二十七話 光り輝くそれ
俺は空中で反応があった時、非常に焦った。理由は二つ。
一つ目は俺がしたことが、天空族の怒りに触れたのではと思ったからだ。俺はここに入学してからだいぶ強くなった。が、まだまだ学生であり発展途上であるのもまた事実だ。そんなヒヨッコが天空族に勝てるわけがないのは言わずとも分かる。俺より強い奴はこの世に腐るほどいる。俺最強!と抜かすほど落ちぶれてはいない。まだ戦う時ではないのだ。
俺がしたこととは宙に浮くことだ。俺より前の世代で不可能とされて、研究すらされていなかった術だ。これは秘術でもあり、唯一天空族を怒らせる禁術でもあった。この世で空を飛べるのは天空族だけであり、飛べるからこそ最強と呼ばれてきた。それ故に、他の種族が空を飛ぼうものならば、真っ先に始末しに来る。
どこかの頭のいい奴がキキュウ?やらヒコウキ?やらを作ってその町ごと破壊された話はまだ記憶に新しい。俺も見に行ったが酷い有様だった。
まとめると、空を飛ぶことは天空族に殺してくれと言っているようなものということだ。
では、そもそもなぜ宙に浮いたのか?わざわざ浮かなくても良かったのにどうして?そう思った人もいるだろう。
実は、俺は今日という日のために色々と調べて回ったのだ。調べたことは、どういった条件で天空族は怒るのか、だ。
例えば、今この場でジャンプしたとしよう。しかし、それは天空族の怒りには触れない。
空を飛んだとは言えないからだ。しかし、キキュウ、ヒコウキはダメだった。この二つとジャンプの違いはなんなのか?それを突き止めるべく、俺は調べまわった。
生きていた目撃者に話を聞くと、キキュウが浮いてからすぐに来たのではなく、少し経ってから来たそうだ。出動に遅れたのか、または一定の基準を超えるのを待っていたのか。どちらにせよ、長い間止まっているのも危険だ。俺はこの二つの事例から、長い間宙に浮かないかつ、高く飛ばないことが条件だと予測した。人のジャンプはこの二つの条件を超えていない。しかし、本当に大丈夫なのか?そう思い、校長が居て、コレットとの実戦がある今日、使ってみようと思ったのだ。
因みに城の校長は、城の中で最強でないと校長になれないそうだ。城は人間の作り出した、最高の教育施設だ。そこに集まるのは最高の生徒であり、それを教えるためには最高の教師が必要だ。その中で最強ともなれば、天空族を迎撃するぐらいはできるだろうと踏んだのだ。
この秘術の仕組みがバレるか試しいのと、ワタナベ校長の戦闘を見てみたいという本音もある。しかし、だからと言って天空族の怒りを買うのはリスクが高すぎる。だから、俺が計算ではじき出した高さと時間の条件の半分ぐらいで今回は試したのだ。
しかし、それでもダメだったようだ。条件を4分の1にするべきだったか。心残りはあるが自分で決めてやったことだ。後悔はしていない。
二つ目は一つ目と関係してくる。俺の魔素探知を無効化したことだ。そう、探知妨害ではなく、無効化だ。
探知妨害と無効化は技術も効果も天と地の差がある。探知妨害の場合、説明したようにばら撒くだけだ。探知妨害はあくまで逃げるためのものであり、相手の集中をかき乱すことも可能だ。一方、無効化は言うまでもなく高技術であり、魔素探知に反応しない。つまり、魔素探知に頼っているやつほど危険…
はぁ。考えるのも面倒だ。
とにかくまとめるとだ。そんな高技術を持った強い天空族に目をつけられたのではと焦ったのだ。案の定、一瞬で目の前まで飛んできた。目的は百パー俺だろう。校長に助けを求めなければ。
そんなことが頭の中を一瞬で過ぎった。少し余裕そうに見えるかもしれないが、非常に焦っている。膝が今にも震え出しそうだ。これが…天……く…
「グガガゴガガガ!」
目の前の輝く何かは禍々しく校舎へ向けて吠えた。魔素探知で形を掴もうとしても何故か形がわからない。目で見ようとも眩しく、腰が抜けそうになっている。実態を掴めないものほど怖いものはない。
なんとかこの場を離れようとした時だった。輝く生物の目が俺を捉えた。
「う、うひゃぁぁ!」
やばい、こんな姿誰かに見られたら…。チラッと周りを見渡すと、他の連中も腰を抜かしている。怪我をしていないようだ。俺のせいで…い、いや、そんなことは…。ふとある人物を目で探す。既にグラウンドはボロボロだ。壁という壁も、奴が飛んできた反動でほぼ崩れている。クバ、ヒメコ、マク、ガシュ、マテル。どうやら全員無事のようだ。あいつらがこんなことで倒れるとは思わないが、既に気を失ったり、血を流している生徒もいる。俺のせい、か。なんとかしないとな。視線を戻し、覚悟を決めた時だった。
「早く逃げなさい!」
声とともに水の魔術がそれの目に当たる。全く効いてないようだけど…。どうやら先生が数名応援に来たようだ。遅えよ馬鹿。
輝くそれは魔術を当てた教師をギョロッと睨む。
「ひっ!…こ、怖くもなんともねえぞ!」
ガクブルしながら言われても説得力ねえよ。
直後、俺は背筋が凍るほどの恐怖を感じた。攻撃した、完全装備の、その教師が輝く長い何かに攻撃され一瞬でバラバラに吹き飛んだのだ。本当にバラバ…
「おえぇ。」
思わず吐いてしまった。他の教師も青ざめながら、構えてる。数えたところ、残り4人。
暫く睨み合いが続いた後1人が発狂する。残りの3人もパニック状態だ。勝負ありだな。俺は俺で、現実味がなさすぎてこの状況で落ち着くことができた。ここでパニクったら終わりだった。冷静に考えることができてよかった。隙を見て逃げるぞ。
…よしいまだ!俺は素早く立ち上がり、音を立てないように走り出す。
振り向くな。前だけを見るんだ…!
それを合図に背後では沢山の悲鳴が聞こえてきた。
俺は教師の悲鳴を無視して、真っ直ぐにクバたちのところへ行く。
「立て!立つんだ!何も考えずに走れ!」
俺は凍りついて動かない同級生に必死で呼びかける。
「だ、ダメだ。ゼーマ。俺、腰抜けて動けねぇや。」
弱々しく話し出したのはマクだった。他の連中は心ここに在らず、のようで、微動だにしない。ショックが大きいのは分かるが、なんでこうも、…っ!くそ!
「マク!結界を張れ!防御じゃねぇ、妨害を魔素探知と視覚に集中しろ!いや、魔素探知を無効化してたな…、視覚だけだ!攻撃は俺が防ぐ!」
俺は後ろを振り返り、それをひたと見据える。紅く彩られたカーペットの上を歩いてくる光り輝く何か。その邪悪な生物がドラゴンだと、理解したのはその時だった。
一週間はとっくに過ぎ、暫く投稿できなかったことを反省します。
次の投稿も遅くなると思いますが、なるべく早く投稿します。




