八話 作戦会議
コレットが仲間。今までのイメージがガラリと変わるのがわかった。味方と言うと、なんと頼もしい!
ガラス玉と一緒に渡された地図を右手に、地図に書いてある指定場所に移動する。そこで仲間と合流するのだ。俺たちは、そこに行くことを強制されていない。その為、このまま単独行動をとることもできるが、1対3では部が悪く、仲間にも迷惑をかけてしまう。その上、残りの2人が合流していて戦ったとしても2対3。自分が強いとしても、残りの2人どちらかがやられた場合、自分も失格となり強制退場させられてしまうのだ。よくできたシステムである。
因みに脱落して観戦している者には、無料で地図が渡される。その地図には誰がどこに居るのかが記され、魔術によりリアルタイムで移動しているのがわかる。もちろん観客は自腹で買う。地図を買う他にも、注目の受験者を映像化し流す、シアターがあるそうだ。入場料は、地図と比べると少々高めの7シルバーである。
簡易的な映像化を地図にかける事により、見たい場所を見ることができる。地図が見たい場所と見る人の間を中継するため、地図がなければ場所が分からないし、映像化ができない。だから、地図を買わないと観戦できない。また、時間が経つと地図にかけられた魔術が解けてしまうので、受験後に使う事はできない。受験後に盗み見られる心配はないのだ。
話を戻す。俺はガラス玉を左手に、キャッスルの門をくぐることができると確信し、ウキウキしながらコレットに近づいた。
考えてみたら、俺たちはずば抜けて一位だったのだ。その中で一番活躍した俺が最下位のコレットと組むのは自然な流れであった。減点覚悟で意を決して戦ってよかった。
『俺はゼーマ。よろしくなコレット!』
明るく気さくっぽく爽やかに話しかける。初めは相手が話しやすいように、フレンドリーに話すのは基本中の基本だ。
『よ、よろしく、ね。ゼーマ。』
ぎこちなさすぎるだろ。まぁいい。初対面の人にフレンドリーに話しかけられたら、戸惑う人もいる。前言撤回であることは、言うまでもない。
しかしコレットがいるということは、俺が補助から前衛に変わらなくても大丈夫だろう。なにせ、あの魔物を片手で一捻りするような化け物だ。俺ともう一人で補助魔法を行えば、余裕で勝てるだろう。しかし念のためだ。俺はコレットに策はないかと聞いてみる。
『い、いや特には。ないよ?』
やはりないか。では俺の使った策を使お…!その時俺の側に誰かが立っているのに気がついた。
『なんだお前!』
そいつはビクッとした後恐る恐るといった感じで話しかけてきた。
『ぼ、僕の名前はクバ。ゼーマ君と同じチームだよ…。』
う…。悪いことをした。気を取り直してこいつにも聞いてみるか。
『えっと…何か策はあるか?』
『え!いや、えっと…特に……は…。』
僕の意見を言いたいけど、そんなこと最下位ギリギリの僕が口出していいわけないよね…。みたいなこと考えてんじゃねーよ!ったく、腹立つな!
『おい!なんか策言わねえと殴るぞ!』
俺は怒鳴りながらクバを睨みつける。隣のコレットも少し驚いている様子だった。
『ご、ごごごめん!本当にすいませんでした!』
『謝んなくていいから早く作戦を。あと敬語にすんな。』
落ち着いた口調でゆっくりと話す。偉そうに策を言っても、聞いてくれないと思ったのだろう。俺は、策を言えと脅しているような状況を作ってやれば、話しやすくなるはずだと考えたため乱暴な話し方をしたのだ。
『はい!あ、えっと…、うん!』
俺の対応が変わって安心したのか、肩の力が抜ける。
『ま、まずはね。ゼーマ君の今までの戦法は使い物にならないと思うよ。』
な…。え?は?こいつ調子に乗るなよ?
俺は怒りを抑えて理由を聞くことにした。冷静に、冷静にだ。
『はぁーーー…。で?理由は?』
『あ、うん!まず、みんなはゼーマ君の手口を知ってるから。強い人を減点承知で前衛に。弱い人は後衛の補助に。一度戦えば大体わかる。僕も序盤に君にやられた中の一人だから、経験が理由の根拠でもあるよ?実戦は一瞬だったけど、僕達は負けたからこそ他の人の戦法を観戦できたんだ。強い人が前で補助二人を後ろに構えると、相手が後ろからの邪魔を気にする必要がなくなるんだ。速攻性には長けているけど、気づかれて対処されてしまえば簡単にやられてしまうと思うよ?悪いとは言わないけど、その作戦は危険があると思う。』
一度話を切り、こちらの反応を見るドヤ顔混じりのクバ。ここまでクバの言っていることで間違っていることは一つもない。いや、あるか。まず確認だ。俺はクバに、否定された内容ではなく、偉そうな態度に怒っているのだ。
調子に乗って、俺が能無みたいなことを言いやがって…。
話すように促したのは誰だだと?そんな事聞くんじゃねえ!
…この頃少し切れ気味だ。俺よりも強いやつや利口なやつを見る度にイライラしてしまう。落ち着いて、冷静に我慢。
序盤に脱落させてしまい、少し申し訳ないこともあり、口から出そうになった文句を飲み込む。コレットに目をやるが、特に意見はなさそうだ。話を続ける気満々のクバの顔を再び眺め、改めて尋ねる。
『で、どうしろと?』
『え?』
ん?こいつもしかして何も考えて…
『あ!作戦はあるよ?』
こいつ……。今の間はなんだ?いちいちイライラさせる!
『えーと…。簡単に言うと、コレット君。君はガラス玉の破壊。ゼーマ君は崇術で僕達の足を強化。』
『……』
『…………?』
『あれ?それだけ?』
コレットが沈黙を破る。
『あ!あと、僕が指示した方向に走ることぐらいだよ。君達の役割はそんなかんじ!』
よく勿体振る奴だな…。そろそろ限界に近い。
『一応意味をおしえてくれないかな?』
『うん。でも、話すより、実戦の方がわかりやすいと思う。僕は胡散臭いかもしれないけど一度だけ信じてほしい。一度やれば全部理解しやすいと思うし、もう時間だ。』
観客を楽しませるため、二回目は合流次第、作戦会議が入る。その時間を使って話していたことをすっかり忘れていた。
『10分経過しました。作戦会議を終了して下さい。』
このでっかい戦場に響いたが、決してうるさくない放送がされる。
こいつに策を聞いたことを後悔しつつ、諦め混じりの返事をする。策を聞いた時点で俺の負けであった。
『それでは、テストを始めて下さい。』
俺はこいつの策をの通りに、全員の脚の強化を行いクバの指示した方向へと走るしかないのであった。
だいたい週一の頻度で投稿しているのですが、時間帯がよくわかりません。
深夜0時がやはり普通でしょうか?他の時間帯に心当たりがあるのかと聞かれると、とくにないので普通にするしかないのですが…。