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第二十話「窮地」

 僕と男が対峙している。

 

「ほう、剣で立ち向かってくるとは。ならこちらも正々堂々と剣で戦ってやろうじゃないか」


 男も剣を取り出していた。

 緊張の夏、ニッポンの夏。

 こんな冗談を言ってる暇はない。


 ってかこれ前使ったジョークじゃん。

 封印だな。こりゃ。


 そう考えてる間に。男は一気に俺のすぐ間近に来て、剣を振り下ろした。

 速い。

 だが、その途端、男の動きがスローモーションになった。


「今よ。雅人、やつから剣を取り上げて」


 男の動きはスローモーションになってるが、取り上げられる余裕があるほど遅くはない。

 僕は男の剣を剣で受け止めた。


「クッ!」


 男の剣が重すぎて、弾き飛ばすことができない。


「どうした。若造が、きつそうじゃねえか」


 お前も見た感じ若そうだぞ。


 次の瞬間。


「グハッ」


 男が数メートル吹き飛ばされた。


「何が起こったんだ?」

「シールドよ」

「シールド?」

「ええ、私の機能の中に入ってる」

「こういうことは先に言えよ!」

「1個目の光水晶を手に入れる前は使えなかった機能よ」


 ナビは大事なことをいつも教えてくれるのが遅い。

 まあいい。おかげで何とか助かった。


「ほお。お前も魔術師か」

 

 男は立ち上がると僕にそう言ってきた。


「しかもシールド使いとはな。だが、これなら」


 男が掌を俺の前にかざす。

 これはやばい予感がする。


「避けて!」


 ナビのその声を聞いた途端。

 男の掌から火球が発射された。


「うわっ!」


 間一髪で避けた。

 だが

 また男は火球を放出した。

 不味い。

 今の体制だと避けることは出来ない。


「おっ」


 火球が弾き飛ばされた。

 これもシールドの効果かな?

 便利だな。これだったら余裕でいけるんじゃない?


「あと8回よ」

「何が?」

「シールドを使える回数」

「まじかよ」


 とりあえず僕は体制を立て直すと

 男に向かって突進した。

 悪手かもしれないが、こうするしかない。


「7」


 男は相変わらず掌をかざして火球を飛ばしてきた。

 それが俺に当たる寸前にシールドで弾き飛ばされている

 しかし


「6」


 ナビのカウントダウンだ。

 シールドの発動回数には限りがある。

 急がないと!


「5」


 あと5回。

 これは不味い。

 こっちのスピードより相手の火球を出すスピードが速い。


「4」

「なあナビ」

「どうしたの?」

「あいつの動きを止めてくれ」

「それは無理だわ」

「どういうことだ?」

「さっきの男の動きが鈍かったでしょ」

「ああ」

「あれは、あの男に時を止める魔術を使ったのよ」

「ということは」

「さっきので使い果たしちゃったわ」


 まじかよ。


「3」


 不味い。


「2」


 クッ!


「1」


 このままでは


「0」


 やられた。

 距離もまだある。

 届かない。

 火球をまともに受けて無事ではいられないだろう。

 終わったな。


「やめてええええええ!!!」


 その瞬間。声が聞こえた。

 アスターシャの声だ。


「チッ、女の子にこんな光景は見せられないな」


 男はそういうと走り去っていった。


「大丈夫ですか? お兄ちゃん」

「大丈夫だよ。ありがとな」

「いえいえ、私は私は当然のことをしたまでです」


 アスターシャのおかげで何とか窮地を乗り越えることが出来た。

 でも待てよ。

 男が身を引いたってことは


「ナビ」

「何かしら?」

「アスターシャを使えばあいつ、仲間になるんじゃないかな?」

「何でそう言えるの?」

「あいつの言葉を聞いてそう思ったんだ」

「ふうん」

「違うのか?」

「正解よ」

「だったら”ふうん”とか流さないで普通に正解って言おうね」

「はいはい」

「とりあえずあいつの所まで案内してくれ」


 しかし、あの男、結構強かった。

 時を止める魔術を使っても重い剣を振りかざしていたし。

 掌から火球をマシンガンのように放出していた。

 一体何者なんだ?


 それにナビは正解と言ってたが、本当に上手く仲間に出来るだろうか?


 それともう一つ気になった点がある。

 この世界に魔術師がいた。ということだ。

 僕が魔術を見たのはこれが初めてだ。

 いや、性格にはもっと前なんだけども、あの時はそれが魔術だとは思わなかったのだ。


 ホントこの世界は謎だらけだ。


 ん?


 謎。

 その言葉を考えた瞬間。僕の中で何か変な感覚が起こっていた。

 僕には記憶がない。

 夢のことといい僕には何かが隠されている。

 それを知りたい。

 だがナビは教えてはくれないだろう。

 僕の謎を。

 いづれその謎を知ることが来るのだろうか?

 今はその時が来るまで待つしかないか。


 それよりもさっきの男だな。


 僕たちはナビの案内の元、あの男の後を辿っていった。

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