えへへの決戦日
5月に入り梅雨入りがもう目の前に来ている。
メイは仕事へと出かける朝の風景を見て改めて感じた。
最近ずっと雨で洗われていないはずの街並み。
通り過ぎる公園の緑の葉っぱ一枚までも、きっちりとした輪郭が目に入る。
ずっとパソコンで目を酷使していたというのに。
お天気が良いからかも。
「今日の私のために、お天道様だって応援してくれちゃってる」
思い付きに「えへへ」と、最寄り駅へと歩く足取りは弾む。
彼女にとって、はじめてリーダーとして準備したプレゼン。
発表は本日午後。
「みんなは緊張しているだろうけれど、私はみんなの頑張りも知っているから」と
あまり緊張感のない今朝の自分を雑に人のせいにしておく。
このプレゼンの為に普段より短めスパンでメイはネイルに行った。
「早坂さんのお爪の形って綺麗ですけれど、薄いですし爪のつき方で割れやすいですよね」
なぁんて、いつものネイリストさんから昔、言われたというのに。
「タイピングするときに爪がお気に入りだと元気出るからね」
「そう仰る方多いんですよ」
「ですよね、ですよね!後輩ちゃんはネイルしないけど、いっつも違う指に違う指輪してるもん」
「女の子って感じがしますね」
「単純かもだけど、こんな事で頑張れちゃうんだから。今回は特に頑張るからコレにしてもらいたいな~」
ネイリストさんとの会話を思い浮かべながらメイは綺麗に塗られた爪を見る。
今朝のメイは少し早めに起き、お化粧いつもより念入りにした。
昨夜「まさかと思うけどメイちゃん、明日の洋服選んでる?」と不思議そうに夫に見つめられた衣装を決め込んで。
家を出る前に姿見の前でくるんと周り「今日の私、完璧」と鏡に言ってお出かけしてきた。
ふんふんと勢いづくメイは、駅に着き階段を昇る。
いつもの知らない人たちは、いつもと同じようなスーツやオフィスカジュアル。
「他の人から見たら私もいつも通りかも。でも、今日の私はいつもと違うんだから」
ホームに時間通りにやって来た電車。
見知らぬいつもの人々に、メイはカツンとヒールを鳴らして乗り込んだ。
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「ふぅ」と溜息にさえ聞こえる声を出し、髪にドライタオルをしながら居間に入ったメイ。
既に入浴を済ませ、パジャマに着替えソファに座る夫の膝に滑り込んだ。
「こらっ、ビールこぼれるから」
苦笑しつつ持っていた缶ビールを夫は彼の頭上くらいの高さまで上げた。
「私も飲む~~~。ビール開けてよ~~~」
「飲むなら自分で取っておいで」
「ヤダヤダ、今日頑張ったもん」
子供のように足をジタバタさせるメイに、「仕方ないなぁ」と呟き「ちょっと失礼」とメイを自分の膝から移動するようにと手を動かす。
「ちゃんと缶も開けてくれないとダメなんだからね!!」
いつの間にかソファにうつ伏せる様に寝転がり駄々を勝手にこねだすメイは「はいはい」とプシュッという音を聞きつけ顔を夫に向けた。
「はいどうぞ」
と差し出されたビール。
「飲むならちゃんと座りなさい!!」
「はーい」と不貞腐れたような生意気な声を出すメイに彼女の夫はまじまじと見つめた。
「なぁに」とワザとらしく低めに答えるメイを更に見つめる。
「もうっ!!」とメイはやっとのことで寝転ぶのを諦めソファに座ると、彼も隣に腰を掛け残りにビールをごくごくと飲む。
メイもお風呂でさっぱりと流した汗もメイクの為にも、潤いを求め喉を鳴らす。
「メイちゃんってやっぱりすっぴん可愛いよね」
メイは突然の褒め言葉になんだなんだと思いながらも「えへへ」と夫の肩に、乾かした頭を乗せた。




