第十三話「時を止める力」
僕は今、二人の銃を持った覆面に近づいている。
緊張の夏。ニッポンの夏。
そんな冗談を言っている余裕すらない。
しかもこの日が夏なのかも分からない。
ここは異世界で日本ですらない。
完全に滑ってるな。
このギャグをナビに言おうものなら
「貴方、馬鹿なの?」
と大事なイベントを忘れるポンコツのナビにだけは言われたくないことを言われる。
そんなことを考えていると
二人の覆面は僕に気づいた。
「止まれ!!」
二人の覆面は僕に銃を向けた。
当たり前だ。
何が
「安心して、あなたは死なない」
だよ!!
これ絶対死ぬパターンでしょ。
「ナビ! 本当に大丈夫なの!?」
「気にせず進んで」
ナビの回答は相変わらずだ。
いいや、もう死ぬわ。
さよなら、僕の異世界探検。
もっと探検したかった。
そう悔いを残しづつ、僕は二人に近づく。
「止まらないと撃つぞ!!」
ここで、止まれば生き残れるかもしれないが。
今はナビに従うしかない。
銃声が聞こえた。
死んだな。
「あれ?」
確かに銃声は聞こえた。
しかし、僕は傷一つ負ってない。
良く見ると銃弾も止まっている。
どういうことだ?
これをナビに聞いてみた。
するとナビは
「これも私の能力の一つよ」
ナビさん半端ねえ。
そんな重要な能力もっと早い段階で教えてくれてもいいのに。
今までの僕の葛藤はなんだったの?
「ただ、この能力は制限がついてて、簡単に使えるものではないのよ」
うん、制限がついてても充分すごいです。
その制限についても聞いてみたが
「まあ、貴方が知る必要はないわ。このまま二人から銃を取り上げて先に進んで」
としか言わなかった。
僕は言われた通り止まっている二人から銃を取り上げた。
その瞬間。銃が消えた。
この感覚、分かる。
僕の翼が生えた靴から翼が消えたのと同じ原理だ。
ナビが消したのだろう。
僕はこのまま先に進んで建物の入口に入った。
「うわあ。うようよいるなあ。スライムほどじゃないけど」
建物の中は覆面だらけだった。
これ、覆面パーティでも開けるんじゃね?
覆面いえーい! と思いっきり盛り上がれるくらい覆面しかいない。
ナビから指示があったのでそいつらからも銃を取り上げた。
「最上階の大部屋に進んで」
僕は言われた通りに進んだ。
そして、ついにそこへ辿り着いた。
大部屋の扉を開ける。
中には恐らく、このアジト(らしきもの)のボスだろうと思える人物がいた。
何だ覆面じゃないのか、とちょっと残念だったのは内緒。
それともう一人縛り上げられた女の子もいた。
「僕が助ける女の子はあの女の子でいいんだよね?」
「その通り、察しがいいわね」
察しも何もここまで来て女の子はあの子一人しか見かけなかったんだが。
ナビさんは察しの使い方も見失ってしまったのか?
これもシステムの誤作動なのかもしれない。
あまり触れないでおいてやろう。
僕は縄で縛り上げられた女の子の縄を剣で斬り、女の子を解放した。
「さて、ここまでね」
「どういうこと?」
「時を止める力はここまでしか使えないわ」
「は?」
「あとは頑張ってね。雅人君。どの道敵は武器を持ってないから大丈夫ね」
ちょっと待ってくださいナビさん。
もっと時を止めてえ。
そんな僕の願いも虚しく。
時は進んだ。




