十三話 門番
前回投稿するのを忘れてしまいました。すいません
「では、頼んだぞ、新人君?」
「は、はい!」
私の正体を見破ろうとしているかのように、目を細めるドラゴン。
「まさか新人の、しかも余所者に門番を任せることになるとはな…。」
「…」
早く街に戻ってくれ。変身が解けてしまう。
「ま、新人と言っても数年前に保護されたのだし、信頼を獲得しているようだし。何しろ君以外にはもう変身できるものがいな…」
「あ、あの。お言葉は有り難いのですが、そろそろまずいのではないでしょうか?」
長いんだよ、うるさいな。
「ん?なにがだ?……あー。すまない、すまないつい話し込んでしまったな。あっはっはっは。」
お前が勝手に話し込んだんだろ?
「それこそ余所者に見られたらまずいですよ?」
愛想よく雑魚に微笑む。
「それもそうだな。では、私はいくぞ?何かあったら信号を送れ。戦闘は極力避け、危険を感じたら全力で逃げるのだぞ?わかったか、スギウラ?」
「了解です!」
ったく。うるさい爺さんだったな。やっと一人になれた。ここまでの道のりは長かった。
一族の信頼を得るために約2年の月日を費やして、さりげなく変身を使えることもアピールしてと、苦労の毎日であった。一族に入るのも容易ではなく、まず奴らの言葉を解読しかつ、奴らの言葉で返事をしなければならないのだ。勿論本当に話そうとしていては、人生棒にふることになる。魔法により解読コードを製作した。これにも多くの月日を費やした。ドラゴンに変身し幾度もドラゴンを探しに森へ入った。時には人間に追いかけられたり、魔物に追いかけられたり…とりあえず何かに追いかけられたりした。やっとのことでドラゴンを発見し、何時間も追跡しながら、やっとのことで完成させた。解読コードは、対象の言葉を何度も聞かないと作れないのだ。…まぁその前に魔法習得にも苦労したのだが。その甲斐もあり門番になることができた。
なぜそこまでして門番か?答えはひとつ、巧妙に隠された都市を発見する為である。ドラゴンの都市は古代都市であり、古代の伝説のドラゴン、ソウル・ドラゴニアンにより作られた夢幻郷である。普通に探して出てくるものではない。そして、私一人ではこの都市でどう足掻こうと、経験値がもらえないことは確認した。奴らの連携は非常に危険である。その上彼ら固有の能力である、吐息が覚醒している者もいるのだ。勝てるわけがない。
なぜ都市を発見したかったか?彼らの経験値が欲しいからである。彼らは他の種族に比べると長寿であり、魔素を大量に溜め込んでいるのだ。魔素が欲しい理由は、魔素量を底上げするためである。
魔素は、術を使う際に消費する。魔素量とは、魔素を貯めておける容量のことを言う。
魔素量を増やす方法はいくつかある。そのうちの一つが、自分の魔素量を遥かに上回る魔素を取り込むこと。魔素を貯めておく場所が大量の魔素に耐えきれなくなり、最大容量が膨れ上がるそうだ。しかし、実際は成長と共に少しずつ増やしていくものであって、そのように反則を使うとなると簡単ではない。中途半端な量を取り込んでも、容量は増えるどころか減ってしまったり、暴発してしまう。大量の魔素、というのが大事なのだ。
おおっと話が脱線した。兎に角独り占めできないのなら、今までの予定通り同郷仲間たちと合流する必要があるな。本当の予定は私一人でドラゴンを全て滅ぼすのが予定だったのだが…。仲間の言う通り、簡単にはいかなかった。独り占めできればよかったのだが、できないのならしょうがない。はぁ。もしも強いドラゴンがいても一人ならなんとかできたんだけどな…。
あいつらもあいつらで酷いものだ。よそ者の私に秘密などなく話していたように見えたのだが、なんとこいつら、奥の手ともいうべき最終生物兵器を隠し持っていやがったのだ。二年の間、ただ信頼を勝ち取るために動いていたわけではない。これも仲間たちと予想していたことである。
長い時を生きるドラゴンに奥の手はあるのか?
これ程長い間隠れ続けてきたのだ。一度ぐらい私の様な者と出会っていても不思議ではない。実際、私と話すときある話題に入ると微妙な声の震えなどがあったりした。
まあ、突き止める前にわかったんだけどね。
一昨日ぐらいの事だった。なんの前触れも無く突然、虹色に光るドラゴンが何処かの建物から爆風とともに舞い上がったのだ。美しくかつ、力強い印象に加え、恐怖が身体中を駆け巡った。鳥肌がたち、その場から一歩も動けなかった。
これがドラゴンの最終生物兵器。目にも留まらぬ速さで、空の彼方へと。
その時は何が起こったのかさっぱりだった。立ち尽くすしかなかった。
それを合図にしたかのように黒光りした謎の男が暴れ出したのだ。はっと我に帰り応戦した。激しい戦いだった。私でも倒すどころか、傷つけることすら至難なレベルのドラゴンも簡単に吹き飛ばしていた。強いのは一目でわかるが、虹色のドラゴンほどではない。見極める能力などなくても、なぜかわかった。きっとこいつはあのドラゴンがいなくなるのをずっと待っていたのだろう。でなければこのタイミングで暴れにこない。おそらく目的は私と同じ、魔素量拡大だろう。
このままではやられてしまう。経験値が取られる。どうにかしようと、黒い男の背後をとった時だった。男が、いや、私以外のほとんどが、動きを止めた。周りを見回すと、皆一つの方向を見据えていた。
その方向はあのドラゴンが消えた方向だった。私以外の全員が動きを止めたのだ。こんなチャンス二度と来ない。皆私を見ていない上に、動かないのだ。
私は変身を解き新たに蛇に変身し、そいつの首に絡みつく。そのまま首筋に歯を突き立て噛み砕く。素早く離れ変身を解き、再びドラゴンに変身する。相手は私の毒にもがき苦しみながら、ドラゴン都市の家々を破壊しながら逃げていった。
そして黒い男を私が撃退したことを報告し、今に至るのだ。今まで頑なに門番だけはやらせてくれなかったのだけど、やっと門番にしてくれた。
長く語ってしまった。でも、本当に大変だった。取り敢えず予定通り、上空に魔術で花火を上げないと。仲間にしか観測できないように崇術で覆った物だ。
私は上空に右腕を挙げ左手でそれを支える。大きな花火を、この2年間ずっと上げたかった花火を!今!
……ん?私は右腕で今まさに上げようとしていた花火を抑える。なんだ、あれは?空にかざした右手の向こうに何かが光る。こっちに来てる?少しずつでかくなる。見た感じではそれ程大きくないようだ。遠いから錯覚しているのかもしれないが…。
その時私の目に虹色の光が差し込んだ。思わず目をそらした時、脳裏に思い浮かぶ節があることに気がつく。再び上空を振り返り、一直線にこちらに飛んでくるその姿を確認する。
「に、虹色のドラゴン!!」
今週は2話分投稿する予定です。




