第三十四話「惨劇の予見」
目を開けると天井があった。
ここは宿か?
「あっお兄ちゃんが目を覚ました!」
少し視線をずらすと、アスターシャにクレファス。あとあの女性もいた。
「てめえ!!」
急にクレファスが僕の胸元を掴んできた。
「どれだけ心配したと思ってるんだ!!」
「それは……」
「今後、あんな無茶はするなよ」
そう言うとクレファスは僕の胸元から手を離した。
「お兄ちゃん!」
アスターシャが僕に抱きついてきた。
そして、泣き出した。
「どう? 生存者はいた?」
ナビが僕に話しかけた。
「いなかった」
「次からはもっとよく考えて行動することね」
「そもそも、お前が早く言ってくれれば!」
「何度言わせれば気が済むの? あれは必要なイベントだったのよ」
「必要な……イベント?」
「とりあえずクレファスの言うとおり今後、無茶はしないことね」
何とも言えなかった。
生存者はあの女性以外いなかった。
僕がやったことは無駄だった。
却って仲間を心配させるはめになってしまった。
僕は……間違っていたのだ。
ナビは僕に隠しごとをしている。
僕にそれを知る術はない。
だけどナビの言うことに背くことは出来ない。
彼女は、必要な時には正しい情報を与えてくれるのだ。
ああ!! もう胸糞が悪い。
忘れよう。
とりあえず今はあの女性のことを気にかけないとな。
「あの? 大丈夫ですか?」
「貴方のほうこそ大丈夫ですか?」
そうだったな。
今は僕が倒れて起き上がってる場面だもんな。
普通、大丈夫と聞かれるのは僕のほうだ。
「僕はもう大丈夫ですよ」
「それは良かった。ヒーリングしてもなかなか意識が戻らなかったものですから」
ヒーリング?
この人も魔術師なのか
「申し遅れました。私はテレーゼ・フォアブランと申します」
「僕は南井雅人と言います」
「貴方のお仲間様から話は聞きましたわ。珍しい名前ですね」
「良く言われます」
とりあえずこの女性は無事みたいだ。
しかし……。
「すいませんでした!」
「なぜ、謝るんです?」
「僕が急いで駆けつけていればあの惨劇は!!」
「気にしないでください。あれは起こるべくして起こったのです」
「起こるべくして?」
「はい」
テレーゼは語りだした。
司祭からあの惨劇が起こることは聞かされたこと。
テレーゼだけが生き残ること。
僕たちが助けにくることも伝えられてたようだ。
つまり、司祭はあの惨劇を予見していたということになる。
なぜ、司祭はそれを知ってテレーゼにだけしかこのことを話さなかったのだろう。
テレーゼに聞いても
「仕方のないことですから」
としか答えが返ってこなかった。
「それよりもお邪魔でなければ、私も仲間にいれて頂けませんか?」
テレーゼが急に言いだしてきた。
「司祭様から、貴方方に付いていくように言われてたもんですから」
なるほど。
イベントってそういうことか。
あの惨劇が起こらなければ、彼女が僕たちの仲間になることは無かった。
彼女はヒーリングも使える。
今後僕たちの旅に必須になる人材だったのだろう。
理屈は分かる。
それでも胸糞が悪すぎる。
あの惨劇を受け入れろだなんて!
それでも彼女は微笑んでいた。
一番辛いのは彼女のはずなのに……。
彼女は自分の定めを受け入れたのだ。
彼女は強い。
僕なんかよりとても。
もし、僕がテレーゼならあの惨劇を受け入れることは無かっただろう。
抗っただろう。
とにかく胸糞が悪すぎる。
「これからもっと辛いことが貴方を待っているわ」
ナビが僕に話しかけた。
「もっと辛いこと……」
「貴方はそれに耐えなければならない」
「そんなこと言われても」
「今は頭を冷やすことね」
こうして、テレーゼが僕たちの仲間になった。
後悔しても仕方がない。
先に進むしかないのだ。
後にはもう、戻れないのだから。




