十一話 油断
また少し遅れました
『ありがとね、俺たちのために得点を稼いでくれて。』
細長男の声が真っ白になった頭の中に響く。そうか、そうだったのか!
俺たちは致命傷を与えられず、気絶させられた。気絶させるのは至難の技であり、失敗すれば反撃の隙を与えてしまう。しかし今回は、コレットが自滅しクバを簡単に気絶させることができた。残りの俺は間違って致命傷を与えないために、押さえつけられてる。
致命傷を与えれば強制送還され、ガラス玉もそこには残されないのだ。
『もうやめてあげてよ。可哀想だよ、ガシュ。』
『それもそうだな。悪い、調子に乗りすぎた。』
ヒメコの声にハッとする。恩を仇で返しやがって!このやろう。ヒメコを睨みつけると、目線を申し訳なさそうに逸らされた。本人も心が痛いってわけだな。
『おいおい、ガシュ。こいつに俺たちの得点教えてやろうぜ。』
『それこそ可哀想だろうが!だが、特進クラスに行く俺たちの現在の得点を、教えてやってもいいけどな。特別に教えてやる。139点だ!』
な!139点だと!?俺たちよりも多く点数を取っているだと?言うまでもなく俺たちは、最高に良い効率で点数を稼いできた。それを上回るということは、こいつらの言っていたことが本当にできるということだ。
『その上にお前たちの点数100点だ。特進クラスにいけば、俺たちは尊敬されるぞ!馬鹿にした奴らも見返せる!』
なんだ?妙に力がこもっていたが…。てか、此奴ら常連なのか。出くわした相手の得点をことごとく奪ってきたということだな?
俺は俺が行きたかった特進クラスに、行く奴らの顔を見上げる。
『そんなに得点あるなら、俺達の得点を奪わなくていいだろ?俺も特進クラスへ行きたいんだ。』
『そうしたいのも山々なんだがな、奪えるものは、奪っておかないとだろ?しかも、お前は俺たちの秘密を知ってしまったからな。このまま逃すわけにもいかねぇ。最悪、俺たちがリベンジを仕掛けられて、逆に点数を奪われる可能性だってある。特進クラスに行きたいのはお前たちだけじゃねぇんだよ。油断したのが運の尽きだ、甘ったれんな!』
此奴もどうしても特進クラスに行きたい理由があるように見えた。見返せる、といっていたな。なにかあったのだろう。
くっ…。悔しいがここまでか。あの時俺の忠告が早ければ…。今思い返せば理由がわかる。バリアは崇術によるものだ。それをヒメコが、相殺できないわけがない。そして、結界を自分達に張り、コレットだけ直撃。この時点で既にマテルがクバの後ろに回りこんでいたのだろう。
あの時油断しなければ…
『油断大敵その通りだ!』
突如その場に声が響いた。同時に、うつ伏せに俺を押さえつけているマテル。その目の前にしゃがんでいたガシュが、消えてしまった。
そして、ガシュの向こう側にいたヒメコの代わりに、なにかがフラフラよろめきながら崩れる。
『コレット!』
『もう……バリア張るのを、忘れないで、よ』
掠れた声だった。土で汚れた手のそばには、割られたガラス玉があった。その姿は、クバの魔術の威力を物語っていた。直撃したのだ、フラフラになるのは当たり前である。
そうだ、クバは?周りを見まわそうとしたら、背中に硬いものが落ちてきた。
『もう、取られないようにね。』
うつ伏せに倒れている俺の背中に落ちてきたのは、ガラス玉だった。
クバは、片手で頭をさすりながら俺の横に寝転ぶ。
『危なかったな。』
そう口にしたら、急にコレットとクバが一斉に俺の方を向いてきた。な、なんだ?
『そんなことより僕たちを回復してくれよ。減点なんてゴメンだぞ。』
自分の胸に手を当てながらクバが話す。
緊張がほぐれほっとした俺たちは、顔を見合わせ笑うのだった。
後から聞いたのだが、此奴らに出くわす前に、クバは此奴らに気付いていたそうだ。
気付いていていつも通りに突っ込むのもどうかと思ったが、結果的にこうして面白い情報も手に入ったのだ。最善の選択だったのだろう。
クバは魔術により、周りの位置把握を行えるそうだ。つまり今まで魔術により、一番近くにいる相手を発見していたのだ。移動しながら位置把握を行うことはできないそうだ。当然ながら、俺たちが周りで動いていれば邪魔になる。そのため面倒だが、いちいち止まり位置把握を行っていたのだ。この時大事になってくるのが、移動時間だったそうだ。速く移動できなかった場合、目的地にたどり着いても相手がいない可能性もあったのだ。しかし、今回はそのことは考えずに移動できたそうだ。俺の脚強化がだいぶ役に立ったそうだ。少し照れるな。
話を戻す。クバは一組だけ不審な動きをしていることに、気がついたそうだ。一定の距離を保ちながら、つけてきていたのだそうだ。ためにし近づいてみたがやはり距離を一定に保たれたそうだ。相手にも位置把握をする奴がいるということがこの時点でわかり、倒されないことから相当な手練れであるともわかった。
近づいてこないのなら、気にしなくていいだろうと思っていた矢先に急接近してきたため戦うことにしたのだそうだ。奇襲も失敗する訳だ。驚いたことに、コレットにもそのことを話していたので、二人はやられたフリをするつもりだったらしい。
予定ではコレットが敵に返り討ちにあい、クバは暫く俺と共に戦った後、タイミングを計ってやられるつもりだったらしい。実際は本当にやられてしまい、意識を保ちつつ息をひそめるのが大変だったそうだ。
つまり、俺たちはクバの手のひらの上で踊らされていたのだ。俺たちだ。ヒメコ達ではない。俺が含まれている。一人だけ使命感に駆られ頑張って損をした。全く…。結果オーライ!でも、次俺を騙すようなことをしてみろ?次は許さないからな?正直騙されるのは大っ嫌いだからな。
そのあと、何回かヒメコ達のやっていた得点吸収をやろうと頑張ったのだが、やはり無理だった。登録メンバー認識を誤魔化す事は簡単なのだが、その先の高度な崇術が使えないのだ。あの妙技はヒメコがいてこそのものだったのだ。今頃悔しそうに俺たちを見ていることだろう。
その後も、ヒメコ達を超えるチームや同等のチームに遭遇することはなかった。
こうして俺たちは余裕の一位通過で特進クラスに合格して、めでたしめでたし。これで終わったのなら良かった。しかし、そうはならなかった。合格したし一位通過だったが、最後の最後にガラス玉を割られてしまったのだ。
なんの因縁なのか、割ったのはマクだった。敵として俺に立ちはだかったのだ。そこまで苦戦はしなかった筈なのに。
マクは、四時試験の一回目で密か罠を張り巡らせた場所を作っていたそうだ。二回目も、当然一回目と同じ場所で行うため、二回目では、俺と離れることを予想して保険を作ったそうだ。その罠を張り巡らせた場所にて、高度な崇術により仲間を守りつつ戦うスタイルにしたそうだ。
マクは、俺の加点の高さを目にしガラス玉を割るより、得意な補助で活躍しまくれる場所を作り、自分が活躍しまくることを選んだそうだ。これまたヒメコとは真逆の考え方だな。
しかし、一回目の努力は残念ながら、クバの位置把握により水の泡になり、俺の崇術で強化されたコレットで素早くガラス玉を…。
褒めるべきなのはマク達の粘りだ。コレットとクバの攻撃を防ぎ続けたのだ。クバと相手の遠距離の魔術の打ち合いは互角で、長引くことは一目で分かった。クバも体力の限界が近い。
この時、クバは相手の遠距離に集中していたため、こちらの援護ができなくなっていた。クバがいないことにより、不利になることはなかった。相手も同じ条件下なのだから。
マクの崇術によりコレットの攻撃は全て防がれていた。相手の接近は、コレットを無視して俺に向かって攻撃をしてきていた。接近が魔術を使ってはいけないということはない為、相手の接近は俺に向かって魔術を使ってきていた。頻繁ではなく、一定の間隔でだった。不審に思ったが、コレットの補助もしなければならなかった。マクは、防御だけでなく攻撃も行っていたのだ。ここで勝てるとしたら、コレットが動くしかなかった。案の定、コレットに動かれることを恐れて、マク達は突っ込んでくることはなかった。
ここで漸くコレットが術を使うことになるのであった。
この頃忙しくて、投稿が遅れることが多くなるかと思います。申し訳ないです。




