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第一部完【連載版】思ったよりも異世界が楽しすぎたので、このまま王都の片隅でポーションスタンドでも始めてのんびり暮らします。  作者: 雉子鳥幸太郎
第一部

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鑑定

「そっかぁー、ずっと言えなくて辛かったんだね……。ごめんね、私が何か勘違いさせるようなこと言っちゃったのかもなー」


カレンさんが眉を下げながら笑った。


「い、いえ、そんなことないです! 私が勝手に色々考えてしまったからで……」

「ふふっ、じゃあ、おあいこだ?」

「えっ……」


予想しなかった言葉と、カレンさんの悪戯っぽい笑みにドキッとする。


「それよりさ、もう使ったの?」

「いえ、まだ一度も……」


「じゃあ、何が鑑定できるかもわかってないのね?」

「はい、そうなんです。あ、それと……まだ、言わなきゃいけないことが……ありまして……」


カレンさんなら大丈夫だって頭でわかっていても、いざとなると、やっぱり勇気がいるなぁ……。


「大丈夫、どんな秘密でも、受け止める自信はあるわよ?」

「……じ、実は、私、異世界から来てまして……」


数秒の間、カレンさんの動きが止まったように見えた。


「……異世界?」

「はい……」


「異世界?」

「は、はい、異世界です」


「え、ちょっと待って、えっと……どうやって来たの?」

「魔術師さん達が言うには、聖女召喚というものらしいです」


「聖女召喚っ⁉ ナ、ナギって……聖女なのっ⁉」


カレンさんが驚いて席を立つ。


「あ、いえ……私は聖女ではなかったそうです。だから、お城から追い出されちゃって……その時に魔術師さんが、私に錬金術師の適性があるって教えてくれたんです」


「そうだったの……お城の魔術師……? きゅ、宮廷魔術師のことよね⁉ うん、そうよね……召喚なんて彼等くらいしか……」


カレンさんは顎に手を当て、真剣な顔で何やら呟いている。


「そのせいかどうかわからないんですが……魔力通しをしてもらって、スキルを見たんです。そしたらスキルポイントが1000もあって……」

「せ、1000っ⁉」


「怖そうな魔法とか色々あったんですけど、そういうのは苦手というか、私はこの異世界でのんびりポーションを売って、生活していければいいと思ってて……役立ちそうな鑑定と鑑定阻害、生活魔法の三つを覚えたんです」


「鑑定阻害か……私も初めて聞くスキルだわ。名前からして、鑑定されるのを防ぐスキルってことよね?」

「たぶんそうだと思います、最初は隠そうと思っていたので……」


カレンさんは腕組みをしたまま頷く。


「うん、ナギの判断は間違ってない。同じ立場なら私でもそうするわ」

「カレンさん……」


「そっかそっか、これはちょっと考えないとね……。よし、鑑定を活かす方向で行きましょう。折角のスキルは使わなきゃ損だもの、ね?」

「えっ! い、いいんですか……⁉」


「ん? どうして?」

「だって、やっぱり自分の力で覚えないと……」


「あはは! 何言ってんの、鑑定だって自分の力じゃない。手がもう一本あったら使うでしょ? それと同じよ」


カレンさんはあっけらかんと笑う。

私は何だかスッと肩の力が抜けたような気がした。


「まずはナギの持っている鑑定が何を鑑定できるのか、これを知らないとね」

「そうですよね、でもどうやって使うのか……」


「んー、まあ、スキルのトリガーなんて人それぞれだし……そうだ! わかりやすく『鑑定』って言ってみるとか?」

「なるほど……それいいですね、やってみます」


「あ、ちょい待ち! これを鑑定してみて」


カレンさんが戸棚から小さな瓶を取り、私の目の前に置いた。


「これは……ポーションですか?」

「内緒、言っちゃったら意味ないでしょ?」

「あ、そっか……コホン、では……やってみます」


私は大きく深呼吸をした後、瓶に両手を翳した。


「鑑定!」


「……」


――――――――――――――

名称:ハイ・ポーション

品質:★★☆☆☆

効能:中程度の裂傷や熱傷、感染症など幅広い回復作用をもたらす。

――――――――――――――


「で、出ました! えっと、名称と品質、効能が表示されてます!」

「やったぁ! すごいすごいっ! 錬金術師にぴったりじゃない!」


二人で手を組み、その場でぴょんぴょんと飛び跳ねる。


「それで、どんな感じ? なんて表示されてるの?」

「えっと、ハイ・ポーション、品質は恐らく5段階中2段階です。なんか星マークがあって、色つきの星が二個表示されてますね。あと効能が中程度の裂傷や熱傷、感染症など幅広く効くと書かれてます」


「すごいわよ、ナギ! このポーションはね、私が初めて作るのに成功したハイ・ポーションなの。記念に取って置いたものだから、かなり古いのよ」

「なるほど、だから品質が低めなのかもしれませんね……」


「あ、あと、さっき失敗したポーション、これも観てもらえる?」

「はい、わかりました――鑑定!」


――――――――――――――

名称:回復ジュース

品質:★☆☆☆☆

効能:疲労回復、血行促進効果がある。

――――――――――――――


「回復ジュースって書いてありますね、疲労回復に良いみたいです」


結果を伝えると、カレンさんがうんうんと頷く。


「おっけー、これならいけるかな……ナギ、ポーションの作り方は頭に入ってる?」

「は、はい! 大丈夫だと思います!」


「本当はもっと時間がかかると思ってたけど……。練習を兼ねて、精霊祭用のポーションを作っていこうと思うの」

「精霊祭……?」


「あ、そっか、えっと……来月、年に一度の精霊祭があるの。このエルドラン王国の風物詩ってやつね。王都中のお店や家で、祭壇に精霊様に捧げるポーションを供えるんだけど、まあ、その注文がハンパなくてね……」


カレンさんが片手でこめかみを揉みながら言う。


「そういえば、大量に注文が来てるとか言ってましたよね……」


「そうなのよ……。まあ、一年の稼ぎの大半はここで稼いじゃうから、この時期の錬金工房はどこも大忙しってわけ」

「なるほど……」


そっか、元の世界でいうところの「おせち料理」とか「クリスマスケーキ」みたいなものなのね……。


「じゃあ、頑張って作らないとですねっ!」

「手伝ってくれる⁉」


「もちろんですっ! といっても、私じゃ力になれるかどうか……あはは」


「なれるに決まってるじゃない! 報酬は歩合で出すわ。ナギは練習を兼ねてポーションを作り続けてくれればOK。できたポーションは鑑定して、品質3以上のものを一本に付き銀2枚で買い取るわ。それ以下は買い取りなしだけど、ナギの自由にしてくれて大丈夫だから」


「い、一本銀2枚……⁉ その、材料費とか大丈夫なんですか⁉」

「うん、精霊祭用だし、いつもより売値も上がるからね。ポーションの値付けって、大体の相場はあるけど、品質や量、工房によっても差があるし、私のところが一番良いってわけじゃないけど、平均よりは少し上かなぁ。ま、ウチはずっとこれでやってるから」


「そうなんですね、じゃあ、お言葉に甘えて……」


これでかなり資金に余裕ができそう!

練習もさせてもらえるし、こんな良い話はない!


「じゃあ、早速始めてもらえる?」

「はい!」


……練習を重ねれば、精度も上がっていくはず。

そうすればロスも少なくなって、カレンさんの負担も減るし、私の腕も上がる!

みんなハッピー! まさに正のスパイラル!


よーし! 頑張るぞーっ!

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― 新着の感想 ―
できることとやりたいことが噛み合う、良い出会いをしましたねー
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