめんなさい」

「なぜ謝るんですか?」

「僕のせいです。僕がもっと早く駆けつけていれば」

「いいんです。定めですから」


 かける言葉が見つからない。

 僕は彼女を強いと勘違いしていたのかもしれない。

 彼女だって弱いのだ。

 ただ、気持ちを打ち明ける相手がいなかっただけなのだ。


 でも彼女は僕に心を開いてくれた。

 初めて、辛いと言ってくれたのだ。


 そんな彼女に言葉をかけてやりたい。

 だけどかける言葉が思いつかない。

 今は抱きしめることしか出来ない。

 

 惨劇も止めることが出来ず、慰めることも出来ない。

 僕はなんて無力なんだろう。


「ん?」


 テレーゼが僕を抱き返してきた。


「今は……こうさせてください」


 テレーゼは涙声でそう言った。

 今はこうしていよう。


 これで彼女の気持ちが少しでも晴れるのなら……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ