あっという間に刺されて
初っ端から色々と汚い口調があります。不快に思われる方もいると思いますが、見守っていただけると嬉しいです。
ちくしょう、こんなにもいとも簡単に殺されるとは…。もう少しいい男として生きていれば良かったなぁ。もしかしたら幸せな人生もおくれたんじゃねーかな…。
今にも途切れそうな意識の中で、刺された心臓を押さえながら自分の人生を笑った。
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俺の人生は設定から悪者当然だった。お金持ちの家の三番目の子供に生まれた。兄貴達は二人とも一つ上の学年で、いつも俺のことを大事に思っていてくれた。したがって俺に悪さをする行為=この二人にボコボコにされる行為だった。
放課後は二人の兄貴の間に立ち公園を堂々と歩いた。少しでも気に入らないことがあれば、兄貴達が動いてくれる。
『彼奴らこっち見ててやだ。』
兄貴達が喧嘩をすれば、どんな問題も仲直りと言う名の不平等条約にて解決された。当然の事ながら、兄貴達は喧嘩が強かった。負けたことはないそうだ。
一流大学を卒業したら親父の会社を継ぐべく、親父の会社の社員になることにした。…っておいおい、そんなに驚くことないだろ!大学ぐらい行けないわけ無いだろ!え?一流大学にはどうやって入ったか?んなもん自分の力で入ったに決まってんだろ!
そんな冗談はさておき、実を言うとただの悪役ではなくずる賢い悪役であった為、勉強の方は結構できた。この事実は本当だが、必ずと言っていいほど誰も信じてはくれなかった。
『うるせぇば〜か。どうせ親に頼んで成績上げてもらってんだろ?』
兄貴達の餌食になった大半は同じようなことを言っていた。
クラスでは成績優秀で、いじめられた時にすぐ助けを呼ぶための運動能力にも恵まれていた。
顔もそれ程悪くないと思っている…。も、モテても仕方ねーし、別に悔しいわけねーだろーが!
いま思い返すと、非常につまらない青春であった…。中学に上がったら常連であった公園にも行かなくなった。放課後はみんな色々な場所に遊びに行っていた。羨ましかった。しかし、誘われなかったわけではない。これは俺も驚いた。そりゃあそうだと思う。普通誘われるわけがなかったから。何故かと言うと、俺は学校の休み時間でさえも色々なやつにつっかかっては揉め事をわざと起こしていたからだ。それも男女学年気にせずに、だ。逆に喧嘩をふっかけたことのない奴を探す方が大変だったくらいだ。
『おいそこのチビ、うるせぇんだよ、失せろ』
『だれ?お兄ちゃん。』
その度に先生に叱られた。
遊ぼうとは誘われたが俺は家に帰り勉強をしたかった。その時はお金持ちだからこそ自分のパソコンを持っていたし、俺は他の奴らよりも好奇心や探究心が旺盛で、場所にも恵まれている。
観察するのも好きで学校のレポートや考察などはいつも決まって花マルをもらっていたぐらいだ。よく、洞察力がとても優れていると言われた物だ。
話が逸れた。俺は無事に親父の会社(一般的には『ブラック企業』と言う)の社長になり、その力で楽しく過ごしていた。え?兄貴達?筋肉馬鹿なので、本当に俺のボディーガードになってしまった…。少しショックではあったが、当然のことでもあったと思っている。この二人も曲がりなりにも格闘センスが良かったし。
そして今日、この二人は俺の横にて寝ている。
「ぐごおぉぉぉ…んがっ、げほげほ。」
「すーーーーーー、んふーーーーー。」
いびきがうるさい方が一番上の兄貴、たくさん吸ったあとにものすごい風圧の鼻息を出しているのが二番目の兄貴。二人とも筋肉隆々の首に熊用の麻酔弾が数発刺さっている。いつもこの二人以外を信用してないが為に起こってしまった、よく言う自業自得と言うものである。
俺の血溜まりの上で幸せそうな顔で寝ていやがる。こんなにも幸せそうな兄貴達は、今までで見たことなかった。
『糞!起きろよ馬鹿!』
自分の中で出せる精一杯の声を絞り出したつもりだったが、切られた首から空気が漏れてしまって声にならなかった。
本当に無様な最後だ。二人が倒れたと思ったら、既に首の前半分が切られていた。状況を把握し、痛みが脳に伝わる頃には心臓をひと突きにされて蹴倒されていた。一瞬の出来事だった。一つ満足したのが、そうでもしないと俺を殺せなかったことだ。
何度も咳き込み痛みが全身にはしったが、意外にも頭の中はスッキリしていた。涙もでない。そろそろ昔話も終わりだな。次生まれ変わったら、今度は二人に加えボディーガードを五人ぐらい忍ばせておこうと考え、微笑み終わる頃には、俺はもう息絶えていた。
初めてですが、頑張って書いてみました。
暇つぶしにでも読んでいただけてたらありがたいです。