二十四話 実戦
あれから一週間。嘘みたいな毎日だった。
先ず、授業を普通に受けれたのだ。普通の人ならば、なにをいっているんだ?と思うかもしれないが、これは物凄い進歩だった。
そしてもう一つ。遅刻をしなくなった。何を思ったのか、奴らが放置トラップすら設置しなくなったのだ。これも嬉しい出来事だ。
今日は掃除もないので授業が終わり次第帰る。掃除が無いだけでだいぶ時間が空いた。
何をしようかと考えていると、ふと頭の中にあの声の話でも聴くかなという考えが浮かんだ。兜をかぶり心の中で呼び掛ける。ねえマリッジ、聞こえる?
マリッジとは、声の主、この兜である。こいつとは、兜をかぶっている時だけ会話できる。それ以外では会話できない。つまり、話を無視したいときは兜を外せばいいのだ。兜を外している時のこいつは無力である。
〈買い物でもすればいいんじゃね?〉
しかしながら、こいつは僕が兜をかぶっていない時でも心の声を聞ける。その上、僕はマリッジの心の声を聞けない。なんかずるい。
買い物、か。何を買おうかな?僕は丁度歩いていた店の看板を見ながら考える。金なら沢山ある。
〈そういや金はどうしてんだ?その…なんだ、金を出して貰ってるわけでもないし。〉
ああ、別に親のことはいいよ。気にしてないし。お金はね、国から支給されるんだ。
〈支給?どうしてだ?学ばせてもらっているのはお前だろ?〉
貰っているのは特進クラスだけだよ。なんでも、国の未来?のためだってさ。多分僕達が次の世代を引っ張っていくと予想してのことだと思う。
〈金が足りなくて不自由しないように、か。〉
そのお金でマリッジも買ったんだよ。今まで貯めていた貯金、ほとんどなくなっちゃうぐらい高かったよ。
僕は武器屋に入り、短剣を一本手に取る。
〈当たり前だ、俺を買えたことを誇りに思え!〉
なんと返せばいいか反応に迷ったので店の奥に向かって叫ぶ。
「これください!」
その事件は実戦に入る授業の前に起きた。僕が倉庫に兜を取りに行こうと立ち上がった時だった。
「おい、コレット。」
ゼーマが話しかけてきたのだ。珍しい。いつもは遠くから馬鹿にしたような目で笑っているのに。
「何?なんかよう?」
強気にでてみた。僕達の会話にクラスが静まり返る。何を話すのか気になるのだろう。ここで弱気に出たら、またあのような生活に戻ってしまうかもしれないし。でも、もし喧嘩をふっかけられたらマリッジのいない今、非常に不利である。話の内容にドキドキしながら、ゼーマの顔を見据える。
正直な話、今の立場はあまり良くない。周りからは何もされなくなったが、その代わりにみんながみんな、こちらをこっそり見ているのだ。なぜ見ているのか聞けるわけもなく、スッキリしないがその場から立ち去るのがこの一週間だった。しかし前のような生活に比べたら、それはもう楽になったものだ。だからこそ、この立場、みんなが恐れている立場でいる必要があった。その為、この場で一番力のあるゼーマに怖気ずく訳にはいかなかった。
「今日の授業、ペアになろうぜ?」
ゼーマの口元はにやけている。どこか僕を馬鹿にしているように見える。ペアだと?なぜ僕と?まあ、先生とやるよりは安全かな?僕はそう思い、
「いいよ?よろしく。」
手を差し出した。しかし、ゼーマは見向きもせずに次の授業のグラウンドへと歩いて行ってしまった。なんなんだ?
一人残された僕は、差し出し右手を机の上の兜へと伸ばし、ゼーマを追いかけるのだった。
先生は僕が吹っ飛ばしてしまったので、別の先生が来ている。何でも、旅の方なのだそうだ。たまたま此処を通りかかったので校長に挨拶しようとしたところ、僕の話を聞いたのだそうだ。誰も教えたがらなかった結果、引き受けてくれたそうだ。見ず知らずのよそ者に、授業を任せるとは何を考えているのやらと思ったのだが、一応教師の資格を持っていたのだそうだ。あまりにもタイミングがよすぎるが、教える人がいて良かった。先生には本当に悪いことをしたしな。
〈まんざらでもなかったくせによぉ〜〉
うるさいぞ?僕はマリッジを外し軽く叩く。
先生にはこの声は聞こえないんだろうな。
先生の、つまり旅の方の名前はホール。ホール先生はとても強い。マリッジもそう言っていたし、授業の雰囲気からもわかる。
〈ま、俺の前では赤子当然だがな〉
一言多いな。そのホール先生を囲むようにして僕らは座っている。
「今日から実戦に入るが、いくら生徒を注意しても無視するケースがほとんどだ。だから、一つだけ私から釘を刺しておく。これだけは守れよ?相手を殺すな。おし!わかったら立て、すぐに構えて練習だ。なに?練習が面倒だと?まあいい、今回は初めてだし特別だ。このまま始めよう。だが、1組ずつだ。私の前でのみ実戦をしてもらう。最初にやりたい組、挙手!」
ばっ!と手が上がる。圧倒されて、手を挙げそびれた。みんな相手を傷つけたいのか?
この時点では気づいていないが、みんなも嫌いな奴同士で組んでいたそうだ。恐ろしい話だ。
そんな奴らを見回して、1人も余ってないことに気づく。あれ?僕がゼーマと組んだから、てっきり余りが出るものだと思っていたのだが。余りはいないに越したことはないか?気にすることはないな。
因みに僕はあげるつもりなかったのだが、
〈あのゼーマって野郎ぶっ殺してやる!ほら、早く手を挙げねえか!〉
と、マリッジがうるさいので、あげそびれたという表現を使った。そういえばゼーマは?ゼーマの方に目線を向けるとゼーマも手を挙げていなかった。
「なんだよ?みてんじゃねぇよ。」
と、いつもの調子で棘のある言葉を返してくる。ひでぇ。なんでペアを組んだんだよ?
〈お前をぶっ殺したいからに決まってんだろ?〉
え、縁起でもないことを!ゼーマは、入学してから、元から優れていた能力をさらにぐんぐんと伸ばし続けた。つまり、ぼくなんかが勝てる相手ではないのだ。どうしたものか。
「選ぶのに困るな…お?そこの二人だけ手を挙げてないじゃないか?決めたぞ、そこの二人を最初の実戦をやらせてやろう!」
な、何だと?この実戦は、1組ずつやる。その為、最悪授業数が足りなくなり、できないものまで出てくる。成績?今回の実戦に評価は付かない。付けると、誰かが誰かを殺しかねないからだ。つまり、成績など関係なく、相手を傷つけたいがためにやるだけということだ。
僕達が選ばれ前に出る途中で、周りの奴らが文句ひとつ言わずに座っていた。どういうことだ?まるで僕とゼーマの戦いは最初から決まっていたような雰囲気だ。
一応、この実戦は相手の思考を読み、相手の攻撃をいかに自分のつけている鎧に当てるかが重視されている。これは、生きるか死ぬかの戦いになったとき、生き延びる為の補助教育だ。どんなに頭が良くても、敵と戦った時に死んでしまっては宝の持ち腐れ?だから、という理由だそうだ。
内心、最悪と思いつつゼーマのh
〈おっしゃ!やったぜ!〉
……。ゼーマの方をチラっと見る。
うお、怖え!見ちゃった!今スゲェ邪悪な顔してたの見ちゃったよ!?なんで?そんなにやりたくなかっt
〈お前まだわかってなかったのか?こいつはお前をぶっ潰すために俺たちにペアを申し込んできたんだよ!返り討ちにしてやるけどな!あっはっはっ!〉
な!ゼーマがどうして僕を誘ったのか、今の今まで気づかなかった…。
〈お前ほんとトロいな?なのにどうしてこんなに頭がいいのやら…〉
うるさい、ほっといてくれ!
「おいお前!早くしろ!」
ゼーマが先に行っていたのに僕はマリッジと喋っていたので遅れをとっていた。
「すいません!」
みんながにやけているのが目に入る。過去の記憶を逆撫でするような視線だ。
〈これはお前じゃなくても気付かねぇだろうから、教えてやるよ。こいつら全員お前とゼーマを戦わせたくて、打ち合わせをしてたんだよ!〉
なんでそんなこと知ってんの?
〈そりゃあおめぇが教室を離れた時に相談しているのを聞いたからだ。〉
なんで先に教えてくれないんだよ!
〈言ったら戦わねえだろ?任せろ!またあの時と同じように戦えばいい、お前は避けるのに専念しろ。俺もそれに合わせて戦ってやる!〉
聞くしかないんだろうな。分かったよ。避けることだけなら頑張れるよ。
〈あ、あとあいつ即死の術を使ってくると思うから気をつけろよ。よし!あんなやつ、こてんぱんにして病院送りだ!〉
おいおい!今また縁起でもないことを!
僕は先生の元へ行き、こちらを見ているこれから敵となる相手を怯えながr
〈堂々としろ!〉
…こほん。堂々とした態度で睨み返したのだった。
更新遅れましたので、少し多めにしました。




