黒い扉の向こう側
目の前に現れたカラフルな扉
恐る恐る近づいて
コンとノックをしてみた
扉の向こうは広いみたいで
音が反響している
ゆっくりとノブを回した
広がったのは
色とりどりの花が散らばる草原
赤、青、黄色、ピンクに橙
名も知らない花だったけれど
とても綺麗だった
寝転がりたくなってやめた
鮮やかな花が
潰れてしまうのは嫌だったから
甘い花の香りに誘われて
歩いていけばまた現れる扉
今度は真っ白だ
同じようにゆっくりと開く
目を奪われたのは
雪で包まれた純白の街
仄かに光る街灯に照らされて
キラリと輝く雪の結晶は
捕まえても掴まえても
透明人間みたいに消えてゆく
小さな子どものように
はしゃいでしまうのはきっと
僕の街ではほとんど降らないから
雪の花を追いかけて
見つけたのは真っ黒の扉
次はどんな景色が見られるだろう
楽しみに楽しみに
勢いよく扉を開けた
雨が降っていた
真っ黒の雲が世界を覆っていた
傘も差さずに
誰かがしゃがみ込んでいた
顔を覗き込む
僕だった
水溜りの目の前で
僕が膝を抱えていた
水溜りには何も映っていなかった
浅いのか深いのかすら分からないほど
曇り空のままだった
啜り泣く声がする
しんと静かな道中に
嫌なくらい大きく聞こえた
頬から落ちる涙は
水溜りに落ち
水溜りはどんどんと大きくなって
僕の姿は消えた
口を薄く開けたまま
僕は立ち尽くした
もう扉は現れない
辺りを見回しても何もなく
息苦しくなってゆくだけ
突然
何処かからノックの音が聞こえた
目の前に扉が現れて
向こうからゆっくりとノブが回される
誰が入ってくるのか
知っている人か
それとも知らない人か
確認もせずに
僕は誰かをこっち側へ引きずり込んだ
────ようこそ。
暗い暗い雨が、
いつまでも降り続ける世界へ。
ご覧いただきありがとうございました。
寂しくないように。
誰かに届きますように。




