夜の公園と社畜OL
私は仕事後、夜の公園に寄る事が多い。
街灯は明るすぎず、暗すぎず、
子供たちの声は消え、代わりに遠くの車の音と、虫の鳴き声だけが響いている。
私は灯りの下のベンチに座り、社用携帯の画面を伏せた。
もう見なくてもいい・・・
ある程度の返信は終わらせたし、どうせ明日になり出社をすれば
電話対応の嵐が待っている。
スタイリッシュに見せる為の、スリムなスーツのジャケットを脱ぐ気力もなく、
背中を丸めたまま、私は夜風に当たっていた。
あぁ、季節はこんなにも進んでいたのか・・・・
気付けば、入社から半年以上が経っていた。
ブランコが、きい・・・と小さく響いた。
誰か私みたいな、疲れた会社員が来たのかと目を向けると、ただ風で揺れているだけだった。
「やっぱり、私みたいな社畜はなかなか居ないか・・・・」
ぼそっと独り言を言う。
誰かに聞かれたいような、恥ずかしいようなそんな気分だ。
この公園は、私にとって仕事と家の間にある”憩いの場”なのだ。
家に帰る前に、この場所で頭を一度リセットする為の場所。
明日の事を何も考えず、ぼーっとするだけの場所。
ブランコから目を離し、足元に再度目線を向けると、
不意に、きらりと光るものが視界に入った。
雨の雫・・・・ではない。
地面全体に、淡い光の輪が広がっていた。
まるで、水面に雫を落としたような、静かな波紋。
「・・・・っえ!?」
不安になり、その場を離れようとした時
光は音もなく、強い光となった。
街灯の光が遠くになり
夜空が見えなくなった。
まるでこの場所だけが、
現実世界から切り離されていくような感覚だ。
逃げなきゃ、と思った。
でも、同時に頭のどこかで冷静に思う。
・・・今逃げても、街は見えない。間に合わない。
その時、足元に小さな光の輪が出来た。
少しまぶしいその光を見つめると
文字が少しずつ浮かんだ。
【進行状況:未】
【対象者:異世界の社畜OL】
【猶予時間:00:00】
「・・・どういう事?猶予時間って何?」
頭が混乱している中、
私の身体を光そのまま包んだ。
そのまま水の中に落ちるような感覚になる。
重力が消え、最後まで聞こえていた車の音も無くなる。
最後に見えたのは、
誰もいない夜の公園と
揺れ続けるブランコだった。
・・・・明日の仕事どうしよう。仕事の共有まだしてないのに・・・・。
そう思った瞬間、包んでいた光が消え
世界は、静かに切り替わっていた。




