十九話 涙
サクメちゃん達の国は、独自の魔術を使うことにより発展を続けていたそうだ。そんな中、その独自の魔法を使えるものと、使えないものが出てきたそうだ。
因みに鬼と小鬼の違いは、日本で言う天皇と国民の違いと似た感覚。つまり、小鬼は何をしても、鬼にはなれないのだ。敬う対象であり、目指す対象ではないのだ。
話を戻す。その使えないものが反乱を起こしたそうだ。なんでも、差別を受けていたらしい。しかも差別した方は無意識であり、真っ向から否定したらしい。我慢できなくなった奴らは、そのまま国から独立し、近くに国を作ったそうだ。その国を滅ぼしてほしい。ということだ。
「仲間じゃないのかよ?」
「彼らの行動には目に余るものがあり、終止符を打たなければならないのです。彼らは私たちの力を持てなかった代わりに、別の力を手にしていたのですから。」
独自の魔術の時も、遠回しに話され詳しい話はしてくれなかった。それ程他言したくないことなのだろう。わざわざ聞くほどでもないし、聞かなくていいか。
「……。そうか。理由は後でゆっくり聞かせろ。」
滅ぼしてほしいのにはもう一つ理由があるらしい。つい最近までは、両国は緊張関係だったそうなのだが、昨日隣国側から、攻撃があったのだとか。
「昨日の昼くらいに、ゴブリン共が攻めてきやがったんです。」
と言うわけで、今まさに戦争中ということだ。ってあれ?ゴブリン?
「あぁそうだ。私たち独自の魔術を使えない奴らは、ゴブリンと、そう呼ばれた。」
ここでゴブリンが来るとは…。俺は小鬼に目をやる。見た目とかそっくりなんだろうな…。
戦争の規模はゴブリンはともかく、サクメちゃん達は全力を注いでいるそうだ。
「ふーん。大変だな。」
「あいつらは卑怯で臆病だ!正々堂々と戦いもしないで、自分達が最強だと抜かしてやがる!我々が…」
こいつ、サクメちゃんには丁寧な言葉遣いなのに、俺にはタメ口だと?戦争中で大変だからとは言え、ちょっとは…戦争中?
「おい、今戦争中なんだろ?」
ベラベラと愚痴っていた小鬼が話を止め、俺の質問になぜかニヤリとする。さっきまでボロボロだったのに、その元気はどこから来てるんだ?
「当たり前だろう?だから、あのゴブリン共に一泡吹かせt」
「なんでお前たちはここにいるんだよ?」
戦争中なのに、どうして国の最強部隊を戦地から連れてきてんだ?その間に国が落とされる可能性もあるにもかかわらず。
「なぜいてはならない?」
うっ、質問を質問で返されると混乱するものだ。なぜいてはならない?だと?
「国を守らなくていいのかよ?」
「ここをどこだと思っている?」
なんだと?話が噛み合わないぞ?此処はどこか?そんなの知るわけないだろうが!イライラする気持ちを抑えていると、
「じぃ、きっとここら辺に詳しくないのよ。意地悪しないで教えてあげて?」
とサクメちゃんが代弁してくれた。優しいな。って優しくねーよ!サクメちゃんが直接教えてくれればいいじゃん!って言うかじぃって名前付けてるし!じぃも反応してるし!もう、わけわかんねぇ!
「ここは私達の国と、ゴブリンの国の丁度真ん中にあたるの。」
んんん。なるほど、ここが中間ならさっきの小鬼たちは、自国から敵国に出陣しているところだったのか。つまり、戦場に出陣しているということか。何から何まで本当に悪いことをしたな。で、結局サクメちゃんが説明するんだな、どうでもいいや、もう。
俺が頭の中を整理して、感嘆していると、サクメちゃんがはっ!と何かを思い出したように焦りだした。
「姫様、どうかなさいましたか?」
「大変!兄様とお父様と、を置いて助けを呼ぶ途中だったのを忘れていたの!」
そんなこと忘れるもんじゃねーだろ!サクメちゃんは兄様とお父様まで言ってから、俺たちを見て戸惑いを見せた。おそらく三人目を隠したのだろう。しかし、俺はひっきり見ているから、後で時間があったら聞くがな。
なんだかんだでどこか抜けているサクメちゃん。じぃも一緒に慌て始める。
「だから言ったではありませんか!あなた方が戦場には出向いてはならないと!」
慌てふためく2人を前に俺はその人たちを探す。そして、2人の背後の茂みを指差しぼそりと呟く。
「その人なら、向こうで2人倒れてるぞ。虫の息だ。もう長くはないだろう。」
固まる2人を見て、俺はひどく後悔した。なんて残酷なことを言ってしまったんだ。もっと言葉を選ぶべきだったな。
「嘘、でしょ?」
俺が謝るよりも早く走り出すサクメちゃん。それを追いかけるじぃ。俺も後に続く。見に行かなくても、どんな状態かわかるのけどね。お腹に大きな穴があいている。どんな武器でかはわからないが、腹を一突きにされたのだろう。もう一人は、骨折程度で済んだようだが、一歩間違えれば死んでいただろう。肋骨が折れ心臓に刺さりそうだから、死んだも当然か? 何故そこまでわかるかは、耳を澄ませ音を頼りに確認したからだ。因みに場所を探すのは血の匂いがあったので困らなかった。
「兄様!お父様!しっかりしてください!」
「お気を確かに、国王さま!」
苦しむ2人に声をかける2人。何故魔法を使わないんだ?と、ふと疑問に思った。
「魔法は使えないのか?」
「魔法などたいそうなもの使えるわけないだろうが!」
「え?傷とか治せないのか?」
「私達には使えないんです…。」
「他の者がこの場にいれば!」
うっ、精神的ダメージが!
「こ、ここからお前たちの国までどのくらいかかるんだ?早く連れてけば間に合うんじゃ?」
「間に合うわけなかろうが!」
え?だってさ、ゴブリンの国は小鬼の国の近くに作られたとか言ってないっけ?
「ここから走り続けられたとしても精々30分。走り続けることなどできない上、2人を連れて行くのでは、間に合いません…。私がもう少し早く思い出してれば…。うぅ。」
サクメちゃんが今にも泣き出しそうだ。何度見てもこの二人はイケメンだな。
「お前たちの国に行けば直せるんだよな?」
サクメちゃんを泣かせるわけにはいかない!
「だからもう間に合わないんだよ!」
「いいから!兎に角方向を教えてくれ!」
出血多量だが、まだ2人とも息がある。俺は手際よく2人の服を破き腹に巻きつけ圧迫し、これ以上の出血を抑制する。そこら辺の枝を折り、男の折れた四肢に巻きつけ固定する。普通なら手遅れにも程かあるが、魔法の力はきっと凄いに違いない!
俺の行動に圧倒されじぃが手を挙げ
「あっちの……方向だ…。」
と俺が来た方向と直角の方向を指差す。その方向を向き、2人を担ぎ上げる。
「でかした。サクメちゃん、必ず助けるから安心して。じぃ!お前も国に撤退しろ。サクメちゃんを絶対傷つけるなよ?」
そう言い残し、俺は夜空をものすごい速さで飛行した。それを見守るかのように優しく星が瞬いていた。
前話は同じものを投稿してしまい申し訳ないですT^T
クリスマスに浮かれてて気付きませんでした。以後気をつけますm(_ _)m




