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転生した悪の救世主  作者: レインコート
転生してから
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九話 クバ

台風って怖いですね…

被害が出た地域の皆さん。心中お察し申し上げます。


『動かないでね。』

試験二回目が始まると同時にクバが棘のある声が飛んできた。何をする気なのやら…。魔術や崇術、武術といった術は、テスト開始前に使うと失格になってしまう。今何をしているのかは分からないが、そういった術の中の一つなのだろう。その証拠にテスト開始直後に発動している。

クバは両手を体の前に伸ばし、掌を地面に向けた状態で静止している。目を閉じ集中しているのが分かる。

この状況でコレットはどうしているのだろう。コレットの様子を見ようと無意識にチラッとコレットへ視線を向

『動かないで!』

クバの鋭い声に俺はギョッとした。

目を閉じているのにも関わらず、僅かに動いたのがわかったのだ。コレットと俺は見つめ合った状態で固まっている。

数十秒して、クバは目を開いた。

『移動するよ、ゼーマ君。』

『お、おう。じゃあもう動いていいんだな?』

『そうじゃなくて早く脚に崇術を!』

少し焦った様子でクバが苛立つ。

『わ、わりぃ、わりぃ。』

急に人が変わったように動き出す。俺が崇術をかけている間にも指示を出している。

『コレット君、あっちの方向に走って行って、合図したら相手の攻撃とか考えずにガラス玉だけを狙って破壊して!ゼーマ君はその合図とともにコレット君の周りに、簡単なバリアを張って!』

『『りょ、了解!』』

俺と同じようにコレットも威圧されている。どんな偶然か、ハモってしまった。

コレット、クバ、俺の順に木々を走り抜けていく。やはり脚の強化は、脚を速くするという意味だったようだ。一歩間違えれば、脚が硬くなっていたことは黙っておこう。

『はぁぁあああっ!とりゃあ!コレット君!ゼーマ君!』

『はいよー!』

『おう!』

クバは気合の一声とともに前方に突如クバの手の中に現れた光の玉を投げる。ババスッ!!

表現がおかしいが、空気が振動したような音がなる。

『ぐあぁ!』

数名の悲鳴が聞こえ、同時にガラス玉が近くの木に飛んできて砕ける。

『あと二組!左の一組コレット君に頼む。ゼーマ君、あの木の裏にもう一組が隠れているいるから、結界を張って!怯んでいる今がチャンス!』

結界だと!?人使い荒いぜ。木の裏に意識を集中させて、反発の意思を込めて周りを包み込む。出る者を跳ね除け、入る者を見送る。

その時コレットが相手の手からガラス玉を叩き落とす。

『二個目!』

壊れた瞬間相手が消える。

そんな事を見ているうちに、クバが相手が落としたガラス玉を持ってきた。

『隠れていたから油断したんだと思うよ。』

おそらく、ここで今倒した二組が争っていたところを影から見ていたのだろう。弱った二組を倒して手柄を奪うつもりだったのだ。しかし、そこにクバの魔術(?)が飛んできた。戦っていた二組は、ガラス玉を割られないように警戒していたため落とさなかったものの、隠れていたもう一組は油断していたため驚いて落としてしまったのだ。気の毒だな。

クバはガラス玉を地面に投げる。当然割れた。

『コレット君は流石だね。ゼーマ君も結界を張れるとは思わなかったよ。後、もう結界を解かないと三人が強制送還されないよ?』

おおっとしまった。クバの言う通り、結界を解いた瞬間三人の気配がなくなった。

『ありがとう』

コレットが少し照れながら返す。

『結界張れとか無茶振りすぎるだろ!』

俺たちは笑いながら、この調子でどんどんガラス玉を壊していった。


ガラス玉を壊すのはほとんどコレットであった。類稀なる身体能力の高さが物を言ったのだ。俺は移動速度を上げるため脚の強化をし続けた。

初めの時のように、三組相手にすることはその後からはなく、一組ずつ確実に潰していった。

この作戦の肝は何と言ってもクバであった。クバは正確に相手の位置を把握していた。一回目の時の俺は、相手を倒すためとにかく前進するしかなかった上に、遭遇する確率も少なかった。しかし今回は、クバが確実に相手を発見するため、開始から一時間もしないうちに百個のガラス玉を割った。ガラス玉を割ることだけでも大変なのにもかかわらず、淡々と破壊し、次の相手へと向かう。効率の良さは言うまでもなかった。


俺が移動を速くし、クバが確認した場所から相手が移動する前に行く。クバの先制攻撃(かく乱)から、コレットを簡単なバリアで俺が守り、コレットによりガラス玉を砕く。最強の連携であり、当然ながら止められる相手などいなかった。


『次はこっちだよ。』

クバの指した方向に全力で移動する。全員の体力が続くように、程よく休みながら移動しているし、相手を倒すのは一瞬だ。ほとんど戦闘というより作業に近かった。

荒野を走りながら、前方に相手を確認する。

隠れられる木々がないため、すぐに相手もこちらに気づく。こいつらも簡単に終わらせよう。そう思いコレットに崇術でバリアを張る準備を…?

おかしいぞ?ん?…しまった!!

『クバ!待つんだ!』

時既に遅し。一歩遅れた。

クバは不思議そうに俺を見たがもう既に光の玉を放っている。

『コレット左に逸れろ!』

俺の言葉を理解したのか、クバがあっ!と口走る。

ババスッ!コレットがその場に崩れ落ちる。素早く相手の前衛が俺へと突っ込んでくる。

『はははっ!これが次々と脱落者が出た原因か!』

まるで悪役のような男は、俺に殴りかかってくる。んなもん当たるか!

ひょいっと避けた俺の目にニンマリ笑う男の顔が写る。なんだ?

『おらっ!』

背後で誰かが殴られる音がする。振り向くともう一人の男の足元に、クバが倒れていた。そして全て理解する。ガラス玉を持っている俺を守ろうとする二人を先に片付けるのが此奴らの狙いだったのだ!やばい。これが絶体絶命ってやつか?ガラス玉を持つ相手の補助は二人の前衛を壁の様にして向こうに立っている。コレットとクバは意識がない人形の様に転がっている。コレットはともかく、クバを一撃で気絶させたとなると、相手も崇術か武術の使い手なのだろう。残された俺は、二人に前後に挟まれ身動きが取れなくなる。完全なる敗北だった。

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