四話 虫と戦闘
だいぶ時間がかかりました。
遅くなり申し訳ないです。
今、目の前には巨大な昆虫か立っている。ムカデが巨大化した様な姿だ。無論、たくさんの足を持ち、体の色は赤黒く不気味な光沢がある。上半身を蛇の様に持ち上げていて、遠くから見ても危険だとわかる。木が邪魔して見えないのでは?もしかしたら、そんな疑問を持った人もいるだろう。俺も思ったが木より僅かにでかいため、頭が丁度見えたのだ。まさか、常に状態を起こしながら移動しているとは思わなかっただろ?何故って全ての脚を使った方が、早く動けるからだ。しかし、こいつには減速なんて考える必要はなかった。
1時間程前
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
俺は立ち上がり体の変化を確かめていた。そう!その通りだ!念願のパワーアップができたのだ!!
泣い…ゴホン、休んだ後、暫く俺は寝てしまったらしい。ふと目が覚めて、いつも通りに大きな声で注文を叫び我に返る。この癖も治さないとな…。そんなことはいい!え?良くないでしょだと?大丈夫大丈夫!きっと何時か治るから!
…話を戻す。我に返ったあと、大きく伸びをした時だった。体が…体が軽いのだ!毎日の様に悩まされていた肩凝りは何処かへ吹っ飛び、節々の痛みも同時になくなり体が嘘みたいに軽いのだ。本当に驚いた。興奮して雄叫びをあげた程だ。
そして軽くジャンプでもしようと地面を蹴ったのだが、思いのほか高くジャンプしてしまった。慌てても木のてっぺんより少し高い空中に打ち上げられた状態なので、そのまま落下するしかなかった。墓穴を掘ったと反省しつつ、地面に衝突する瞬間無意識に身体中に力が入る。ズンッと言う重々しい音が鳴り響き、何時かの思い出が脳裏をよぎる。
言うまでもなく体は無事だった。そして思いがけない収穫もあった。なんと、踏ん張った部分が、キラキラになったのだ!
頭がおかしいとか思っただろ?まぁ無理もない。見た本人でさえも驚いたのだから。
『あ、やべえ。頭強く打ちすぎたわ。』
色々試したが、やはり力を入れるのとは少し違う感覚で体がキラキラになった。なんと言うか、そこに集中する、っていうの?よくわからんが、右手の動かし方を聞かれた時と似た感覚だ。大事なところは、似ているだけで全く同じではないと言うことだ。それはいいとして、体中をキラキラにすることはすぐに出来る様になった。キラキラになった部分は、非常に硬くなる。そのためどんな負荷がかかっても大丈夫と言うことが分かった。もったいぶってたが、現代で言うダイヤモンドに非常に似ていた。と言うことは、世界で一番硬い男ということだ!
しかし、これはこれでこの体には必要な能力だったと思う。この体は、全力を出すと体が着いていけずに壊れてしまうのだ。ダイヤモンドでコーティングする前に一度軽く走ってみた。案の定腕や脚といった場所の皮膚が枝や石に当たりビリビリに破けてしまったのだ。酷いところは肉がえぐれてしまっていた。普通に痛い。勿論細心の注意を払って、服は破けない様にしている。ピチピチといったが、とても体にフィットしていてまるできていない様な気分になる。…気に入ったわけでは無いけどね!他にも、木や岩に激突して、死にかけたりもした。服は破けなかったので不幸中の幸いであったといえた。恥ずかしい話である。
そんな怪我をして大丈夫かって?心配ご無用!なんとこの体は、まだ能力を秘めていたのだ!その能力は怪我をすると、恐ろしい速さで自己再生が行われるのだ!これは、俺も度肝を抜かれた。えぐれた部分は、早送りをみている様にみるみるうちに治っていく。つまり、だ。最強の防御力を持っていながら、再生可能という力も手に入れてしまったのだ!これは世界征服も簡単だな、向かう所敵なしである。うわっはっはっはっ!木という木を粉砕しながら楽しく進む。
にしてもどうして急に能力が目覚めたのだろう?答えは考えるまでもない。明らかにルミナス先生のおかげである。どうしてこの様な能力かはわからないが、一応まとめると…
1:恐ろしい身体能力
2:超硬化皮膜(かっこ良く名前をつけてみた)
3:自己再生
の三つだ。いやぁ便利だなぁ〜…。
ここからは俺の予想になる。
この能力の切っ掛けはルミナスの命を取り込んだのが原因だろう。となると、もしかしたらこれらの能力をルミナスが所持していたのかもしれない。しかし、ルミナスはご存知ドラゴンであった。見た目もそうだし、本人も自覚していた。思い返すと刺された傷も、自己再生により塞いでしまったため抜くことを拒んだのかもしれない。
ちなみに今、剣二本を腰に、槍を一本背中にさしている。そう、無意識に目がいってしまったっていうあの剣である。ルミナスの落し物である武器を一部拝借させてもらったのだ。鞘がないので手で持っていたのだが、自己再生があるのに気づいたのでそれ程気にならなくなったのだ。
話が逸れた。俺が言いたいのは、ルミナスの力を手に入れたのなら、ドラゴンの能力を獲得していると思ったのだ。自己再生が見についたから、できる可能性はあると思う。そして、本音を言うとルミナスの使おうとしていたある技についてである。できるのかはわからない。でももしできるのならばやってみたい。試してみるかとルミナスの行動を思い出そうとした時、
『キキキュキュケケケッ』
と虫独特の表現しにくい鳴き声が遠くから聞こえてくる。巨大な昆虫が、威嚇しながら突進していた。方角はルミナスが行けといった方角と一致した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ムカデの体の節々からは、毒々しい針が伸びていた。触角と一緒に口が動いている。なんと言えばいいんだ?牙?脚?手?沢山のそれらが動いている。背中には固そうな外骨格が鈍く光っている。本当にでかいなぁ。うちのマンションよりでかいんじゃ…。
二つの報告がある。一つ目はいい事である。でか過ぎて俺に気づいてないのだ。そして二つ目の悪いこともある。でか過ぎて俺に気づいてないのだ。…文が同じだって?同じ言葉だが違う意味が込められている。日本語って面白いね。つまり、だ。このまま此方に来た場合、俺にも被害が出る程危険なのだ。
避ければいいと思ったやつ、いるだろ?いいんだ。普通はそう思う。実際その場にはいないのだから。しかしいたならば恐怖しただろう。あの巨体がものすごい速さで此方に進んでいるのだ。そして気付いた時には、この化けムカデの特徴を観察出来る程近くにいた。
「やっべ!」
今走り出しても間にあわねぇな。そう思いながら潰されるのを覚悟…って、そうだっけ。俺にはこの身体があるんだった!いやー、何時もはこんな能力持ってないもんで、いざとなると忘れてしまう。巨大なムカデに唖然とし、気を取られ過ぎていた。しっかしどうやったらここまで大きくなれるのやら。
そんなことを考えているうちに、もうすぐそこまで近づいて来ていた。おしっ!力試しでもしてみますか!
ここからは、ムカデの勢いも考慮して素早く動く。背中に手を回して槍をとり地面に突き刺す。脚を曲げて体制を低くし、踏ん張る用意をする。前屈みになりながら超硬化皮膜をし、両手を腰の剣へと伸ばす。両手の二本の剣を強く握り、全力で地面を蹴り飛ばす。ボンッ!
「うおおるりゃぁぁあああ!」
聴いたことの無い様な音と共に石や砂利が宙を舞う。手にした剣を水平に伸ばし、コマの様に回転しながら切り刻む。ぐしゃぐしゃっというあまり聞きたくない音がムカデと一緒に通り過ぎて行く。それこそあっという間にムカデが小さく見える程遠くに跳んでしまった。手には微かに切ったという感覚があった。
しまった!力を入れすぎた!今だに落ちる気配のない速度とは違い、回転の勢いは容易く殺せた。念のためにかけていた保険である、地面すれすれを跳んだことが不幸中の幸いだった。すぐに地面に脚を…
「ぐひゃあ!」
脚が棒高跳びの棒の役割を果たし、空中へ投げ出される。持っていた剣も衝撃で何処へやら。
そのまま二回空宙で回転し、地面に衝突した。今度は勢いには逆らわず超硬化皮膜した状態でゴロゴロと転がる。暫くしたら勢いが無くなりやがて止まった。服が破けた体を素早く持ち上げる。風圧によりムカデの一部や体液は吹き飛ばされていた。ムカデが通った場所を跳んでいたので、木などの邪魔な障害物がない。そのため、遠くに小さいムカデが苦しそうに動いているのが見えるのだ。
この体になってからと言うもの、視力も断然良くなった。距離にして1キロ。そんなに遠くにいる敵が、くっきりはっきりと見え…。
…?は?
「おいおい、うそだ…ろ?」
疑い用のない視力があるからこそ、余計に驚いた。
あの巨大なムカデが忽然と消えてしまったのだ。
徐々に読んでくれる方が増えてきて嬉しいです。
次回は少し話が変わります。