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転生した悪の救世主  作者: レインコート
転生してから
3/29

二話 ドラゴンさん

非常にまずい!

「グルルッガル!」

先程よりも活発的になったドラゴンさん。苦しそうで余り見たくないのだが、こういう時に目線をそらすと襲われるような気がしてならない。

気付いたのだが、どうやらドラゴンさんは喋ることができないようだ。

何がまずいかって?それはドラゴンさんがどんどん弱っているのがわかるからだ。さっき活発的になったって言ってたじゃないかって?そうなのだが、線香花火と同じように見えるのだ。つまりだ。もうすぐ死んでしまうからせめて敵を一人道連れにと言った具合である。

そしてその敵と見なされたのがご存知、私でございます。っておい!洒落になんねーぞ?ドラゴンっつったら強いに決まってんだろーが!せめて武器!武器持たせて!防具ですらピチピチの服だけだってのに、このままだと二度目の…

ドラゴンが口の中をモゴモゴさせ始めた。これはもしや恒例の?

大きく息を吸い込んだと、目でわかる程体が膨らむ。そして口を大きく開きその中から火が…。思わず目を瞑り縮みこむ。歯を食いしばり、また死んじまうのかと後悔したところで、異変に気付く。

「グェ、グェェエエ」

ドラゴンの口から火ではなく黒い煙のような物が勢いよく…げほげほっ!?

「…炭?」

キャンプの時等で火を目撃して興奮して、近づいたことはないだろうか?あの時と同じ煙たさを感じた。目が痛くて臭い。どういうことだ?これはこれで苦しいし、攻撃の一種なのかもしれない。期待はずれもいいところである。

…あ!そうか!炭に火を付けて引火させようとしたんだな?でも残念!自分の置かれている状態を思い出し、安堵する俺。雨の中火を出されてもそこら中に水があるじゃないか!

事実、雨が原因で火種が濡れて火は出なかったもののもし出ていたならば、消火などが間に合うはずもなく消し炭になっていただろう。そんな偶然(ラッキー)に気付くはずもなく、主人公はドラゴンがひるんだ隙に逃げ出す。

「死んでたまるか!」





しかしドラゴンは追いかけなかった。いや、動けなかったと言う方が正しい。ドラゴンにとってはそれが最後の力を振り絞った最高の攻撃であった。ドラゴンからしてみれば、悪戦苦闘して倒してきた人間にはもう散々だった。いくら倒しても何処からともなく沸いてくる人間に、呆れたのと同時に例えようのない絶望に近い恐怖を感じたのだ。(例えるならば、昆虫と蟻のような関係だった)死に際に置き土産をされてしまい、ドラゴンの手では刺さった武器も抜くことができない。どうしようも無くなって仲間の元へ逃げ帰る途中だったのだ。しかし運悪く新たな人間と出くわしてしまい使い切った魔力の中から最後の一撃を出さざるを得ない状況になったのだ。おのれ、人間め…やはり妾にも勝てぬ存在なのか?






さっき、『生』に執着する悪党のような捨て台詞を吐いたけれど、本当に逃げたわけでは無い。様子を見るために木の陰に隠れたのだ。雨の中は音や匂いには気にすることなく動ける。逃げなかったのには理由がある。俺にとっては、この世界で初めて会った生物であり、初めてのビジネス相手なのだ。なんとか仲良くなり、恩返しをしてもらわねばならない!雨に濡れた木の肌に顔を寄せ、ギリギリまで顔を出す。俺のことを探していない?さっきの場所から動いた気配のないドラゴンは、より一層大人しくなり力が弱くなっているように見える。追いかけるどころか、探しもしないだと?

きっと俺には敵意はなく、追いかけてまで殺そうとは思っていないのでは?俺は打ち解けるチャンスと言わんばかりに笑顔で木の影から姿を現した。





む?くそ!まだ居たのか…。何と言ういやらしい笑み。不愉快極まりない!

こちらに忍び寄ってくる敵にいち早く気付き体制を整えようとしたが崩れ落ちてしまう。まったく…どうやら運が尽きたようだな…。立ち上がる気力すら残っていない。





お?よかった、まだ息がある。動く気配がないから、てっきり…。早く助けたいけど…

「さて、どうしたものか…」

小さなため息をつきながら、ドラゴンに目をやる。爬虫類が結構好きな俺からしたら、ドラゴンさんはペットにしたいぐらい可愛いと思う。ただし、もう少しお手頃サイズならば、だが。

『さぁ、醜い人間よ。欲望のままにさっさと妾を喰らえ!』

え、と。

む?今喋ったなこいつ…つか、なんで喰うことになってんだよ!別に喰うのが目的じゃねーし。色々とおかしいぞ?喋った時口が動いてなかったし、醜いは余分だし、頭の回転が追いつかない。とりあえず、喰うという誤解を解くことにした。

「あの〜、別に俺はドラゴンさんを助けたい訳で、食べるとかそんなつもりは毛頭ありませんよ?」

その後も話が食い違い、何度か説明を繰り返す羽目になったが…。やっとまともに話を聞いてくれる様になった。

『もし妾に何かしようものならば、貴様の首を跳ばしてやる』

うん、すっげー怖い。まともな話ができているのか疑問が残る一言である。しかし、大分大人しくなった。というより弱ってきた。まずいな。衰退している様にも見えたので、少し焦りながらドラゴンさんに駆け寄る。

「先ずは体に刺さった武器を抜きましょう?刺さったままはまずいと思います。俺も手伝いますから。」

そう言い無意識に目の惹かれた高そうな洋風の剣のつかを握って…

「ぐぼぉっ!?」

握ろうと近づいたら躊躇のない攻撃を諸に食らった。世界が回転し、腹から全身に激痛が走り、最後に背中に何かがぶつかる。ビキビキッと悲鳴をあげる俺の骨に続き、ザーーッという音とともに雨が下から降ってきた。驚きと痛みのため閉じてしまった目をかすかに開き、下を見やる。枝に溜まっていた露か…っと、木にめり込んだ体が外れ、頭から地面に落ちてしまった。マジで痛いんですけど!めり込むとかどんだけ!ただでさえさっきの炭で顔が真っ黒なのに、これで泥だらけになってしまった。落ちてから数秒間、息が出来なかった。ビリビリと手足が痺れ、逆さになったままの状態で意識が遠退く。たった一撃でこれ程の威力とは…。戦っていた相手達は相当強かったんだろうな。その時焦点が合わない目が、ドラゴンの後ろへと下がる何かを捉えた。俺を10メートル程吹っ飛ばしたのは、どうやら尻尾のようだ…。今の俺はヒクヒクしながら息を整えている。さぞ滑稽だろう。木がなければ何処まで転がったのやらわからないな。転生したんだから、いい男として生きたかったな…。

あーーもう!くそっ!…折角転生したのになんでこんな痛い目を見なくちゃならねぇんだよ!遠退いてた意識が怒りにより引き戻される。本当に信用してくれないようだな、全く!おっさん、優しくされないと泣いちゃうぞ?そう思いながら根性で泥だらけの体を持ち上げる。そして、最後のアプローチを試みる…。え?そこは怒れって?カルシウム足りてないんじゃない?もっと平和主義者的にいかないと!(立ち上がっていざドラゴンを目の当たりにすると、なんと不思議な風(臆病風)が俺の心に吹いたのだ。うん、仕方ないことだ。)

「あ、あの…俺のはな、し聞いてませんでした?」

一度立つと今度は倒れない様にバランスをとるので、それ以上動けなくなった。平然と話したはずなのに声が怯えまくっている…って、オレダッセ!これじゃあ村人Aと変わんねぇじゃねえか!気を取り直して次は堂々と…

『もう良い。…この場にはもう貴様以外のものは近づくことすらできまい。これも何かの巡り合わせか…』

急に何かを悟ったかのようにカッコつけ始めた。えーと、どんな反応を期待しているのだろうが?

『貴様が妾の最後に立ち会い、妾の全力の一撃に耐えたことも何かの縁であろう。』

ちょ、急展開すぎる!すいませーん。全力の一撃って不発に終わった()のことですか?て言うか、我慢していたがこれ絶対骨折れてんな。ドラゴンさんから視線を落とすと、俺の右手の薬指と小指が不自然な方向に曲がっていた。

もう俺の反応(存在)などどうでもいいのだろう。自分の人生を綺麗に締めくくるべく、雨雲で覆われた空を仰ぎゆっくりと目を閉じるドラゴンさん。いや、かっこいいと思いますよ?俺なんか最後まで部下のこと叱ってたからね?てか、喋れたのなら初めからそうして欲しいし!そんなことを考えていたら、単刀直入にドラゴンさんから迫力満点の一言

『我が偉大なる(たましい)、貴様にくれてやる!有難く頂戴するがよい!!』

俺たちの回りを温かい光が埋め尽くす。

今回は、ドラゴンさんと主人公の視点から交互に話を進めてみました。間を空けているものの分かりづらかったと思います。ですが、ドラゴンさんにも考える頭があり何を考えているのかを知ってもらいたかったのでこの様になりました。次回はドラゴンさんの視点から始めますので少し話が被ると思います。始めの方だけですのでご了承下さい!

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