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こうして人類は滅亡を免れた

作者: きじの美猫
掲載日:2026/04/18

目が覚めた


出勤の用意をする時間

窓の外を車が行き来し、

人々がオフィスへ、学校へと向かう


雑踏の音

子供の走る靴音、

笑い声とあいまったはじけるような息遣いの気配

ーなにも聞こえない


記憶とスマホのカレンダーを確かめた

今日は休日

それにしても無音だ

時計は動いているのに針の動く音がしない

自分の衣擦れの音はわかるから、

耳が聞こえなくなったというわけではない


朝日がさしこんでいる

なのに、大雪で交通がマヒしてしまったときのように

音はどこかに吸い取られている

何が起きた?

日照や気温には違和感はない

では何がちがう?

ふと脳裏をよぎる文字


ー「人類滅亡」ー


いや、アニメじゃあるまいし

突然どこからか、人間がいなくなる光線が発射された・・・

なんてことはあるわけがない

そもそも、なんで自分だけ生き残ってる?


いや待て、

もはや他人は存在しない前提で考えてるな


でもでも、

もしかしたら

これは最悪の事態を想定したほうがよくないか?


そうなるとまず水の確保だ

幸い日頃から飲料は備蓄してある

これがないと詰むからな・・・。


電気は?

いまのところ特段問題はない

発電所が動いている限り

急に停止することはないのだろう

小型のバッテリーも普段から充電してあるし

ソーラー充電もあったっけ


食料は?

保存食ならそれなりにある

必要なら外に出て、

コンビニなり自販機から購入できる


トイレは?

大丈夫、今のところは問題ない


次は何だ?

供給が安定したなら次は廃棄物だな


飲み食いすればゴミがでる

乾燥物ならいいとしても、

生ごみは即座に外に捨てなければならない

しかし収集はこない

ひとり分でもあっという間に溜まる

なにより不衛生だ

だって人はいなくても虫はいるのだから


ゴミ置き場には捨てられん・・・

近くの工事現場に大きな穴があったな

あそこに生ごみを集めておこう

炭カルの袋に詰めて、

あれなら分解してくれるから

ある程度集まったら埋めればいい


そうだ、

自分の手の届く範囲でいいから

環境を整えよう


やること、いくらでもあるな

犬や猫はきっと、いる

いいじゃないか

彼らはなにも悪いことなんてしない

ただ餌が足りていればそれで満足してくれる


まずコンビニだな

生もの優先で消費する

食べきれなかった分は

野良の犬猫に提供しよう

餌場を決めて定期的においてやればいい


後始末もしないとな

水が使えるところは流せばいい

水飲み場も必要だよな


周辺のコンビニは10件といったところか

毎日各店舗を巡回して

在庫見て足りないものを補充

当分はこれにかかるだろうな


だれもいなくなっても、

ちっともさみしくなんかない

自分が生きるのに忙しくて

それどころじゃない

なんとしても生き延びてやる

でも何のために?

――自分がそうしたいからだ

不自由でもひとりでもいい

どこまでも生き延びてやる


無人島に漂着したって生き延びた人はいる

それに比べればうんと楽にちがいない

最後のひとりになっても

できることを精いっぱいやって

どこかにいる神さまに見せてやる!


・・・そのとき


不意に手元のスマホが鳴った

姉からだった

「ちょっと!台風来るんだって?

そんなの聞いてないわよ?!」


こうして人類は滅亡を免れた・・・。

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