十六話 美人
全員が全員、惚れ惚れするぐらいの顔立ちだ。俺もあんな風に生まれたかったな…。は!違う!そんなことはいいのだ、こいつらは一体?
人数は四人だ。かっこよすぎて男か女かわからないが、胸の膨らみから一人を除いて全員が男のようだ。腕の太さや背の高さも男と女で違うようだな。
何か話しているようだが…。ルミナスの件もあり、勿論俺の聴力は跳ね上がったが、遠い上にコソコソと話している。くそ!聞こえん!
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クレイは何か話てるぐらいしかわからないと言っていたが、何か話してるとわかる時点でおかしいのだ。そのほかにも、この漆黒の中で黒い服を着て木の陰で話す連中を発見する事も、普通では考えられないことであった。あそこで何か話していると言われても、わからないぐらいなのだから。この世界には、クレイを上回るほど周りの変化に敏感なものもいたが、魔法や術有りでの話だ。魔法や術なしの生身の体で、これ程敏感なのはクレイぐらいであったのだが、クレイは知る由も無いのであった。
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ん?今ちょっと聞こえたぞ?名前かな?サクメ?今、最大限に耳に意識を集中させている。
フードはすぐに被ってしまった。外したのはあの一瞬だけであった。にしても、美人だったな〜。あれ程美人なのは今まで見たことなかった。あいつらなにしてんのかな?
さっきまで耳をすませて目を閉じていたのだが、新しい発見をしてしまったのだ。俺は音の反響で大雑把ではあるが、その場の状況がわかるようなのだ。簡単に言えば、コウモリと同じということだ。
そして、さっき一瞬だけ会話の反響に違和感を覚えたのだ。
「何かが木の上にいる…?」
瞬間まぶたの向こうがポッと明るくなり、聞き耳を立てていた俺の耳に爆音が響く。
「ぐあぁぁあ!」
耳がぁ!痛い!目を見開き状況を把握する。鬼たちは奇襲を受けたようだ。二人その場に倒れている。一人は何かと戦ってる。一人足りないな?
あ!足りないのはあの美人さんだな?どこだ?どこなんだ?この際話しかけて助けよっかな?ガサッと背後で音が…
首筋を何かで殴られた。いてえ!直ぐにケツを蹴られてそのまま木の上から真っ逆さま。
「悪く思わないでね。」
木の上からの声。そして、地面に頭から落っこちる。くそ!俺じゃなかったら首の骨、折れてたぞ?今だに痛みが残る首筋に無意識に手が伸びる。そして、ヌメッとした感触に背筋が凍る。
俺、首切られてる。
「ああああぁぁぁあ!」
殴られたのではなく、切られたのだ!
叫び声もどこか懐かしく、ヒューヒューと首から空気が漏れ、大きな声が出ない。生前もこんな感じで死んだっけな…。
縁起でもねえ!また生き返られるか分かんねえのにヨォ!
そ、そうだ!俺の再生力を信じろ!素早く前に傾いた頭を後ろに倒す。なんで生きてんだ俺?暫くすると喉がイガイガしてきて、咳が出た。ペッ。吐血。
「くそぉ!よくも、よくもぉ!」
ん?ガラガラだが声出たな。首筋チェック…。くっついた、な。
「おのれぇ、どこのドイツダァ!俺の首を切ったのは!」
小さい頃に戦隊ものでこんなこと言ってた悪役がいたってな…。声もそれなりにできあがっている。いや、俺悪党じゃないし、相手が先にやってきたんだし。
「邪魔だぁ!」
近くにいた何かを吹き飛ばす。おそらく鬼を奇襲したやつの仲間かなんかだろう。
「う、嘘でしょ?」
さっきの木より遠くから声がする。小声で意識しても聞こえな位ぐらいの声だ。だが、俺の地獄耳を舐めてもらっては困る。反響から位置を特定しそちらを振り向き最高の笑みを作る。
「お前かぁぁぁぁあ!」
「キャーーー!」
さっきから叫んでばかりだな。
俺は、間違ってもやってはいけないことをしたそいつを、全力で追いかけるのだった。
いや、追いかけるというのは不適切か。追いかける必要もなく、一瞬で犯人の目の前まで駆け上る。
「あ、あの、ご、め、んな、さい」
恐怖の余り涙を流すその瞳は、吸い込まれるような瑠璃色で輝いていた。ほんのり赤い唇は、より一層白い肌を際だたせている。髪は夜空のように黒く、その肌の上を星のように輝く涙が伝う。
あ、俺とんでもない罪を犯してしまった。
「い、いや、いいんだよ?わかってくれたなら、うん。気にすることないからね?ちょっと痛かっただけだし、その、ほら泣かないで?」
こんなか弱い女の子を泣かせてしまった。俺のバカ!
「どうしたの?こんなところで?何か手伝えることはある?」
「え?」
あまりのギャップの大きさに状況を把握できてないようだ。それもそうか。殺人鬼がおネェだったら俺も動揺する。
「何かあったらおじさんになんでも言ってね?」
「おじさん?」
自分がおじさんだからと言って、自分で自分をおじさんと呼ぶのは精神的にくるものがあるな…。
「そ、おじさん。誰かに追われてたりしたら、おじさんが守ってあげるからね?」
追われているのは確認済みだ。さっき吹き飛ばしたし。
「おじさん?」
なんだ?そんなに馬鹿にしたいのか?まぁ可愛いは正義だ、許してやろう。
「おじさんだ。おじいさんでもいいぞ?」
なぜかその子は俺の顔を見てポカンとしている。因みにこの子の年齢は20歳くらいだろう。
「どうした?何か付いてるか?まさか後ろに敵か?」
キョロキョロとしたらその子がクスクスと笑った。目に溢れんばかりに溜まった涙が落ちる。笑いを堪え、左手で口元を隠す姿もまた可愛らしい。そしてその口から俺の知らない自分を聞かされた。
「あなた、私よりも子供じゃない?」
え?
来週投稿できるか危うくなったので今投稿してしまいます!




