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9話 名前。


 なんか、嬉しそうだな。

 俺? 俺もそう悪い気分じゃねーよ。

 なんだよ、そういう事か。ま、悪くはねーな。


 にしても、まだ俺の話聞きてーの? 面白くなんてないだろうに変なヤツだな。

 あー、そういう事か。なら、もうちっと話しておこうか。何が知りたい? 


 ないのかよ。ふざけてんな。

 そういやよ、あの邪神。あいつもふざけたやつだよな。は? ないない。あんなん自称女神で充分だ。


 間抜けなだけだろ、アイツが。

 復讐でもなんでも許してあげるとか言っといてな。

 何がしたいんだか、わかんねーよな。


 いや。したくもねーし、する理由もないだろ?

 大体、俺を毒殺したっていう王様も、他の連中だってもういねーのに、誰にすんだよ。

 国だって、とっくになくなっちまってんだぜ。


 恐ろしい事考えるのな。それ、復讐じゃなくて虐殺だからな。そんなんやったら魔王にされるぞ。

 いや、別にやりたきゃやればいいけどさ。俺はそんな気分にゃなれねーな。


 俺は別に、誰が悪いとも思わんよ。

 ただ巡り合わせが悪かっただけでさ。

 そんくらい必死だったんじゃねーのかな? 毎日を生き残るのに。

 だから別に、復讐したいとは思わない。犬も猿も雉も、良い空気吸ってたしな。


 そうじゃなかったら?

 多分、やんねーと思うけど。

 犬も、猿も、雉だって喜ばねーよ。だってアイツら動物だし。


 それよりもさ、悪かったな。

 何が? じゃねーよ。

 身体、辛かっただろ? 


 いや、俺にだって罪悪感くれーあるわ。

 人を傷付けておいて平気なら、もうそれ人じゃねーだろ。王様だって、そう言ってたぞ。

 

 人殺しは平気なのに? だって? いや、それは別だろ。必要だからやる。

 王様だって、母親だって、誰だって、そうしてきたよ。だから、俺もそうしてきただけだ。


 それに別に平気でもなければ、何も思わなかった訳じゃねーし。

 忘れちまったけど。

 必要がなければやらねーな。


 やりたい事?

 やりたい事か。なら、いっぱいあるぜ。

 女と合体したいとか。


 怒んなよ。

 変な事じゃないだろ。

 もっと他にか。

 いや、いいよ。やっぱ友達に噂とかされると恥ずかしいし。


 忘れちまえよ。俺の事なんて。

 きっとその方が良いし、必要な事だから。

 いいよ、お前はそのままで。

 それが、俺のやりたい事だから。


 なぁ、チェレステ。


 なんでそこで、お前が泣くんだよ。

 ハハっ。知らないじゃねーよ、私。

 いいんだよ。お前は、お前のままで。


 あん? 俺の名前? 忘れちまったよ。だって、誰にも呼ばれてねーし。


 わかったわかった。思い出すからよ。たしか——。

 

お読みいただきありがとうございます。

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