十二話 嘘
キャッスル入試編のラストです
『コレット!右の木の幹から矢!』
クバの魔術の技術はキャッスル受験者の中でも上位に位置していた。しかし今のように、仲間に罠を教えながら戦っているため、戦況は未だに傾かないのであった。相手も相手で、同じ場所に残ると罠の位置を覚えられてしまうため、常に移動していた。
以前のクバならば移動しながらなど不可能であった。しかし、この四次試験により、クバの魔術の技術は進化していた。技術の向上により、移動しながらの位置把握が可能になったのだ。
しかし、可能になっただけであって、今でも非常に困難なことであった。その上戦っているのだ。クバはこのまま行けば勝てると確信していた。しかし、自分の消費が勝利するまで続かないことも分かっていた。
(このままじゃ、まけちゃうな。ここは…)
『コレット!俺の相手に魔術を一発ぶち込んでくれ!弱くていい。隙さえできれば畳み込める。』
成る程。これで俺たちの勝ちだな。負けてもいいのだが、クバ曰くこれが最後の戦いではなく、まだ暫くつづくそうだ。ここで脱落したら抜かれる可能性も捨てきれないそうだ。要は勝てばいいのだ。
しかし、いくら待ってもコレットが魔術を使うことはなかった。聞こえているはずなのに、使おうとする気配すらないのだ。
『おい、コレット。急いでくれ。クバはもう少し大丈夫だが、崇術を使ってる俺は限界に近いんだ。』
しかし、コレットは返事をしなかった。クバの相手に今すぐ攻撃できるように、さっきよりも結界を強くし、コレットを動きやすいようにする。くっ…結構きつい。
『コレット?どうかしたのか?返事をしてくれ。』
コレットは今、ただ立っているだけだ。動かない。もしかして…
『クバ!コレットがやられた!どうする?』
『そんなはずはない。コレットはかすり傷すら負ってない筈だぞ?』
コレットの方をもう一度見てみる。相変わらず直立不動のコレット。
『でも動かねぇ。返事もしない。さっきまで普通に戦っていたのに、どういうことだ?』
クバが一瞬こちらを見る。普通に話しているように聞こえるが、クバの回りを絶えず魔術が襲っている。恐ろしい集中力だ。
『……!!』
『何か分かったのか?おい、クバ?』
今度はクバが返事をしなくなった。なんなんだよ?何かを考えているように見えたクバが、固く閉じていた重々しい口を開く。
『コレット。お前まさか、術が使えないのか?』
な、……は?えーーーーー!
『嘘だろ?こいつ…。今まで俺たちを騙してたのか?』
『……』
『なんとか言えよ、コレット!』
『……そんなつもりはなかったし、勘違いしたのはそっちだ。ぼ、僕は一度も強力な術を使って見せた覚えはない。それに、僕は術を使えるなんて話したこともない。』
コレットの声は震えていた。
こ、こいつ…。俺は嘘をつかれるのが大っ嫌いだ。人を騙すようなこと。
『お前は俺たちが信じていることを知った上で黙ってたんだよな?』
正直言うと、俺はコレットを尊敬していた。なんでもできて、誰よりも上にいて、期待を裏切らないコレットを。
それよりもキャッスルは術を学ぶ場所であり、能無しが来ていい場所ではないのだ。
ゼーマにとって信頼していた相手が、嘘をつくことは許されないことであった。幼い頃から仲間を簡単に信じることのあるゼーマは、裏切りや嘘を他人とは比べ物にならないぐらい敏感に察知し軽蔑していた。
(俺がこんなに信じてたのに!)
今回の嘘に自分ではなくクバが気付いたことに加え、もしかしたらコレットに関わっていた自分達の身にも危険が及んだかもしれなかった。
裏切られた。騙された。そんな言葉が頭の中をぐるぐると回っている。彼は彼以外の誰であっても理解不能な程、怒りを覚えやすい男であった。それ故、ゼーマにとって信用しきっていたコレットに嘘をつかれるのは、心の底から怒りが湧き上がるほどまで怒る結果となった。
『ゼーマ?』
僕にはゼーマが異常なぐらいコレットに激怒しているように見えた。コレットの隠していたことは、僕たちにとっても非常に大切なことであったのは確かだが、そこまで怒らなくても…。
『…他には何を隠している?』
ゼーマの声が静かに重く響く。おっと!危ない…っと!僕は未だに飛んでくる様々な魔術を避けながら、反撃を繰り返す。当たってもほとんどダメージを喰らわないぐらいの威力で設定している。魔力の減少を大幅にかっとしているが、いかにも当たったらひとたまりもないような見た目の魔術を選んで使っている。相手も同じ手を使っている。しかし、僕は相手が同じ手を使っている事に気付いているが、相手は気付いていない。これはでかいぞ。相手は俺を仕留める為、そのうち仕掛けに来るだろう。例えば僕が疲れたような素振りや、技のキレがが無くなったら、全力で攻めて来るだろう。それを凌げば…。総合的な戦闘力がほぼ同じなのに対して、こちらに相手の隙を突く方法があるのはありがたい。
因みに、相手が僕が手を抜いていることに気づいてないとわかったのは、コレット達と話している時である。魔術を僕の回りを囲うように使っていたのだ。これは魔力を無駄にするのと同じ行為だ。魔術により相手が見えなくなるのに加え、威力も弱まる。このように魔術を使うのは、相手への威嚇か、雑魚に対しての脅し、目くらまし、相手への侮辱と言ったことで使われる。簡単に言うと、相手を舐めきっているときに使うのだ。恐らく、会話の邪魔をしようとしたのだろうが、それなら爆発音のでかい魔術を使った方が妥当である。こちらへの侮辱も混じっていたとみて間違いないだろう。反撃により、相手の魔術が一瞬止ま…バリン!
嘘だろ?
僕を包み込むように囲う光により意識が遠のく中、悲しそうな顔のコレットの顔と、怒りで歪んだ表情のゼーマが目に入った。
ゼーマの反応に無理があるかと思う方も多いと思いますが、そうなるように考えて書いてますので。決してうまい具合に理由が浮かばなかったわけではないので!




